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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

黄金の薔薇 第8話

百日の薔薇 クラウス×タキ×クラウス クラウス女体化
アクア版1巻、2巻ベースでオリ設定があります。











「寒いと思ったら、雪か・・・」
 窓の外を眺めながら、クラウスはつぶやいた。
「気の毒に、こんな雪の中整列させられてさ」
 眼下には、出撃準備を待つ部隊の姿があった。先日戦闘があったばかりだから、
あれは予備部隊だろうか。
 予備部隊まで引っ張り出す自体とは、今彼はどんな状態だろう。
「行かなきゃね」
 なんのためにか。
 自問し、けじめをつけるため、とつぶやいてクラウスはかぶりを振った。
「あたしは、まだタキの騎士」
 だから行くのだ、主の元へ。胸を張って、誇りを持って。
 国籍を捨て、あらゆる権利を放棄して、主の所有物である者。
 それが騎士なのだから。



 ローゼンメイデン司令室では緊迫したムードが漂っていた。
「RYT,30㎞前進確認。」
 戦況図の中の列車がその分だけ前に進む。
「くそっ、総司令部は何をしてるんだ」
「いっそ、保安員を動かせば」
「ダメ、あれは罪人だぞ」
 怒号が飛び交う中、タキは沈痛な面持ちをして決断の時を迫られていた。
「予備部隊出撃準備完了」
 副官を務めるアズサが告げる。
「ですが、兵達の間に動揺が」
「どうした?」
「皆、中間地帯に行くことで自分たちよりも、タキ様が汚れに触れることを恐れて
います」
 アズサの報告に、タキは目をしかめる。
「・・・・私が行きます」
 皆に告げるように、アズサが言った。
「私は、エウロテ人とのハーフです。なにがあっても大丈夫です」
「アズサ!!」
 タキは声を荒げ、他の者からも止める声が上がる。
「アズサ少尉!?」
「単独でか!?」
「危険だ!?」
「そう、危険よ。あんたはよしなよアズサ」
 その声に、タキ、アズサ、司令室内にいた者すべての視線が集中する。
「戦車の無線手しか勤めてないあんたじゃ、今回の任務は力不足だわ」
「クラウス大尉」
「この国の人間が彼の地に入ると汚れるんだって言うなら、この国以外の人間を
派遣すればいい」
 クラウスは悠然として言ってのけた。
「そのために騎士が、あたしがいるのよ」


 出撃準備をするためにクラウスは部屋に帰った。捜索の手は部屋の中にも及んだ
らしく、部屋の中はめちゃくちゃだった。
「ひっどいわね」
 まぁいいかと、クラウスはクローゼットを開ける。さすがに女性の服や下着へは
男手は触れなかったらしく、女手で捜索したのか、きちんとたたんで戻されていた。
 適当に服を見繕っていると、タキが血相抱えて現れた。
「あら、会議は終わったの?」
「なぜ、あんなことを言った!?」
「あの場合、あたし以外適任がいないでしょ」
「私は許可しないぞ!」
「じゃあ。どうするの!?」
 タキの声をかき消すような勢いで、クラウスはタキに迫った。
「総司令部はへっぴり腰。誰も有効な対策を講じようとはしない。あの地は汚れて
るから、誰もあの地に行きたくない。大地どころか空さえ飛びたくない。平気な
おまえは行かせられない。じゃあ、あたしかいないじゃない!!」
 クラウスに壁に追い込まれ、タキはした唇をかむ。
「現実を見てごらん。坊や。甘ったれた理想じゃ、この戦争は勝ち抜けない」
 そう言い捨てるとクラウスはタキの腕をつかみ、玄関から外へ放り出した。
「出てって、これから着替えるんだから」
「クラウス!」
「覗いたら、あんたの頭に穴が開くわよ」
 そして、タキの目の前で勢いよくドアを閉めた。


 着替えを終えたクラウスが外に出ると、そこには誰もいなかった。支給品を受け
取りに配布所へ向かうとアズサがいた。アズサは、オートバイ兵用のコート、手袋
そのほか一式を受け取っていた。
「なに、ついてくる気?」
「女性一人で行かせるなど、皇国軍人の名折れですから」
「足手まといよ」
「サポートは得意なんです」
 きっぱりと言い切るアズサの言葉にクラウスは「そう」とだけ行って、支給品を
受け取る。
「あんた、バイクに乗れるの」
「・・・・一応は」
 あれだけかっこいいこと言って志願しておきながらのアズサの自信なさげな言葉
に、クラウスは「やっぱりね」とため息をつく。
「あたしのバイクのサイドカーに乗っけてるの一つ下ろして。そしたらアズサも
乗れるでしょ」
「乗せてくれるんですか?」
「いやなら、後ろでもいいのよ。ただし、変なとこ触ったら、そっこうで降りて
もらうけどね」
「準備してきます!!」
 だっと駆け出すアズサに、クラウスはふっと笑ったのだった。


 準備は着々と進んでいた。
「あの、タキ様、本当に行かれるのですか?」
 出撃の準備を進めるタキに、ハセベやウエムラが心配そうに声をかける。
「ぎりぎりの地点まで行くだけだ。中には入らないから安心しろ」
「ですが」
「ハセベ侍従長、ウエムラ少佐。おまえ達の心配はよくわかる。だが、掟を守るこ
とに固執すれば現実を見失う」
 タキはきゅと手袋をはめ直した。
「彼女に言われてようやく気づいた。変わらなければならないんだ、私もこの国も」
 ほんの数時間で、一回りも二回りも成長した言葉を口にするタキに、二人は目を
見張る。
「もし万が一、汚れに触れることがあっても、私は大丈夫だ」
「なぜですか?」
 ハセベに言葉にタキは笑って返した。
「決まっている。私はとっくの昔に掟を破っているからだよ」



 クラウスは、サイドカーの装備を確かめ、エンジンを暖め始めた。
「どうでしょう。大尉」
「いいんじゃない」
 そのとき、ムラクモからダテとモリヤがアズサを呼んでいた。アズサはどうしよ
うとクラウスの目をうかがい見る。
「いってこれば?まだ時間あるし」
 肩をすくめながらそう告げると、アズサは二人に向かってかけだした。
「ずいぶんと甘いな」
「まだまだ坊やだもの。甘えられるうちに甘えてればいいのよ」
 ね、スグリとクラウスは振り向いた。
「で、何の用?」
「いや、血液検査の結果がまだ出ていなくてな。それまでは出撃を控えさせたかっ
たのだが」
「驚いたわ。タキの治療を頼んだときとえらい違いようね」
 皮肉とも思える表情をクラウスは浮かべる。
「なんと思われようとかまわん。一つ聞きたい。おまえはタキ様を愛しているの
か?」
 意外な質問にクラウスは目を白黒させる。
「あんたから「愛してる」なんて言葉聞くとは思わなかったわ」
「はぐらかすな。正直に答えろ。だから、この国に来たのか?」
「・・・・・そうね。あのときは確かにそうだった」
 あの、ルッケンヴァルデの部屋で初めてタキを受け入れた時、確かにクラウスは
タキを愛していた。
(でも、いまは・・・・)
 クラウスはそっと腹部に手を添える。
「やはりそうか。なぜだ?おまえ達はなぜ愛しているからという理由ですべてを
捨てられるのだ。すべてを捧げられるのだ。その命さえもだ」
「おまえ達?」
 クラウスは怪訝な顔をする。
 いったい誰のことを言っているのだろう?
 だが、それ以上会話は続かなかった。
「総員、搭乗開始」
 タキの声が、あたりに木霊する。
「5分後に出発する。その後総司令部に正式打電。内容は『打って出る』」
 指示を飛ばした後、タキはクラウスの姿を見つけ近づいてきた。
「とうとうやる気になった?」
「ああ、ようやく目が覚めた」
 タキは迷いのない目でクラウスを見つめる。
 夜の闇と同じ色の瞳。
 でもクラウスだけは知っている。この黒い瞳は一筋の閃光が宿っていると。
 その輝きが失われない限り、誰もが闇の中を光へと導かれるのだと。
「クラウス」
「さぁ、我が主。あたしに命令を」
 クラウスはタキの前で騎士の礼をとる。
「声を聞かせて。それがあたしのすべてになる」
「・・・我が騎士よ。我が命を果たし、そして無事帰還せよ、我が元に」
「Ja MyMaster」
 命令を受け取ったクラウスは、さらにタキに促す。
「さぁわが主、号令を。みんながおまえの命を待っている」
 その言葉を受け取り、タキは声を張り上げた。

「全軍出撃、打って出る!!」




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