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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

女王の結婚 闇の王の憂鬱

  光の女王を打ち払い、エテルナの玉座を死守した闇の王。
 闇の世紀が始まりを告げるが、それは、空虚な日々の始まりだった。

 闇の王が主人公の番外編。
エテルナ・ノクティス 闇の王×光の女王 光の女王主人公
 原作で闇の王がやったことを光の女王がやったとしたらどんな感じになっただろうと
思い、書きました。
 立場が逆転してるので、キャラの性格も原作とは違います。
 なんでも大丈夫な方のみお読みください。





 闇の王は、エテルナの王だった。
 けれど、一度王冠を得ても玉座が彼の体温で温まることはない。
 すぐに、光の女王が復活し、仲間と共に王冠を狙って戦いを挑んできた。
 それが、光と闇の戦いが始まり、二人の王がカオスに呪われてからのエテルナの
歴史だった。


 その輪廻においても、光の女王はエテルナの玉座の間に姿を現した。
 二人の王の決戦は、この玉座の間から始まる。
 いつの間にか根付いた伝統だ。

  「待っていたぞ、光の女王」

 闇の王は笑みを浮かべて、光の女王を出迎えた。

「遅かったな。お前が来る前に部下の世代が交代するかと思ったぞ」

 それは王としては珍しく素直な感想だった。
 今回、光の女王の進軍はいつもより遅れていた。
 部下の中には老体となり、引退してもおかしくない歳になってもこれが最後の
奉公、我が人生を戦場で迎えたいと言う者がちらほら出始めていた。
 闇の王としては、今更ながら部下の忠誠と戦士としての誇り高さを目の当たりに
する出来事だった。

「私はお前と話をしに来たのではない。闇の王」

 光の女王は剣を抜いた。
 それもそうだと闇の王も剣を抜く。

「さぁ、決着をつけましょう。今度こそ私がエテルナの王冠をいただくわ」

「ふっ、お前にできるかな」

 光と闇。

 二人の剣と力がぶつかり合う。

「はぁぁぁぁぁ!!」
「くっ・・・・・・」

 宮殿を破壊するほどの激しい戦闘の果てに、光の女王は剣撃で、闇の王を床に
叩きつけた倒した。

「ぐっ」

 その衝撃はすさまじく、闇の王はすぐには起き上がれない。
(ちっ、私とした事が・・・・)
 さすがに闇の王も覚悟した。
 これで私の世は終わり、また玉座を求める日々が始まるのか、そう思った。
 しかし、光の女王はとどめを刺さなかった。
 女王は、それ以上動くことなく、カタカタと剣を持つ手を震わせていた。
(チャンスだ!)
 その隙を闇の王は見逃さなかった。
「ふんっ!!」
 闇の王は、まだ残しておいた闇の力で足下の剣を取ると、光の女王の身体を貫い
た。
「あっ・・・・・」
「油断したな、女王。お前らしくもない」
 ふいに、光の女王の顔が闇の王を見た。
 その顔は絶望とも哀しみとも取れる表情をしていた。
 女王の瞳から光が消える。
 それと当時に光の女王の身体は光に包まれて微粒子となって拡散する。
「また、光の塔に戻ったか」
 光の塔の最上部には、光の女王の魂と捕らえている場所がある。
 今頃女王はそこで復活し、己の不覚に絶望するだろう。
「その顔が直に見られないことが残念だな」
 闇の王は立ち上がると、剣をしまった。
「さて、次はいつ来るのか」
 闇の王は玉座に座り直し、次は光の女王はどんな手で来るのかを考え、楽しんだ。
「しかし・・・・」
 女王の最期の表情。
(あれは何だったのだ?)
 彼女は、とどめを刺せたのにささなかった。
 光の女王の抜け目のなさは、ずっと戦ってきた自分が一番よく知っている。
 なぜ、彼女はあの決定的なチャンスを逃したのだろう。
「光の女王ともあろう者が、気の迷いとはな・・・・愚かな」
 闇の王は一刀両断したが、抱いた疑問はなぜか胸にくすぶり続けた。


 それから、闇の王は再び光の女王が訪れるのを待った。

 何年も、

 何十年も、

 百年を過ぎる頃には、当時の戦いの様子を知る者達はほとんどいなくなった。

「なぜ来ない?」

 光の者達の間では、まだ闇の王への反発の声は残り続けており、光の女王の再来
を待ち望む声が聞こえていた。
 けれど、女王はいっこうに姿を現さず、その声はどんどん小さくなり、やがて
ほとんど聞こえなくなった。


 エテルナは、空前の闇の世紀となっていった。


 臣民達は、闇の王に平穏を求めはじめた。
 闇の者の達の中からは、光の者達へのむやみな迫害はやめるべきだという声が
出始め、その数が多くなったとき、求めに応じて闇の王は光の者達を保護し、闇の
領域との間に緩衝地帯を敷いた。
 その頃の光の者達も闇の者にむやみに戦いを挑もうとはせず、長きに渡り戦い
続けてきた両者の間に、実質的な和平がもたらされた。
 たまに光の者達による反乱が起こっても、小規模に過ぎず、部下に任せていれば
良かった。
 それからの闇の王の敵は、同族である闇の者となった。
 長い闇の王の統治は、光の者ではなく闇の者から闇の王の座を狙う者を輩出し
はじめた。
 しかし、彼らは闇の王の敵ではなく、闇の王の治世を望む者が多かったことから
すぐに討伐され、やがて、闇の王に刃向かおうとする者はいなくなった。


 闇の王は、それらの出来事を目の前を流れていく映像のように眺めていた。
 時が経つにつれ、臣民達は世代交代し、王に仕える者達も次々と変わっていく。
 変わらないのは、不死の呪いをかけられた闇の王だけ。
 闇の王は、だんだんと自分の心が腐っていくように感じられた。
(私は、いったい何のためにこんな呪いを受けてまで戦ってきたのだ?)
 闇の者の指導者として周りから担がれ、彼らの期待に応えるために、闇の者が
支配する世界を得るために、光の女王達と戦ってきた。

 そして思いもかけず手に入れた闇の世紀が、

 ずっと望んできた世界が、

 エテルナの玉座の

 なんと空虚なものか。

「むなしい。死ねない身がこんなに苦しいとは」
 思えば、戦っている最中、輪廻を続け戦う事に飽きたと思ったことはあったが、
ここまでむなしい気持ちになったことはなかった。
「これが、カオスの呪いの本当の恐ろしさか」
 絶望を好む闇の者でありながら、自分は本当の意味で絶望をわかっていなかった
のだと、闇の王は思い知った。
 しかし、闇の王を倒そうとする者はいない。
 みんな、闇の王の治世が続くことを望み、わずかにいた王の座を狙う者は、
闇の王の前に姿を現す前に部下達に倒された。
 もし、闇の王を倒せる者がいるとすれば、それはたった一人だ。

「光の女王、どこにいる?」

 なぜ、現れない。

 なぜ、倒しに来ない。

 エテルナの王になりたくないのか?

 光の世紀をもたらしたくはないのか?

 彼女しかいない。

 自分のこの絶望を断ち切れる者は。

「探そう」

 闇の王は決意した。


 ***********


 闇の王の決意を臣民達は、今のエテルナの平穏が壊れると猛反対したが、王は、
押し切った。
 こうして、闇の王主導による光の女王の探索が始まった。
 自分の統治下にある国々や光の者達に与えた領地までくまなく探させた。
 ときには、調査も兼ねるという名目で前人未踏の地にまで調査団を派遣した。
 しかし、全く手がかりが得られないまま年月がすぎていった。
 けれど、闇の王は諦めなかった。
 必ずこの世界の片隅に光の女王はいると信じていた。
 いや、感じていたと言ってもいい。
 二人にかけられたカオスの呪いは、互いの存在を彼らに教えた。
 それはやがて、互いが己の半身を思わせ、その半身が今だ失われていないことを
闇の王は感じていた。

 ある日、故郷に帰ったはずの古い知り合いが再びこの世界にやってきて、連絡を
寄越してきたので彼が降り立つ無人の地まで会いに行った。
「ふたたびすまないね。実は君にお願いがあってね」
 知り合いいわく、この地はもはやエテルナの地でも絶滅危惧種となったドラゴン
の貴重な生息地であるというのにそれを荒らす者がいるという。
「この地は禁足地であるという触書は出しているんだが、違反する者がいるとはな」
「どうも君の世界の者じゃないようなんだよ」
「私の世界を土足で踏みにじろうとは。情報提供感謝する」
 進展のない光の女王探索の良い息抜きになると闇の王は自ら対処に乗り出した。
 案の定、荒らしていたのは機械達で、またカオスエネルギーを狙いにこっそりと
やってきたらしい。
「まったく、面倒な連中だ」
 いずれまた母艦に乗り込む必要があるなと思いながら、この地を荒らす機械達を
退治していく。
 そのうち、機械達がある場所を執拗に探索していることに気づいた。
「こんな所にエネルギーがあったのか?」
 何を狙っているのだろうと探った。
 そして、見つけたのだ。
  ずっと探し続けていた女性、光の女王を。

「こんなところに・・・・」
 女王は、今でもかすむことなく覚えている勇ましい鎧姿ではなく、懐かしい巫女
のドレスを身にまとい、一見すると金色の美しい女性が石の中に閉じ込められて
眠っていようにしか見えなかった。
 しかし、闇の王は彼女が光の女王であると確信した。
「なんだ、この石は。どうやって彼女を出せば」
 そう考えていたのもつかの間、不思議なことに闇の王が現れると光の女王を封じていた石が自ら割れて、彼女を救出することができた。
 女王の身体が闇の王の腕の中に落ちてくる。
(柔らかく、温かい)
 光の女王の身体に触れたのは、その時が初めてだった。
 闇の王はそのまま光の女王を宮殿に連れ帰った。
 女王はすぐに目覚めなかったが、医師の診断によれば時間の問題だという。
 闇の王は、毎日執務の間に光の女王が眠る部屋にやってきて、彼女の瞳が開く時
を待った。
 そして、その時はやってきた。
「・・・・・・・うぅん」
 光の女王の双眸が開く。
 吸い込まれそうなほど蒼く輝く瞳だった。

 けれど、目覚めた光の女王は、闇の王が戦い続けてきた光の女王ではなかった。

「今の私にあなたと戦う意思はないわ」

「私は、今のエテルナの平穏が好きよ」

 そう言って、女王は闇の王に対し戦いを挑む意思を見せなかった。
 それどこか、闇の王に対し微笑んですら見せたのだ。
(こんな顔をするのか)
 いつも険しい表情しか見たことはなかった。
 全身から闘気を発し、自分を見れば殺気にみなぎる目を向けてきたのに。
 怒りと闘志でギラついてた女王の青い瞳が、あんなにも星のごとく優しげにきら
めく碧玉の瞳とは知らなかった。 
 ドレスをまとい、穏やかな雰囲気を漂わせ、朗らかに微笑む彼女は、包み込んで
くれるような光を放つ金色の絶世の美女にしか見えない。
 女王は、そこにいるだけで闇を払い、愛と幸福の化身のように見る者を惹きつけ
る。
 なぜ彼女が光の指導者に選ばれたのか、いかに光の者を魅了しつづけたのか、
闇の王は理解した。
(なぜ、こんなにも惹かれるんだ?)
 数百年ぶりに会った光の女王は、以前と全く変わってしまった。
 闇の王は最初は戸惑い、距離を置いた。
 けれど、その姿を見るだけで、声を聞くだけで、抱えていたむなしさが消え、
絶望を薄れていった。
 闇の王はやがて毎日のように光の女王に会いに行った。
 その時の二人の間には、数百年前と全く違う、なんの憎しみもない、穏やかな
時間が流れていた。
 繰り返される日々、止まりかけていた時間が動き出したような気がした。

 けれど、光の女王は闇の王に傍にいることを拒んだ。

「私達の戦いはもう過去のこと」

「さようなら。闇の王」

 離れていこうとする女王を闇の王は必死につなぎ止めた。
 今、離してしまえば、彼女の言うとおり本当に世界の終わりまで会えないような
気がして。
 だが、闇の王がどんなに手を尽くしても、光の女王はこの手をすり抜け去って
行こうとする。
 さらに、女王に夫がいるという事実が、闇の王の心を引き裂き、追い詰めた。
(馬鹿な・・・)
 敵対していた頃から、光の女王に関する情報はどんな些細なことでも集めさせて
いた。
 けれど、夫がいるなど一度も耳にしたことがなかった。
 だが、女王は夫の存在を認めたのだ。
「認めない・・・」
 怒りと憎しみが、闇の王の心を支配した。
 三度、闇の王の下を離れようとする光の女王を無理矢理犯した。
 女を無理矢理組み敷いたのは、それが初めてだった。
 それまではそんな気はなかったし、そんな必要すらなかったからだ。
 初めて見る光の女王の肌は、思った以上に白く、傷跡がたくさんあった。
(綺麗だ)
 この傷跡すべてが自分で刻んだものかと思うと支配欲が刺激され、闇の王がとど
めに刻んだ花の刻印が愛おしかった。 
 ただ、驚いたことに光の女王は純潔だった。
(夫がいるのに?)
 不思議だった。
 いくら光の者とはいえ、あまりに聖人的すぎる。
(本当に光の女王に夫などいるのだろうか?)
  適当な理由をつけ、部下に探させたが、光の女王の夫を名乗る男どころか、女王
を探す存在すらいなかった。
「女王は嘘をついているのか?なぜ、そんなことをする?」
 わからなかった。
 けれど、だからといって光の女王を離すことはできなかった。
 無理矢理組み敷いて以来、闇の王は毎夜光の女王と閨を共にした。
 歴代との寵姫ともこれほど閨を共にしたことはない。
「この私が、女王にこれほど溺れるとはな・・・」
 かつて宿敵だった女を組み敷いて心に及ぶのは支配欲ではなく、強い不安だった。
 もう二度と離れないように、
 忘れないように、
 己の存在を女王の身体に刻み込もうと必死だった。
 そんな闇の王を光の女王は嫌がらなかった。
 女王の気持ちを確かめるために、寝台の女王の手を届くところに剣を置いていた
が、女王がその剣を手に取ることはなかった。
 女王は、毎夜訪れる王を受け入れた。
 次第に王の胸の期待が浮かび上がるようになった。
 けれど、光の女王が闇の王を見つめ、何か言いたそうにするのを辛そうな表情で
拒む度に、王の期待は傷つけられ、闇の王のいらだちは増した。
「どうして言ってくれないんだ」
 闇の王は光の女王が何を言おうとしているのかわかっていた。
 言わそうとして、
 否、言って欲しかった。
 でも女王の口からそこ言葉が聞こえることはない。
 光の女王に触れるとき、彼女の身体は温かった、
 けれど、心はすれ違い、満たされぬ夜が続いた。


 そんな折、廃地におそるべき魔獣が現れ被害が相次いでいるとの報告を受けた。
「我々だけではダメです。陛下、どうか御出陣を」
 久しぶりに闇の王の相手となりそうな大物だった。
 光の女王との夜に隙間風を感じていた闇のは、女王と距離を取る良い理由になる
と二つ返事で引き受けた。
 それでも黙って出陣することはなく、直前に光の女王に会いに行った。
 そうしたら彼女は、

「あなたに倒せない者はいないわ。あなたに武運を」

 そう言ってくれたのだ。
 たまらず、女王を抱き寄せ口づけた。
 すると女王を答えてくれた。
 唇を離すと名残惜しく、押し倒す時間がないことを惜しんだ。
「待っていてくれ」
 そう頼むと。
「ええ。待っているわ」
 そう言ってもらえた。
 その約束は守られる。そう思えた。

 地上で暴れていた獣は思った以上に強大で、さすがの闇の王も手こずった。
「これほどの魔獣は、光との戦い以来だ」
 けれど、だんだんと往年の感覚を取り戻し、見事に打ち倒した。
 勝利に酔う間もなく光の女王に会いにいった。
 早く彼女に会いたかった。
「光の女王!!」
 部屋に行くと、彼女は約束通り待ってくれていた。
 そして彼女は、闇の王の勝利への褒美として、闇の王がその人生の中で一番
うれしく思ったものをくれたのだ。


 ***********


 光の女王の部屋の扉がノックされた。
「陛下。祝賀会の準備が整いまして、皆様お待ちしておりますが・・・」
 返事をするのも面倒に思ったが、愛しい妻に促され、闇の王は返事をした。
「私を待たなくて良い、適当にせよ」
「承知いたしました」
 それきり声は聞こえなくなり、ようやく鬱陶しい仕事から解放されたと闇の王は、
妻の胸の谷間に顔を埋める。
「いいの?行かなくて?」
「今夜は初夜だぞ。邪魔をする方が悪いのだ」  
 お前まで野暮なことを言うなと闇の王は胸から顔を離し、光の女王の唇に口づけ
る。
「すぐに結婚式の準備をさせる。欲しいものは何でも言え」
「いいわよ、式なんて。一番欲しかったのにもらえそうになかったものをもらえた
から充分よ」
 光の女王は闇の王に口づけを返した。
「言ったでしょう、私は今の平穏が好きだって。私のことを知ったら光の者達が
黙っていないわ」
「そんな者達は蹴散らす」
「そしたら私はあなたの傍にいられないわ」
「それは困る」
「なら今のままで。私は、ただあなたの傍にいたいの」
 光の者を完全には裏切ることはできない。それでも傍にいてくれると言う妻を
闇の王は強く抱きしめた。
「いじらしい女め。闇の者達の王である私にこんなことを言わせるのはお前だけだ」
 闇の王は愛おしげな目で光の女王を見つめながら告げる。

「愛している」

 そう言われ、光の女王は碧玉の瞳を潤わせながら微笑んだ。

「私もよ。愛してるわ、闇の王」

 そう告げてくれたバラ色の唇を闇の王はむさぼった。






 こうして、光の女王を妻に迎えた闇の王だが、やはり結婚式をしてその事実を
知らしめるべきだったと、後日後悔した。
 というのも、
「陛下、本日の負傷者ですが、階段から転げ落ちた者3名、柱に激突した者5名。
浮き石から落下した者1名です。これにより、警護兵の数が足りなくなりました」
「~~~~~~~~他の軍団から一時的に出向させろ。なるべく女性の兵士をな」
 部下からの報告に、闇の王は苦虫をかみつぶしたような顔をする。

『もう脱走なんかしないからもっと自由にして』

 と愛しい妻に言われた闇の王は、光の女王の自由な行動をエテルナの宮殿並びに
天空領域全体に認めた。
 それで、光の女王は天空全体を自由に散歩したりするようになったのだが、

「女王様、なんとお美しい」

「日の光のごとく輝いていらっしゃるわ」

 闇の王と結ばれた光の女王は、王に愛される度にますます美しくなり、まるで
黄金の花が咲き誇るように輝き、人々を魅惑した。
 行く先々には、女王の目にとまるように恋文が置かれ、(ある回廊では数が多す
ぎて、手紙の絨毯ができていた)、女王宛の花束や送り物は日増しに増えていった。
 しまいには、女王に見惚れた者が階段から踏み外したり、柱や壁にぶつかったり
する事故が相次ぎ、目下負傷者が続出し、警備に穴まで出始めいるのである。
 そこへ、一人の兵士が血相抱えて駆け込んできた。
「大変です。地上からの使者が失血死寸前になるほどの重傷を負い、医務室に運ば
れました」
「なんだと!?刺客にやられたか?」
「いえ、鼻血の出し過ぎです」
「鼻血・・・・だと?」
「光の女王様が温泉に入られた後、薄着で湯上がりの散歩に出られたのですが、
どうやらそのお姿を目撃したらしく」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
 闇の王の怒りに震えているような、うらやましがっているような、なんとも悩み
深き沈痛な面持ちに臣下達は困惑するのであった。

 
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