一度は書きたい洗脳柚子シリーズ。
原作雰囲気 遊矢シリーズは全員分離してます
覇王遊矢シリーズ×洗脳柚子シリーズ
途中でアイデアがつきたため、未完です。
プロローグ
「ヒッヒッヒ」
ドクトルの前に4人の少女達が並んで立っていた。
プロフェッサーにより預けられた柚子、瑠璃、リン、セレナだ。
「よしよし、全員蟲たちの虜になっているな」
ドクトルは顔を近づけ少女達の目をのぞき込む。
その瞳に光りはない。
気味の悪い男に息がかかるほどの距離まで近づかれても、彼女たちは眉一つ動かさ
ない。試しに輪郭に沿って顎に指を這わせてみるが、悲鳴一つあげない。
ドクトルは満足そうな表情を浮かべる。
もう少し試そうとしたところ、
『ドクトル様!』
「なんだいいところへ」
突然通信が入り、不愉快そうに応対に出る。
『榊遊矢達がアカデミア内部へ侵入しました。プロフェッサーより迎撃せよとの指令
です』
「そうか。よし、わかった」
通信を切るとドクトルは少女達の顔を見やる。
(瑠璃のデュエルにより、プログラムは強化してある。榊遊矢達と会わせても問題はな
かろう)
何よりこれは絶好のチャンスだ。
「人員不足でやむを得ないとはいえ、お前達には自分の身は自分で守り、榊遊矢達を
始末する手伝いをしてもらう」
ドクトルの申し伝えに少女達はこくんと頷く。
「お前達は今まで彼らに勝てたことがないようだが、心配はいらない。お前達のデッ
キには、私の作り出したパラサイトデッキを投入している。私の作り出した蟲たちが
お前達を勝利へと導くだろう」
そうだ。彼女たちを使いあの榊遊矢達を捕獲できれば、自分の作り出した蟲は、単
なる洗脳の道具ではなく、デッキとしても有能であるとプロフェッサーに示すことが
出来る。
(私がアカデミア、いや世界一の科学者であることを思い知らせてやる)
そこへ再び通信が入る。
『榊遊矢とユートが、西館へ侵入』
「わかった。後は私に任せたまえ」
さて誰を選ぼうかとドクトルが少女達の顔を見回していると、柚子と瑠璃の二人が
前に進み出る。
「ほぅ、お前達が行くつもりか?」
命じていないにもかかわらず進み出るとは、ドクトルは興味が引かれた。
これも彼らの絆がなせる技なのだろうか?
だがそれすらも自分の作り出した蟲は凌駕する。
「いいだろう。柚子に瑠璃。お前達に榊遊矢とユートの始末を命じる」
そう告げるなり、二人はこくんと頷き部屋を出た。
「これは貴重なデータがとれそうだ」
クックックと含み笑いをしていると、またしても通信が入る。
『ドクトル』
「これはこれはプロフェッサー」
ドクトルは態度を改めてうやうやしく頭を垂れる。
『ユーリの様子がおかしい。セレナを向かわせるんだ』
「なんと。承知いたしました」
通信が切れるなり、ドクトルはセレナに目配せする。するとセレナは部屋から出て
行った。
(やれやれ、ユーリ様に暴れられては敵わんからな)
ドクトルは過去にユーリの気まぐれにより、研究施設に被害を出されたことがある。
仕返しに蟲を寄生させようとしてもなぜかユーリにドクトルの蟲は効かず、逆に
「面白いことするね」と自分の研究を破壊されかけた。
土下座して謝りに謝ってなんとかそれだけは勘弁してもらったが、そのときのこと
を思い出すだけで身震いがする。
さすがにドクトルでもユーリには手を出してはいけないことを悟った。
そんなユーリも不思議とセレナを見ると大人しくなることがあるが、
(とはいえセレナは、性格があれだからな・・・・)
蟲を寄生させているといえ、根本的な性格を変えることまではまだできていない。
(セレナ一人では不安だな)
ドクトルは最後に残った一人に命じる。
「リン、お前も行くんだ。セレナが余計なことをしないように見張ってろ」
こくんと頷き、リンはセレナの後を追った。
「さてさて、柚子と瑠璃はうまく接触できたかな」
ドクトルはモニターに二人を映し出した。
「柚子!」
「瑠璃!」
目の前に現れた求め続けていた少女達の顔を見て、遊矢とユートは安堵の表情を浮
かべるが、
「勝負よ、遊矢」
「ユート、兄さんの時のようにはいかないわ」
デュエルディスクを構えた二人を見て、やむを得ず同じようにディスクを構える。
「遊矢、これは」
「ああ、きっと例の蟲に操られているんだ」
「操られている?」
「違うわ。私たちは自分の意思でここにいるの」
柚子と瑠璃はするどき眼光で二人を見やる。
「「あなたたちを倒すために!!」」
「よぉーし、いいぞ、二人とも」
モニター越しにデュエルを観戦していたドクトルは興奮気味に声を荒げた。
柚子と瑠璃はうまくドクトルの仕込んだパラサイトデッキを使い、遊矢とユートを
追い詰めていった。
「いけっ、そのまま倒すんだ」
だが、そこまでだった。
「何匹かかろうとも虫は虫」
強烈な光を瞳に宿す二人の背後で、炎の翼を持つドラゴンが咆哮を上げる。
「やれ、すべての虫を焼き尽くせ!!」
炎の翼は蟲の入った培養液をすべて破壊し、蟲たちを焼き尽くした。
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドラゴンの砲撃を浴びた柚子と瑠璃は倒れ伏す。
「何ということだ。私の蟲たちが」
怒りと悔しさで、ドクトルの顔が歪む。
「まぁいい、もう一度作り出せばいいだけだ」
それよりとドクトルは柚子と瑠璃に指示を出す。
「撤退だ。二人とも戻ってこい」
指示は脳内の蟲を通して二人に伝えられる。
「ふんっ」
「ぐあっ」
柚子は近づいてきた遊矢を蹴り飛ばして瑠璃と共に逃げる。
「遊矢、くそっ」
ユートが素早く追いかけてきて、二人とも捕まりそうになる。
しかし、瑠璃は素早く鳥を召喚してそれに捕まると柚子を置きざりにしていて、
飛んで逃げてしまう。
「待て、瑠璃っ」
ユートも幻影騎士団を召喚して追いかける。
置いて行かれた柚子はなおも走って逃げようとするが、素早く起き上がった遊矢に
捕まり押し倒される。
「ええぃ、二人ともなにをしてるのだ」
いらだっている間に突然モニターが消えた。
「なんだ?さっきの攻撃でどこかの回線が焼き切れたか?」
あちこち調べているうちにセレナとリンの方にも動きがあった。
「君たち邪魔だよ」
ユーリのモンスターにセレナとリンは捕まっていた。
「くそっ、はなせ、この」
「なにすんのよ、私はあんたを助けに来たのよ」
「なんでお前があの野郎を助けるんだよ、リン!!」
暴れるリンにユーゴが吠える。
「ドクトルの命令だからよ」
「ドクトル?あのお前に変な虫をくっつけやがったクソ野郎のことか!?」
「口を慎め。ドクトルは偉大な科学者だぞ」
戒めから逃れようと暴れながらセレナが反論する。
「ドクトルの作り出した蟲は、我々の脳に寄生し、我々にさらなる力を与えてくれる
のだ」
さらにとセレナはニヤリとする。
「たとえ、デュエルで敗北することになろうともその効果は消えはしない。ドクトル
がクイーンを持ち続ける限りな」
それを聞いたドクトルは顔を青ざめさせる。
「あああああ、あのバカ。重大な秘密をべらべらと」
「なるほど、ドクトルってやつを倒せばいいんだな」
ユーゴの目が光り輝く。
傍にいたユーリもため息をつく。
「やっぱ君って、バカだねぇ」
「何だとユーリ」
「だったらやることは一つだ」
その瞬間、疾風が吹き抜けた。
気がつくとセレナの隣にリンがおらず、ドラゴンの背中に乗るユーゴの腕の中にリ
ンは捕らえられていた。
「ちょっと、はなしさないよ」
暴れるリンを無視してユーゴは飛び去っていった。
「せっかくデュエルしようと思ってたとこなのに。これはおしおきだね」
ユーリは、セレナを縛り上げているモンスターに命じてそのままセレナを運ばせる。
「放せ、どこへ連れて行くつもりだ」
「お仕置きって言っただろ。誰にも邪魔にされないところにね」
ユーリの視線が監視カメラに向けられた。
モニター越しにユーリと目が合ったような気がしてドクトルは思わず後ずさる。
映像が切れ、何も写らなくなる。
「これは、もしかしてまずいんじゃ」
ダラダラと冷や汗をかくドクトルの背後で、小さな蟲がドクトルを見つめていた。