桐嶋+伊集院
桐嶋が新しい嫁を貰ったことを知った伊集院は。
桐嶋×伊集院があったことが前提です。
まだ作成中
「俺さ、嫁ができたんだ。」
ある日、桐嶋がそう告白した。
あの日以来、ずっと嵌めていた指輪が見えなくなったと思ったら。
俺は、へぇ・・と返事して、どんな女(ヒト)と聞いたら、男だと言われてさすがに驚いた。
桐嶋がどっちでもいけることは身をもって知っていた。でもさすがに本気で選ぶとは思っていなかった。
桐嶋には、娘が一人いる。新しいお母さんが男なんて嫌がるだろうにと思ったがあっさり受け入れてしかも懐いているらしい。
ずいぶんと男前な娘だ。 その新しい嫁とやらもあの男らしい「暴れグマ」の異名を持つ横澤さんとは恐れいった。
いったいどんな家族になるのやら。
でも、桐嶋は幸せそうだった。
前の奥さんの葬儀の日。
桐嶋は、いつまでも祭壇の前に座っていた。
思えば二人の時間はどれだけあったんだろう。
今と違って当時の桐嶋は、他の編集者と同じように夜遅くまで働いて休日なんてなさそうだった。
よく奥さんと喧嘩したと愚痴をこぼしていた。
それでも娘ができたときには嬉しそうで、家族3人で過ごすことを楽しみにしていたのに。
喪服に身を包んだ桐嶋の背中からは、悲しみと後悔が見えた。
それでも数日で復帰してきて、俺の担当をきちんとこなした。その姿はいつもの桐嶋だった。
でも・・・。
「なぁ、桐嶋。本当に大丈夫なのか?」
俺は、とうとう聞いた
「ん?なに言ってんだ。ひよは、親が見てくれるしさ。心配ない。大丈夫だよ。」
「そうなのか?本当にそう思うのか?」
俺の納得いかない態度に、ひょうきんな桐嶋の顔つきが変わる。
「なんだよ、どうしたんだよ。俺は大丈夫」
「桐嶋、今のお前は変だよ。奥さん亡くしてまだ少ししか経っていないのに、平気だなんておかしいよ」
桐嶋の顔つきが見る見ると凍り付く。
ああ、やっぱりそうだ。
「桐嶋、悲しんでいいんだぞ。しばらく奥さんのために泣いったていいじゃないか。俺のことなら大丈夫。
他の人ともちゃんとやれるから。」
きちんとやりこなせるから。今は、彼女のためだけにいてやれと。
そんな思いから出た言葉だった。