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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

真夏の夜の悲喜劇

クラウス+ハセベ、ウエムラ、スグリ

コメディー

12の月の物語 8月のお話




 夜の世界が、無数の豆灯りに照らされて、オレンジ色の光と混ざり合い、幻想的な世界
が広がる。
(なんか、独特な雰囲気があるよな・・・・)
 普段は恐れられる夜の世界。そこにほのかな光の集まりだけを頼りにして、大勢の人が
集まり、一夜の宴を楽しむ。
 故郷ではなかった光景だ。
 向こうでは祭りというと昼間に行われることが多い。
 なのに、この国では夜に行われることが多い。
 夜を恐れているようで恐れていない。
 いや、むしろ恐れがあるからこそ夜の世界に惹かれるのか。
 不思議な人の習性。
 

「どうした。クラウス?」
「いや、すげぇ人混みだと思ってさ」
 とクラウスが言いたくなるのも無理はない。普段は、がらがらの神社の境内に隙間啼く
屋台が建ち並び、あの間を人が途切れることなくなくたむろしているのだ。
 この人々は、一体どこから沸いてきたのだろうと思うくらいの混雑状況である。
「はぐれねぇようにしないとな」
 そう言うなり、クラウスはタキに手を差し出す。 
「ほら。タキ、手」
「え?」
「つないどかねぇと、はぐれちまうだろ?」
 ポンとタキの頬が赤く染まる。
 おずおずとタキの小さな手が差し出された。
 クラウスはその小さな手をしっかりと握って、宴の中へと入っていった。


 混雑ぶりはかなりのもので、ぶつからないように歩くのに大変な注意が言った。
「タキ、大丈夫か?」
 クラウスは、率先して先を歩きタキを人に当てないように気を配るが、何せ人と人と
の間の隙間が狭すぎ、タキも注意をしなければうっかり手を離してしまうような状況
だった。
 クラウスは、タキの手を離さないように握りしめる手に力を入れて、ゆっくりと歩い
て行く。
「あっ」
 脇に目をそらしたら機が何かを見つけて、足が止まる。引っ張られるように足を止めた
クラウスは「どうした?」と後ろを振り返った。
「クラウス、アレをやるぞ」
 タキの目がわくわくと興奮している。
 タキの目の先にある屋台には『金魚すくい』と書かれていた。


「いらっしゃい。一回300円ね」
 店の親父にお金を渡し、ポイを受け取る。目をらんらんとさせて、水槽の中の金魚を
凝視する姿はハンターそのものだ。
(やっぱ猫だなぁ)
 よくよく店を見てみると、金魚すくいの看板を掲げている店のなんと多いことか。 
 さすがは猫の国とクラウスが感心している間に、タキが一頭を投じる。
 金魚が多く集まっているところに向かってポイを投じる。
  しかし、金魚のなんと勘のよいことか。
 蜘蛛の子を散らすようにあっという間に四散してしまう。
 一匹でも掬おうと追いかけるが、健闘むなしく、ポイは無残にも破けてしまった。
「ああっ」
「あらら~」
「はーい。残念」
 もう一回やるかい?と親父に言われ、タキは再度挑戦。
 ぴぴーんとしっぽと耳が立つ。
 金魚を見つめる眼差しのなんと真剣なことか。
 クラウスはその横顔を見つめる。
「はぁっ」
 勇み声と共にポイが金魚を目がけて振り下ろされる。
 水を切るようにポイが金魚の身体を捉える。一瞬で捉えられポイにのせられた金魚は、
水桶の中へと運ばれる。
「おっ、やるじゃん!」
 クラウスの賞賛の声を受けたタキは勢いに乗り、今度は3匹ほど掬うことができた。

 

 金魚が泳ぐ袋を眼前にぶら下げて、タキは、えっへんと胸と耳としっぽをピンと張る。
「よかったな」
「うんっ」
 頬を上気させてうなずいたタキは、ずいっとクラウスに金魚の袋を差し出す。
「これはお前にやる」
「俺に?」
「クラウスにあげようと思ってとったんだ」
「タキ・・・」
 じん・・とクラウスの心に温かい気持ちが広がる。
「ありがとう」
 そう言ってクラウスが袋を受け取ると、「タキ様、クラウス大尉」と後ろから声がかけ
られた。声をした方を振り返ると、タキの傅子である三人組がいた。
「みんな」
 タキに続き、よぉと声を掛けたクラウスは、ダテの姿を見て呆れる。
「ダテ。それ買いすぎじゃね?」
「ほうれすかぁ?」
 両手一杯に屋台で買いあさった食べ物を持ち、さらに口にりんご飴をくわえながら、
ダテはもごもごと返事する。
「どれか一つでも食べてから買いなよ、って言ったんですけど」
 ダテの横で綿飴を持ったアズサが、呆れながら言った。
「らって、とれもうまひょうだし」
 ダテ曰く、うまそうと思ったら、すぐに買いたくなったらしい。 
「いいけどよぉ、そんな大きなりんご飴咥えながらしゃべると・・」
 と言ったクラウスの目の前で、ダテの口から林檎飴が落ちかける。
「あーーーーーーーー!」
 しかし、クラウスの手がさっと伸び、かろうじて地面への落下は免れた。
「だからいわんこっちゃねぇ・・・」
「すいませーん。大尉」
 へヘッと笑うダテに、クラウスはますます呆れた表情になる。
「ほら返すぞって、もうもてねぇな」
 ダテの両手はフランクフルトに、焼きそばに、かき氷ですでに埋まっている。 
「いいっすよ。お礼にそれあげます」
「あげるって、こんな食いかけのを・・・」
 といいながらクラウスは、まぁいいかとそのりんご飴にかぶりつこうと口を開けた。
「クラウスッ!!」
「大尉、ダメです!」
「ふぼっ」
 突然、ふわふわしてべたべたするものに口と鼻を塞がれたクラウスは、真抜けた声を
上げる。
「ダメだ、クラウス。そんな、人が食べかけてたのなんて・・・。ダテに返せ」
「そうですよ、大尉。よければ僕のわたあめを差し上げますから」 
 買ったばかりでまだ口をつけてませんと、ぐいぐいとわたあめを口と鼻に押しつけて
くるアズサに、クラウスは腕をばたばたと動かして抵抗する。
「落ち着け、アズサ。大尉がわたあめで窒息死する」
 モリヤの言葉に、クラウスは「死なねぇよ(怒)」と声なき声を上げた。


「あ~、ひどい目に遭ったぜ・・・」
 タキを三人組に預け、クラウスは、手洗い所で、口の周りをすすぐ。
(まだ、べたべたすんなぁ)
 洗ったものの残る不快感を持て余しながら、手洗い所を出て、屋台の並びに戻ると、
嫌な者に遭遇した。
「げっ、ジジィ共」
「クラウスか。」
 ハセベ、ウエムラ、スグリの三人も来ていたらしく、三人とも渋い色合いの浴衣を
着込んでいる。
「タキ様はどうした?」
「一人にしちゃいねぇよ。手洗いに行く間、三人組に預けてきた。」
「うむ、なら安心だ」
「そうですね。クラウスと二人きりのほうが何百倍も危ないですから」
「お前のことだから、どうせこの後、どこかにタキ様を連れ込もうと考えているのだろう」
「考えてねーよ!!」
 スグリの言葉に、ぐわっとクラウスが反論する。
(ったく、何でこんな夜にまで、こいつらと喧嘩しなくちゃいけねぇんだよ)
 クラウスは、うんざりだという表情をする。
 そのときどこからか、パンパンという音が鳴った。
「何だ、銃撃か!?」
 思わず身構えるクラウスに、スグリは落ち着けと、少しも慌てずに答える。
「違う、アレは射的の音だ」
「射的?」
「コルクでできた弾を使った空気銃で、景品を撃ち落とすゲームですよ。打ち落とした
景品は、その場でもらえるんです」
 ウエムラの説明に、クラウスの耳がぴくりと動く。
「へぇ、おもしろそうだな。どこにあるんだ?」
「ほら、あそこだ」
 ハセベが指さしたところに、射的と書かれた幕を張った屋台があり、そこで何人かが、
店の中に向かって銃を構えていた。


 パンッ!・・・・コトン。
「はい。当たり~。どうぞ景品です」
「はい、残念。また挑戦してくださいねぇ」
 店の中では、親父が忙しそうに打ち落とした景品を渡したり、新たに景品を並べたり、
忙しそうにしている。
「結構繁盛してるな」
 店の前まで来たクラウスは、他の客がプレイしている様子を見学する。
 いかにも腕前がありそうな男と、そうでもない子供がプレイしていたのだが、景品を
ゲットしたのは、子供の方で、男は一つもとることができなかった。
「あれっ?意外だな」
「射的の銃は、正規銃と違うからな。弾込めと撃ち方にコツがある。それがつかめて
いないとああなる」
 スグリの説明に、クラウスはへぇと感心する。
「さぁさぁ、お次の方はどちら?本日は、とびきり豪華な景品をご用意してますよ~」
 それを聞いたクラウスの顔がにやりと笑う。

「いっちょ、やってみるか」
「ふん、一つでもとれたならマシだな」
「何だよ、じゃあ、スグリはどうなんだ?」
「私なら、全発的中させてみせる」
「わしだって負けておらんぞ」
 ハセベも名乗りを上げ、この雰囲気にウエムラが提案する。
「どうでしょう、いっそ三人で対決なさったら」
「おっ、良いこというじゃなぇか、ウエムラ」
 クラウスはそれだっと、ピンと耳を立てる。
「ふむ、おもしろそうだな」
「ふっ、犬にわしの銃の腕前を見せてやろう」
 スグリ、ハセベも同意する。
「では、決まりですね。ルールは、1ゲームで、多く景品を捕った人の勝ち。
捕った景品は、各自自宅まで持ち帰りましょう」
 そして、クラウス、スグリ、ハセベの三人は、店の親父にそれぞれ料金を支払い、
景品の前に立つ。
「では、スタート」
 ウエムラの号令のもと、勝負が開始される。

  

「はい、終了~」
 全員撃ち終え、店の親父から撃ち捕った景品をもらう。
 スグリの言葉は当たっており、普段の銃撃の腕前はピカイチのクラウスも苦戦し、
何とか一つ捕ることができた。
「言ったとうりだろう」
 言葉どおり、全発命中させ勝利し、勝ち誇った顔をするスグリに、クラウスはおもしろ
くないという表情をする。
「・・・まっ、いいさ。捕った猫の置物、可愛いし」
 クラウスが捕ったのは、小さな猫の着物で、全体的にまん丸として、ふにゃ~んと
眠たげな表情が、何とも可愛らしかった。
「スグリは何だ?ブリキのロボットに、お菓子に、うさぎのぬいぐるみかぁ。なんか
いまいち似合わねぇな」
「よし、おまえにやろう」
「いらねぇよ。だいたい、全部家に持って帰るのがルールだろ。ところでウエムラは、
何捕ったんだ?」
 クラウスが、ハセベの方を見てみると、ハセベはマッチ箱ほどの小さな箱を手に
持って、困惑の表情を浮かべていた。
「何だこれ?これが景品か?『フィギュア』って書いてあるけど、マッチ箱にしか見え
ねぇぞ」
「いや、これではないらしい。なんでも大きすぎて射的の景品にならないので、代わりに
これを置いていたと言っていたな」
「今、店の方が取りに行っていますよ」
「へぇ~、どんなのだろな?」
 と、四人が店の前で待っていると、店の親父が、ガラガラと台車を押しながら帰ってきた。
「お待たせしました。本日のスペシャル豪華目玉景品です」
 さぁ、どうぞとおやじが、景品にかけてあった布を取り払う。

 

「「「「!!!!?????」」」」


 でてきたのは、猫耳メイド服(しっぽ付)を来た美少女の等身大フィギュアだった。
「ねこみみアイドルのサクラちゃん等身大フィギュアです。ファンの間ではすごく人気
なんですよ。可愛がってあげてくださいね」
「可愛がれって・・・・・・・」
 なんか犯罪臭い、と思ったクラウスはある事実に気づく。
(ってか、これ自力で持って帰るのかよ。おっさんがこれ抱えて・・・。きっつ!)
 抱えて歩けば、注目の的間違いなしである。
「・・・・・配達サービスはないのかね」
「あいにくないんですよ。がんばって持って帰ってくださいね」


「!!!」


「じゃっ、俺タキが待ってるから。ハセベがんばって持って帰れよ。じゃあな!」
「私もタキ様のお世話をしにいかなくては」
「私もタキ様がお怪我をしてないか診察(みに)いかないと」
 というなり3人はもうダッシュでその場から逃げ出した。


「き、貴様ら           っ!!(怒)」
 裏切り者ー!!!という、ハセベの怒号が周辺に木霊した。


 その後、ハセベは店の親父に布をもらって何とか隠して持って帰ったが、家に着いた
途端、何持って帰ってきてんのと、奥さんと娘さんに軽蔑の目で見られたという。


後書き

いまいちできあがりが不満足ですが、読めないこともないので。

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