百日の薔薇 クラウス×タキ×クラウス クラウス女体化
アクア版1巻、2巻ベースでオリ設定があります。

ハセベからバックパックを見せられたハルキは、それがクラウスの物であると
認めた。
「よかった。クラウス様喜んで・・・」
「憲兵に連絡を、クラウスを拘束する」
喜んだのもつかの間、ハセベの言葉にハルキは仰天する。
「まってください、どうして!?」
「君はもういい。部屋に戻っていろ」
にわかに騒然とする司令部でハルキは、呆然と自分がとんでもないことを口走っ
てしまったのだと、深く後悔した。
「主を殺しかけるなど。前代未聞だぞ」
「ごめん」
それしか言いようがなく、クラウスは少し離れたところから治療の様子を見守った。
スグリによりベッドに寝かされたタキは、首の治療を受けていた。
白い首には、時間がたったためか、クラウスの手の形に添うようにくっきりと
青いあざが浮かび上がる。
そして、スグリはタキの手首と下半身の状況を見て眉間に皺を刻んだ。
「いつからだ?」
「なにが?」
「いつからタキ様の相手をするようになったんだ」
「この国に来る前からよ」
いまさら隠し立てするようなことではないと、クラウスは恥ずかしげもなく答え
た。
「もっとも、こっちから誘わないとのってこないけどね」
「おいたわしい。汚れることを許されぬお方が」
「・・・・・どういう意味よ。それ」
「タキ様から聞いていないのか」
そして、スグリはタキの一族が背負う宿命を教えた。
「レイゼン家は神代から続く宸華の一族。日常より肉食を禁ず、酒淫を禁ずの教え
を守う。婚姻以外で肉体関係を結ぶなど合ってはならぬことだ」
「なっ・・・」
「ましてや清浄潔斎であるべき師団長が・・・」
「まさか、女じゃあるまいし」
クラウスの故国にも女の処女性を大事にする神話が残されている。しかし、男な
んて聞いたことがない。逆に英雄色好むで、たくさんの女と交わることが大事とさ
れてきた。
「こちらでは男も女も関係ない。宸華の者であること。それがすべてを決める。
タキ様はその身に神の力を宿されているのだ。だからこそ、この戦争を戦える」
「そんな・・・」
だから触れてこないのだろうか。
この国の地を踏むまで、あんなに愛し合ったのに。
「・・・・・後は私が見る。おまえは部屋に戻れ」
出て行けと言われたような気がして、クラウスはおとなしくそれに従った。
だが、部屋には戻らずふらふらと庭を歩く。
(私はタキに選ばれた女ではなかった・・・・?)
では、どうして連れてきたのだろう。なぜ騎士にしたのだろう。
この前例を何よりも尊ぶ国で、すべての反対を押し切ってまでなぜ。
クラウスは腹部に手を添えた。
(なら、これはこの国の人間が言う神の意志ではないの?)
それでは、これは、なんために。
思考があっちの方へ飛び、クラウスは周りを囲まれていることすら気づかなかっ
た。
「クラウス・フォン・ヴォルフシュタット」
名を呼ばれたような気がしたが、クラウスは気にとめることもなくそのまま歩き
続ける。
「被疑者の様子が変ですか」
「かまわん。彼女はスパイだ。このまま拘束しろ」
行くぞと憲兵隊隊長の合図を元に、一斉に物陰から飛び出し、クラウスの周囲を
固める。
「止まれ!!」
だが、それにもかかわらずクラウスは歩き続け、一人の憲兵にぶつかってやっと
立ち止まった。
「うわっ、ちょっ」
その憲兵はクラウスより背が低く、彼女の胸が顔がぶつかり、慌ててクラウスの
肩をつかんで距離をとった。
「あっ・・・・」
「ク、クラウス大尉。スパイ疑惑によりあなたを拘束します」
内心の動揺を押し隠しながら告げるが、クラウスはうなだれるように下を向き、
なにやらぼそぼそとつぶいやいた。
「クラウス大尉。いいわけなら、取調室で聞こう」
隊長が、クラウスの背後へと近づく。
「・・・・・・・い」
「えっ?」
憲兵はクラウスの顔を見上げ、ぎょっとした。
「気持ち悪い」
クラウスの顔色は真っ青だ。
「ええええ!?」
「吐く・・・・・」
「ちょ・・・・まっ」
クラウスの下にいる憲兵が逃げようとするのも間に合わず、
「おぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ぎゃーーーーーーー!!!」
盛大に嘔吐し、あわれな憲兵の顔にぶちまけたのだった。
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タキは目を覚まして、そこがクラウスの部屋ではないことに気がついた。
「お目覚めですか」
「スグリ少尉。どうして」
「クラウスが、あなたをここに運んできたんですよ」
「クラウスが・・・」
タキは起き上がるとベッドから降りる。
「どこへ行かれます」
「クラウスを探しに行く」
「おまちください。タキ様。彼女のことはもうあきらめなさい」
スグリの言葉にタキはきつい目を向ける。
「なぜだ」
「この半年間見ていてわかります。彼女はあなたの伴侶にふさわしくない」
「・・・・クラウスは私の騎士だ」
何を言っているとタキは一瞥を向ける。
「ですが、騎士としてもふさわしくはない。彼女はあなたを殺そうとしたのですよ」
「・・・・そう仕向けたのは私だ」
「タキ様!?」
タキの言葉にスグリは驚く。
「私が悪いのだ。彼女がほしい言葉をかけてやらないから」
すべてを悟っているかのような態度のタキに、スグリは頭を抱える。
「ではいずれ正式に娶るつもりですか?」
「私は・・・」
そのとき、玄関のドアが激しく叩かれた。
「スグリ少尉。至急医務室に来てください」
「どうした?」
「クラウス大尉が倒れました」
その言葉に、スグリよりも先にタキが外へ飛び出した。