百日の薔薇 クラウス×タキ×クラウス クラウス女体化
アクア版1巻、2巻ベースでオリ設定があります。
その日は夜になると雨が降った。
基地と機甲学校で食べている町ルッケンヴァルデ。
すでに夜も更け、酒場の明かりも消えて町角に人影はなく、薄暗い街灯が寂しく
灯すだけだ。
そんな町の路地裏をクラウスは足早に歩いていると、地べたに座り込む男の前で
足を止めた。
こんな時間に地べたに座り込むのは酔っ払いと決まっている。いつもなら通り過ぎるだけだったのだが、足を止めたのはそれがこの国の人間ではなかったからだ。
上品仕立てのスーツを身につけた美しい顔立ちの若い異国の男。
『ねぇ、あんた』
クラウスは話しかけた。
『大丈夫?こんなところで寝てたら風邪引いて死ぬわよ?』
死ぬという言葉に反応したのか、男は目を開けた。
夜の闇と同じ色の瞳だった。
クラウスは前線に到達したもののすぐに戦闘地点には行かず、その周辺を走行し
ていた。獲物を探す狼のような目をして。
「いた」
彼女の金の瞳がキラリと光り、敵兵の乗せて移動中のトラックに近づいた。
地べたに転がされた敵兵は、連合軍内でささやかれていたある噂を思い出した。
(金の狼に狙われた者は、逃れられない)
その敵兵は、単なる噂だと思っていた。
今、自分の目の前に立つ彼女を見るでは。
「悪いけど、捕虜をとってる暇はないのよね」
こちらに向けて銃を向けている女。こっちは3人で、向こうは女一人。分は完全
に自分たちにあるのに、指先一つ動かすことができやしない。
彼女の金の瞳に見据えられいる限り。
「クラウス様、無線です」
「使い方はわかるわね」
「はい」
「よし、行くわよ」
去りゆこうとする彼女に、敵兵は震える声で話しかけた。
「ま、まってくれ。金の狼。なぜ東洋人なんかの味方をする」
「そ、そうだ。あんたは、俺らの女神じゃないのか」
「・・・あんたらが勝手に言ってただけでしょ」
クラウスは、敵兵のヘルメットの横を打ち抜いた。
「あたしは女神なんかじゃない。あたしはあたしの意思でここにいるのさ」
「なぜだ」
「運命だから」
クラウスは、リボルバーを引いた。
「国も家族も過去も、名すらも捨てさせるほどのね」
ハルキと一緒に買い出しに出ていた少年兵達から事情を聞いたタキは、彼らを帰
すとムラクモに乗り込むと、スグリに話しかけられる。
「タキ様、話によると二人は・・・」
「敵の前か横にいると言うことだ」
「作戦に変更は?」
「・・・・・・ない」
ムラクモに乗り込んだ以上タキは指揮官で、クラウスは指揮戦車を守る護衛兵に
過ぎない。
「ローゼンメイデン全局」
タキは戦闘開始の指示を出した。
戦闘地点に到達したとき、すでに戦闘は始まっていた。
「ちっ、間に合わなかったか」
タキはどこへ。無線通信はハルキに任せ、クラウスは全神経を戦場に集中させる。
(タキ、あたしを呼べ)
呼べば行くから。
おまえの声が、あたしを導く。
「つながりました!」
ハルキの声が上がる。その瞬間、二人のそばで閃光が炸裂した。
今宵の戦闘は、前日以上に苛烈であった。
以前のおかえしを使用という敵兵の勢いは強く、防衛は必死となる。
タキは味方の士気が落ちぬよう、敵の士気をくじくように注意しながら指揮を
執っていた。
「次弾装填」
そのとき、無線手のアズサが声を上げた。
「タキ様、チャンネル307より入電です」
タキは奪うようにヘッドホンを受け取ると、すぐさま呼びかける。
「クラウス、どこだ!どこにいる!?」
「・・・・・って、・・・・・・い」
応答はある。
しかし、電波の状態が悪いためか雑音が酷く聞き取れない。
「出力を上げろ。クラウス!?」
「助けてください!!」
無線機で叫んだのは、クラウスではなかった。
「大尉が、大尉がボクを庇ってけがを」
「どこだ、君たちはどこにいる!?」
「わからな、わぁぁぁぁぁぁ」
悲鳴に似た声が聞こえ、無線は途切れた。