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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

黄金の薔薇 第4話 

百日の薔薇 クラウス×タキ×クラウス クラウス女体化
アクア版1巻、2巻ベースでオリ設定があります。








『・・・・そう、そうよ。大丈夫。念のために医者にも診せたけど。単なる飲み過
ぎだってさ。それより・・・』
 そこでクラウスは、ベッドで寝ていた住人が身じろぎしたことに気づいた。
『起きたみたい。切るわね。・・・・ええ、わかってる。ちゃんと送り出すわ』
 じゃねといってクラウスは無線を切ると、ベッドに近づいた。
『お目覚め?』
『ここ・・・は・・・・』
『あたしの部屋よ。起きれる?』
 クラウスがベッドサイドに腰掛けると、青年はゆっくりと起き上がった。
 艶やかな黒い髪に、幼さが顔にまだ残る東洋美人の顔立ちは、普段ならこの国の
人間でさえ美形だと認め、目を奪われるが、残念ながら青ざめた顔色と全身から
漂わせている不愉快さがその美形を損なわせている。
『頭が痛い』
『そりゃそうよ。つぶれるまで飲んだんだもの』
 飲める?とクラウスは立ち上がるとベット近くのテーブルに置いてあった水差し
からコップに水を汲んで、青年に差し出す。
『好きで飲んだわけじゃない』
『なに、ヤケ酒?それとも無理矢理飲まされた?』
『・・・・・後者だ』
『酔い潰されたあげく、さらに置き去りにされたってわけ?酷いお友達だねぇ。
そんな奴らとは付き合わないことをおすすめするわよ』
『今後そうしよう』
 頭が痛いだけでなく重いのか、男は酷くどんよりとしている。とはいえクラウス
にとっては見慣れた光景だ。
『胃はどう?気持ち悪くない?』
『重いが、気持ちは悪くない』
『なら、スープくらい入るわね。二日酔いに効くスープよ。今作ってくるから待ってて、タキ』
『なぜ、私の名を?』
 悪酔いしているとは言え、タキの眼光が強くなる。
『生徒手帳に書いてあったから』
『・・・勝手に見たのか』
『だって、おうちの人に連絡しないといけないでしょ?』
 とクラウスが言うとタキはそれ以上は追求はしなかった。
 その代わり、すぐにベットから出ようとする。
『世話になったな。私はすぐにかえ・・・っ』
 激しい頭痛に顔をしかめてうずくまるタキをクラウスはベットに戻して寝かしつ
ける。
『ほらほら、急に動くからよ。まだ横になってなさい』
『けど、私は・・・』
『学校の方は、体調が落ち着いてから帰って来なさって言ってたわよ』
 少し目を丸くするタキの胸元辺りをクラウスはポンポンと叩き、にっこりとと微
笑む。
『ゆっくりしていきなさい。ルッケンヴァルデ機甲学校の留学生君』



「聞こえる?我が主」
 切れた無線の向こうから聞こえる彼女の声。
「遅くなったわね。今そっちに行くわ」
「クラウス・・・」
「坊やを預かってちょうだい。これじゃ戦えないわ」
 クラウスは、膝の上で頭を抱えて丸くなってるハルキを見た。

 タキがハッチを開けると子供が飛び込んできた。
「子供を戦場に連れてくるとは」
「なりゆきよ。おしかりは後で受けるわ」
「傷は?」
「たいしたことない」
「女性の肌に傷をつけるなど」
「平気よ。今更それを言うの」
 クラウスは、双銃を手に取り空を見上げた。
 暗き闇に閃光が走っている。空中戦だろうか。
 かつて、クラウスは空を飛んでいた。飛び立つ姿は閃光のようだと言われた。
 その閃光は今、地を走る。
「タキ、名を呼んで」
 クラウスは希った。
「タキの声が、”あたし”を目覚めさせる」
 タキはそれに応えた。

 戦況は一挙に逆転した。防衛ラインを維持するどころか疲弊した敵兵を追い込ん
で一挙に仕留め、敵の兵力を削減させた。
 次々と舞い込む戦況報告に、本国総司令部ではタキ・レイゼンの身に流れる狂え
る花の血がそうさせるのだろうと総司令官が感想を述べていた。
 だが、実際に戦場を見ていない総司令部の人間は知らなかった。
 その戦場に一匹の金色の狼が出現したことを。
 金色の狼は、一筋の閃光となり、その身からほとばしる炎で刃向かう者すべてを
焼き尽くした。
 それは、見る者すべてを魅了した。
 
 状況の悪化を見て、敵兵団は撤退を開始。戦闘は終了した。
 ハッチを開けて外に身を乗り出したタキは、遠のいてゆく戦線を見送った。
 ハルキもぷはっと身を乗り出して、外の空気を吸う。
「どうだった。乗り心地は?」
「耳がガンガンします」
 怖かったとかじゃなくて、どこかピントがずれた答えに、乗員達から笑い声が上
がった。
 そこへ、一台のバイクが近づいてくる。
「クラウス様!」
「ただいま」
 さんさか戦場を走り回ったクラウスは、無事主の元へ帰ってきた。
 だが、タキはクラウスに一瞥を送っただけで、すぐに負傷者救護の指示を送った。
 クラウスに話しかけようとするハルキの言葉も遮ってしまう。
  理不尽に感じるハルキに、スグリが忠告した。
「坊主、ここはまだ戦場だ」
 タキは指揮官。一応終了したとはいえ、まだ爆音は鳴り響き、負傷者が戦場に散
らばっている。彼らを放っておいて、騎士の無事を確かめることは、誰よりも領民
の無事を願うタキにはできなかった。
 タキは、他の救護者支援の指示を出すためにクラウスをその場に残してムラクモ
を走らせた。
「ひどい奴」
 後を追わず、その場にたたずむクラウスは、腹部に手をやる。




 ルッケンヴァルデの路地裏でタキを助け、無事学校に送り返した日からすぐの週
末。
 クラウスが勤める店に珍しい客がやってきた。
『あら、タキ』
『この間はご迷惑をおかけしました』
 この前とは違って、丁寧な言葉遣いで紳士的な態度をとるタキを、クラウスは
席に案内した。
『これを。お詫びのしるしです』
 申し訳なさそうな顔をしてタキは、薔薇の花束ときれいなリボンをかけた菓子箱
をクラウスに手渡す。
『気にしなくていいのに』
『いえ、とんでもない。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした』
 頭を下げてわびるタキ。
(ほんと東洋人ってよく謝るわね)
 タキは何にも悪くないのにと思いながらもその素直な態度に好感を持てて、
クラウスは「いいのよ」とクスクスと笑いながらそれらを受け取る。
『薔薇の花束ね。うれしいわ。薔薇は一番好きなの』
 大輪の真っ赤な薔薇。実家にはたくさん咲いていたから見慣れた花だけれど、
こうして花束になった姿はまたひと味違い、もらったことがこのところあまりな
かったこともあって、うれしさがこみ上げる。
『それはよかった。何を送っていいのかわからなくて。級友にアドバイスをもらっ
たんです』
『この間の友達?』
『全然違います。彼らは素行不良で全員退学となりました』
 いくら敵国人とはいえ、国賓クラスの留学生に手を出したことはただですむはず
もなく、もともと成績もよくなかったこともあり放逐されたらしい。
『このアドバイスをくれた子は?』
『とても親切で、よくしてくれます。今回のことで彼らが一方的にやったことで私
は被害者だと、学長に直に抗議までしてくれて』
『いい友達じゃない。大事にしないとね』
『はい』
『せっかく来たくれたんだし、お茶でも飲んで行ってよ。あなたの国のこと教えて』
 でも・・・・と遠慮する態度を見せるタキを半ば無理矢理席に座らせて、
クラウスは、いろいろ聞いた。最初は遠慮がちだったタキだが、クラウスが故国に
来たことがあることを知ると多少饒舌になった。クラウスも最初は情報を聞き出す
ために機会を逃さないつもりが、一生懸命話すタキが可愛くてついつい話しに夢中
になり、二人は話が弾んだ。
『今度はお友達もつれてきなさいよ。いつでも歓迎するわ』
『はい』   
 次の週末、タキは友を連れ店にやってきた。それから、いつしかタキは一人で
あっても週末の夜になると店を訪れるようになった。
 クラウスはウエイトレスとして開店時間は忙しかったので、タキの相手をするこ
とができず、そのうちクラウスは店が終わってからタキを呼ぶようにした。そのほうが
ゆっくり話せたからだ。事情がわかっている店長も気を遣ってくれ、他に誰も
いない店内で二人はいろいろな話をしながら過ごした。


「あの頃は、あんなに優しかったのにね」
 いつしか酒に酔ったクラウスがつらい昔話をこぼしたとき、タキは言葉をかける
ことなく、ただ傍にいてくれた。
 優しかった。
 けれど、タキはいつも肝心なことは言葉に表さない。
「それがタキの答えなの」
 やっと光をつかんだと思ったのに。
 それは絶望にも思えた。
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