いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません
大輪のピンクの薔薇。
花言葉「赤ちゃんができました」
その言葉を思い出すだけで、頬がかぁーと熱くなる。
自宅の寝室のベットの上で、井坂は、モコモコする枕を抱きしめながらうだうだと煩悶する。
(あいつ、赤ちゃんが欲しかったのか)
朝比奈は、ただの偶然だと言っていたが、井坂はとてもそうとは思えなかった。
井坂は、もう30をとうに越えている。
年齢的に、子供を産むにギリギリだ。
思えば不思議だった。
子供の頃からのいつも一緒にいて、男と女としては、もう十年以上つきあっているというのに、二人の間には結婚の話は一度も出たことはなかった。
もちろん二人とも外部から別の人間との見合い話はいくらでも持ち込まれ、今でもある。
けれど、そのたびに井坂は怒って蹴散らし、朝比奈は静かに断っていた。
それをお互いに知っていても、二人の間で結婚話は盛り上がらなかった。
(まぁ、待たせちまったってのはあるわなぁ)
昔、入社したての頃は、二人して同じ編集部で働いていた。けれど、朝比奈は編集の才能はないとそうそうに見切りをつけ、一人部署移動願いを出し、それを知った父親が自分の秘書にしてしまった。
これが意外に性にあったようで、以来、朝比奈は、社長以下重役たちの秘書を務めた。
その働きぶりがまた有能で、できる秘書だから、たいがい重宝されて、いつも忙しくて、すれ違いが続いて・・・・。
だから、井坂は偉くなることを決めた。
この会社を乗っ取って、、父親を社長の座から蹴り落とし、朝比奈を自分だけの秘書にするのだ。
とはいえ、いくら井坂が社長の子とはいえ、女であるからどうしても見くびられ、その優秀さに見合わず、やっと専務取締役の座につけたのは、30才を過ぎてからだ。
(もちろん、世間一般的には、異例の出世だ)
二人の間で結婚熱が高まらなかったのは、そんな事情もある。
朝比奈は、井坂の意を酌み、ずっと見守り続けていてくれた。
(でも、もう専務の役も板についてきたし、社内での評判も上々で、外部の人間にも跡継ぎとしてみられるようになった。)
最近、父親も社内の重要な事項について、井坂に任せることが増えた。
父親も認め始めている。
だから、もうそろそろいいかもしれない。
「薫・・・」
好きな人の名を呼んで、膝に抱いた枕に顔を埋める。
妄想するのは、甘い生活、
朝日が差し込む明るいリビングで、朝食を作ってくれる薫がいて、新聞を読みながらコーヒーをすする自分の向かいにいるのは、自分と薫によく似た息子と娘。
それが実現したなら、どんなに幸せなことだろう。
(とはいえ、現実はこれだ)
窓の外はどっぷりと日が暮れ、街灯の明かりが蛍のようだ。
省エネ促進と最近取り替えられたLED電灯の光りが、白熱の太陽のように照らし出す室内で、朝比奈と二人きり。
けれど、ここはダイニングテーブルの代わりにオフィスデスクがあり、可愛い子供達の代わりに決済を待っている書類の束が鎮座している。
「専務。次はこれにサインをお願いします」
「わかった。こっちはこれで終わり。あとよろしく」
はい、朝比奈が決済を終えた書類をぱさぱさと確認し綺麗にそろえていく。
取締役の仕事は、いったいどこから沸いてくるのかと思うほど、次から次へと沸いてきて、毎日処理に追われていく。仕事をすると必然的に秘書である朝比奈もついてくるので、二人で一緒に入れるわけだけど、朝比奈は仕事とプライベートはきっちりと分ける人間なので、甘い雰囲気なんかならない。
それどころから、井坂に仕事をさせようと次から次へと押しつけてくる。
(こんなんで子供とか作れんのかな)
朝比奈はオフィスラブとかカーセックスとかアブノーマルなプレイは基本的にしない。 家とかホテルでしか抱かないし、避妊は完璧だ。
一度生でして欲しいと頼んだところ目をつり上げて怒られ、甘い雰囲気が一瞬で吹き飛んでしまった。
(薫のヤツ本当に赤ちゃん欲しいのかな・・・)
ピンクの薔薇をくれたのは、本当に朝比奈の言うとおり偶然なのかな。
朝比奈は自分との子供を欲しくないのかな。
朝比奈は自分と結婚したくないのかな・・・。
「専務。」
朝比奈が井坂の様子が少しおかしいことに気づき声をかける。
「どうしました。お疲れなら少し休憩されますか。まだ仕事は残っておりますし・・・」
「・・・薫」
井坂が職場でプライベートでの呼び名を発したことに、朝比奈の眉間の皺が少し寄る。 いつもならここは職場ですと叱るところだが、疲れているのだろうと朝比奈底をぐっとこらえ、応対する。
「なんでしょうか?」
「あたしがもし、子供ほしいって言ったらどうする?」
バサバサバサッ・・・・・・と紙束が床に散り落ちる音がした。
奇妙な沈黙が二人の間に降りた。
勝利を落とした時の格好のまま、目を大きく見開いて朝比奈は固まっている。
(こいつのこういう顔、見たのすっごい久しぶり)
朝比奈はいつも沈着冷静で、感情を露わにすることは少ない。
その朝比奈が・・・・、
「・・・・・・・・・・・・あっ」
「ねぇ、どう思うのよ」
ひどく、
「ねぇ」
「あ・・・は・・・・」
ひどく動揺していて、目はうろたえていた。
言葉も出なくて、ようやく喉の奥から振り絞るように出ように声を出す。
「 ・・・・・・つかぬ事をお聞きしますが、龍子様、もしや」
「いや、べつに。できてないけど」
あっさりと言ってやったら、これまたあっさりと拍子抜けした。
「けどさ,あたしももう30とっくに過ぎてるし。もうすぐアラフォーよ。アラフォー」
「龍子様」
「ぎりぎりっつうの、そういうの。だからさ。えーと、あたしもそろそろいいかなぁ・・・・つうか・・・」
自分からふっておいて、なぜかこっちが恥ずかしくなる。
「あーもういい。なしなし。忘れて。それより、仕事仕事。とっとと片付けてかえ」
その先の言葉は、抱きしめられた腕に遮られて出てこなかった。
唇と唇で塞がれて、井坂は瞳に映る人物を見つめる。
「薫・・・」
井坂が一瞬惚けている間に、朝比奈は素早くドアの鍵をかけ、室内の電気のスイッチを切る。
一瞬で闇に犯され、密やかに窓の外の街灯の薄明かりが差した室内で、井坂ははっきりと朝比奈の姿を見た。
井坂を見る朝比奈の瞳。
その瞳を井坂は知っていた。
それは、自分を欲しがる男の瞳だ。
突き抜けるような快感に身体がぶるりと震えた。
その瞬間、身体の中に埋め込まれたモノがびくりと震え、熱い液体がはき出され、身体の奥へと入っていくのがわかる。
「あああ・・・・・」
薄いゴム越しに感じるモノとはまったく違う強烈な感覚。
朝比奈に腰を支えて貰わなければ、とっくに床に崩れ落ちてしまっていただろう。
「龍子様」
「あ・・・・っ」
背中越しに振り向いて、たがいの唇を重ねる。
舌を差し入れ貪りあう。
「かおる・・・」
「はい・・・・」
「だしすぎ・・・」
本当にすごかった。
室内の明かりを消した朝比奈は、そのまま井坂を押し倒した。
アブノーマルなプレイは滅多にしないのに、する時にはなぜかちゃんと避妊具が用意されていた。
けど、朝比奈はそれをしなかった。
朝比奈は、そのままで井坂の中に侵入し、何度も果てた。
はじめは驚き、途惑った井坂だが、いざつなぎ合わさるとあっという間に陥落した。
井坂の大事なところの中は、朝比奈でいっぱいで、少しでも動くと溢れてしまいそうで。
「あー・・・、マジ子供できそう」
そうつぶやいたとたん、抱きしめる腕の力が強くなる。
「薫?」
「・・・・・・・幸せで」
少し泣きそうな声だった。
「こうなるとこを願っていたのですが、心のどこかで叶うはずがないと思っていました・・・・・」
今の世の中で、身分だ、立場が違うなんてばかばかしいという人は多いけれど、この現代にも見えない身分の差というのはあるのだ。
あの人は、自分たち家族の命の恩人の大切な大切な一人娘で、立場を背負うものも自分とは正反対。せめて、その背を支えられるようにと思い勉強や仕事に励んできた。
傍にいるだけでよかったのに、
きっと叶うはずがないと思っていた恋心が叶っただけでも幸せなのに。
これ以上のことを願ってしまったら、逆に不幸が起きてしまうんじゃないかと思って・・・・・。
「ばか・・・・・」
井坂はそっと朝比奈の腕に手を添える。
「お前はあたしの所有物(もの)だろ」
薫はあたしのものだから、
あたしは薫を離さない。
薫しかいらない。
「龍子様」
「あんっ・・」
朝比奈に抱き起こされ、向き合う体勢を変えられ、そのまままたデスクの上に押し倒される。
「あぅ、・・・んぁ・・・」
幾度もいじられ、なめあげられ、すっかり起立し敏感な胸の頂を乳房をわしづかみに下手の指先でなで上げられる。
「っ・・・かおる・・・」
「何人でも産んでください。あなたとの子なら何人でも欲しい」
「うん・・・・」
井坂だって欲しかった。
朝比奈との子なら何人でも。
身体の中にある朝比奈の細胞の一つでもこの奥深くにある大事なところへ届いたらいい・・・。
今にも崩れ落ちそうな腰を支えて貰いながら何とか朝比奈のうちへ帰り着いた井坂は、朝比奈の腕に抱かれながら眠りにつき、夢を見た。
自分と自分にそっくりな女の子が朝比奈を取り合っていた。
朝比奈はただ苦笑するばかり。
それが正夢になることを知るのは、それから数週間後のこと。
あとがき
朝比奈は意外にでき婚でないと井坂にプロポーズしない(というかできない)とおもう。