忍者ブログ

幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

女王の結婚 第2話 選択の代償

 力を借りた代償を払うために、オラクルの神殿を訪れた光の女王。
なぜか、自ら監視役としてついてきた闇の王と共に、神殿内の試練に取り組むが、
内容が以前と変わって、なおかつ不可解な内容で・・・・。



エテルナ・ノクティス 闇の王×光の女王 光の女王主人公

 原作で闇の王がやったことを光の女王がやったとしたらどんな感じになっただろうと
思い、書きました。
 立場が逆転してるので、キャラの性格も原作とは違います。
 なんでも大丈夫な方のみお読みください。


















 光の女王が、彼の神の事を知ったのは、クロニクラーに自身の抱える疑問を質問
したときであった。

『クロニクラー、全能なるあなたならわかるはずよ。お願い教えて』

『残念だが女王よ。わしが見えるのは「今」だけなのじゃ。その先はわからん』

『けれどな。この世に見える者が全くいないわけでもない。公には語られぬが時の
流れを司る神がおるのじゃ』

『それは、誰?』

『その者の名は、時の女神オラクル』


 果てなき海の空に彼女の神殿があった。



 夢と黄金でできた神殿に、耳にすれば心惹かれる摩訶不思議な笛の音色が流れる。
 ふと、笛の音が止んだ。
「来ましたね」
 笛の主はにたりと笑う。
「なんと都合のいい。二人が一緒に来るとは、これは素敵な歓迎をしなくてはなり
ませんね」
 うふふふふと妖しい笑い声が神殿内に響いた。


 ***********


「ここが、オラクルの神殿か。こんな所にこんなものがあったとはな」
「地上の果てなき浜辺からここまで続く見えずらい光の床があって、一応登っては
来られるの。でも、飛んでくるのは楽でいいわね」
 光の女王は、ドラゴンから降りた。
「それにしてもドラゴンを手懐けるなんて。どうやってやったのよ」
 光の女王が知る限り、光の者、闇の者に関わらず、ドラゴンを手懐けた者はいな
いはずだ
「ずいぶん昔にドラゴンの生態に詳しい奴と知り合ってな。奴の願いを叶える手伝
いをした際に、礼として手懐け方を教わったんだ」
 お前はここで待っていろと愛龍を労りながら闇の王は答えた。ドラゴンは闇の王
を慕っているのか、スリスリと頭を王にすり寄せる。
(ずいぶんと懐いちゃって。まずいわね。私も方法を身につけないと)
 闇の王ができて、光の女王ができないことなどあってはならないのだ。 
 ドラゴンが叶わずとも、それに匹敵するなにか別の生物をと考えて、光の女王は
いけない、いけないとかぶりを振る。
(今の私にそれは無用よ。それに、私だってオラクルって闇の王が知らない神の
知り合いがいるんだから。同等よ)
 そう自分を慰める。
「またせなた。では行くぞ」
「本当に一緒に来る気なの?この中は非常に危険よ」
「ほぅ、お前が私の心配をしてくれるのか?」
「~~~~~~~罠にかかっても助けないわよ!」
 不敵な笑みを浮かべて顔をのぞき込んでくる闇の王をぷいっと無視して、光の女
王は神殿内に入っていった。


 オラクルの神殿内は、黄金に彩られたエキゾチックな雰囲気ながらも、壁に描か
れた謎の目がオカルト感を醸し出し、闇の王の関心を引く。
「こんな部屋は見たことがない。ここに、そのオラクルとか言う神がいるのか」
「ええ。あの壁に描かれた目は、オラクルのシンボルよ」
 光の女王は部屋を見渡し、以前来たときと少しも変わらない様子に、神の永遠を
知る。
「前にここに来たとき、オラクルの元へ行くための試練を受けたわ。神殿中をくま
なく回って三つの瞳を集めるの。多分今回も同じね。その時と変わっていないとい
いけど」
「神とは、めんどくさいことが好きだな」
「少し同意するわ」
 その時、神殿の入り口に描かれた目のシンボルが反応して、女王のクリスタルア
ローを真実の矢に変える。真実の矢は、オラクルが作った道具の一つで、この神殿に
魔法により覆い隠された真実を知ることができるのだ。
「これで神殿内を比較的安全に回れるわ」
 女王は、壁に向かってクリスタルアローを打つ。
「うん、ここには隠された壁はないようね」
 この神殿は隠された壁や落とし穴が満載なのだ。女王はそのまま突き進もうとす
るが、
『お待ちなさい、光の女王よ』
 どこからともなく重みのある女性の声が聞こえてきた。
「この声は、オラクル?」
『そのまま進んではいけません。見えない壁にぶつかってしまいますよ』
「ええっ、でも真実の矢は何も見せなかったわ」
 真実の矢は刺さった場所に魔法がかけられている場合、ほんの少しの間だけ魔法
を解除し、真実を見せてくれるのだ。だから、見えない壁があれば壁を見せてくれ
るはずなのに、効力が生じていないとはどういうことだろう。矢も魔法もオラクル
のものなのに、

『以前と仕組みを変えたのですよ。光の女王、闇の王に触れながら矢を撃つのです』

「・・・・・・・・・・は?」

 この言葉に女王は一瞬、固まる。そして、解凍した後、大いに動揺した。


「ちょ、ちょっと触れながらってどうやって!?」
『そうですね。まずは手をつなぎながらでいいでしょう』
「手をつなぐって言っても・・・」
 ちらっと女王は闇の王を見る。
『何を今更恥ずかしがっているのです。ここまで闇の王にぴったりとくっついて
来たのではありませんか』
「恥ずかしがってないわよっ。って言うか見てたの!?」
 光の女王は赤くなって見えないオラクルに怒る。
「しょうがないでしょ。闇の王がついてくるって言うし、私じゃドラゴンに乗れな
いんだもの」
 闇の王はついてくる代わりに神殿までの足は用意してくれた。それがドラゴンだ。
 しかし、ドラゴンは闇の王以外の指示には従わないため、やむを得ず光の女王は
闇の王が乗るドラゴンに同乗したのだ。そして、同乗方法が闇の王の前に座るとい
うものだっただけだ。やましい意味はない。
『おかげで私は、おいしい光景を見ることができましたね』
「はぁ?何を言って」
「おい。さっきからごちゃごちゃうるさいぞ、お前達。話がすすまん」
 埒が明かなさに苛立ってきた闇の王は、
「ほら」
 と、自分の手を女王に差し出す。
「え?」
「手をつなげば見えるようになるのだろう? そのぐらいは協力してやる」
 早くしろと促され、女王は少し戸惑ういながら王の手を握り、クリスタルアロー
を撃つ。
 するとオラクルの言うとおり、見えない壁が現れた。
『このように、この先は二人が協力し合わないと突破できない仕様になっています
二人で見事に試練を突破して、鍵となる三つの目を集め、私の元へ来るのです』
「なぜそんな仕様に」
『せっかく光と闇、双方の王が来たのですからね。試練はその実力にあわせるもの』
「そういうものなの?」
『そういうものです。それに、そのほうが二人が燃えるし、萌えるし』
「え?」
『なんでもありません。さあ、ゆくのです。あなたたちの様子は、しっかりじっく
りと見させていただきますからね』
 なんだか不穏なセリフをまき散らしながら、オラクルの声はそれ以上聞こえなく
なった。
「オラクルとは、ずいぶん変わった神なんだな」
「たしかに初めて会ったとき不思議な人とは思ったけど、あんな感じで不思議な人
じゃなかった気がするのよねぇ」
 とはいえ、ここはオラクルの神殿。ルールは彼女が決める。その思惑を受け入れ
なければ、先に進めない。
 クリスタルアローの効果は永続的では無く、見えていた壁が消えていたため、
女王はふたたびクリスタルアローを撃つ。
「さて、これでいいわ。じゃあジャンプして行きましょうか」
 女王は闇の王の手を離すが、すぐに王に横抱きに抱きかかえられる。
「闇の王!?」
「つかまっていろ」
 と言って、闇の王はそのまま壁ジャンプで、壁を乗り越える。
「お、降ろしてちょうだい」
 着地するとジタバタ暴れる女王を降ろすが、その手をつかむ。
「は、離してよ」
「断る。この場所はお前の矢が頼りだからな。置いて行かれたら困る」
「そ、そんなことしないわよ」
「それに触れ合っていないと効果が発動しないんだろう。この先こんなのが続くの
なら、常にこうしていた方が行動がしやすい」
「~~~~~~~わかったわよ」
 こうして二人は、手をつないで神殿を攻略することにした。

 そして、この様子を見ていたオラクルは、
「計画通り」
とほくそ笑んでいた。

***********


  闇の王は直感が非常に優れているのか、見えなくてもそこに何かあるのを察知し
ていた。
「この先に何かあるか、撃ってみろ」
「わかったわ」
 その忠告に従い、周辺にクリスタルアローを撃つと見えない壁や罠があった。
 長き眠りから目覚めてまだ日が浅く、王の力を完全に取り戻してはいない。 
 さらに宿敵と手をつなぐという慣れない状況下で、挙動不審が多めの女王に取っ
ては悔しいが、頼りになる存在だった。
 さて、三つの瞳を取得するオラクルの試練だが、女王がかつて受けたスリル満載
のアスレチックや難解なパズルでは無かった。
 神殿内と探索していると、壁にひときわ大きな目が描かれた部屋にたどり着いた。
「あれよ。あの目の瞳。あれが鍵よ」
 目の瞳は、鍵の一つでできていた。
「では、ここが試練の部屋というわけか。どんな試練なんだ?」
「そうね。見たところアスレチックじゃなくて、パズルの方かしら」
 その時、壁に書かれた目がしゃべった。

『神殿に足を踏み入れし者よ。そなたに試練を与えよう』
「ほぅ、あの目はしゃべるのか」
「あら?前と仕様が違うわ。私の時はこれが試練とか全然アナウンスなかったのに」

『汝らは互いを知らなければならない。今から問う質問に双方答えよ』
「ん?質問?」
「パズルじゃないの?」

『第1問 自分の好きな食べ物は?』

「「・・・・・・・・・・は?」」
 闇の王と光の女王。二人そろって目が点になった。
「何だ、この質問」
「何考えてるのよ、オラクル」
 混乱する二人だが、試練の目は感情のない言葉を投げかけるだけだ。
『質問に答え、試練を突破しなければ、汝らは永久にこの神殿に閉じ込められるこ
とになろう』
「それは、困る。さっさと質問に答えて、こんな所出るぞ、女王」
「わかってるわよ。仕方がないわね」
 光の女王は、コホンと一つ咳払いして気を取り直す。
「わたしは、甘い物ね。特に頭の疲労を取ってくれるから。闇の王は?」
「酒だな」
「なんとなくそんな感じね」
 そんな答え方でよかったらしく、オラクルの目は次の質問に移った。

『第2問 自分の特技は?』
 これには闇の王が先に答えた。
「オルガンを弾く」
「え、聞きたい」
 光の女王は思わずそう答えた。まさか王に、そんなインテリな趣味があるとは
思わなかったのだ。
(でも、なんとなく似合う気がするわ)
 昔、光の奏者が奏でてくれたが、陽気な感じが多かった。
 彼の奏でる音色はどんな感じなのだろうか。
「そのうちにな。光の女王は何か弾けるのか」
「私はあんまり・・・。じゃなくて、私は研究ね。光の矢セレスティアル・コンパ
ニオンは私の自慢の作品だけど、より良い物になるよう研究を重ねた結果、ある
性質を持っていることがわかったの」
「ほう、それは興味深い。どんなものだ?」
「そう簡単に教えるわけないでしょ。でも、昔それについての論文を書いたから
探してみるといいわ。今は、どこにあるか知らないけど」
「ふむ。まぁ、心当たりはあるさ」
 その口ぶりからして、本気で探しそうだと光の女王は思った。

『第3問 相手との関係を一言で表すなら?』
 これには、闇の王と光の女王は同時に答えた。
「「宿命の相手」」

『第4問 お互いの第一印象は?』
 これにも二人同時に答える。
「「最悪」」
 そう答えるなり二人は互いに顔を見合わせて、少しばつが悪そうな顔をした。

『第5問 相手に対して意外に思ったことは?』
 この質問に、光の女王は少し考えてから答えた。
「意外に・・・・真面目で思いやりもある性格ことかしら」
「なんだそれは」
「だって、世界を平穏に統治していし、部下も公平に扱っていた。闇の王の治世だ
もの。もっと無秩序なものだと思ってたわ」
「おい、闇は悪や堕落を司るが、無秩序であることとは違う。闇には闇の通すべき
筋があるのだ」
「あら、そう?」
「統率が取れていなければ、お前達とは戦えていなかっただろう」
 闇の軍勢は力尽くでまとめていたのではない。だから、ずっと光の軍勢と戦えて
いたのだ。
「そうね・・・・、愚問だったわ」
 じつはもう一つ、光の女王には意外に思っていたことがあった。

(闇の王が、私に優しかった)

 自分を捕らえても虐待など一切せず、やりたいことがあればできうる限り手助け
してくれて、望めば自分の世界を見せてくれた。
 そんな最中、光の女王は見たのだ闇の王が微笑む顔を。
 いっさいの邪さのないやさしい笑みだった。
 一方、闇の王の方はと言うと。
「女王が殺意を向けてこない。飽きるほど見た勇ましさがない」
 それを聞いて光の女王は、なぜかショックを受ける。
「確かに・・・力は完全に取り戻していないけれど、弱くは無いわよ」
「度胸は残っているな。だが、ずいぶん雰囲気が柔らかくなった」
「・・・・・・」
 それは、光の女王が弱くなり、宿命の相手ではなくなったという意味だろうか。
 自分が眠っている間に、闇の王はドラゴンまで従えてしまった。
 対して自分は弱くなり、格差は否めない。
(それでも、私は・・・・・)
 この選択は後悔しない。
 そう決めたけれど、闇の王の評価は胸が痛んだ。

『では、最後に。急に相手が行方不明になったらどうする?』
 この質問を受けて、二人は無言になり、場は静まりかえった。
(行方不明。そうね、この人から見た私はずっとその状態だった)
 前の戦いから復活した後、仲間や敵などの接触を極力避けてクロニクラーの元を
訪ねた。
 そして、教えられた情報を元にオラクルを探しだし、彼女の協力を得て、長い眠
りについた。
 自らは解けぬ魔法。
 誰かが探さない限りたどり着けない場所でだ。
 目覚めたときに闇の王に投げかけた質問が胸に蘇る。
(なぜ、私を目覚めさせたの?)
 そんな光の女王の傍で、闇の王が答えた。

「探す」

 迷いのないはっきりとした声だった。。
「光の女王を殺すのはこの私だ。私以外の者に譲る気はない」
(そうね。・・・・・そうよね。それが私達の運命)
 自分はいったい何を期待していたのだろうと光の女王は己を恥じたが、それ以上
に胸の奥の希望が一瞬でしぼんだことに胸が痛んだ

「私は・・・探さないわ」

 光の女王は、ぽつりと答えた。
「闇の王が私を倒しに来ない限り、光の時代が続く。わざわざ自分で争いの種を探
しには・・・・・行かないわ」
 そう、これがきっと正しい答え。
 でもこれを口にするとき、なぜ口の中が棘だらけのように痛く、心臓がぎゅっと
強く握りしめられるんだろう。
 光の女王の答えに、闇の王は何も言わなかった。

『結構だ。鍵を受け取るがよい』
 壁に描かれたオラクルの目から瞳がこぼれ落ち、光の女王はそれを受け取る。
 オラクルのいる場所へ行くために必要な鍵。オラクルの瞳が一つ手に入った。
 でも、ちっともうれしくなかった。


「むむっ、これは手を加える必要がありますね」
 オラクルは、指をパチンとならした。


 ***********


 光の女王は再び闇の王と手をつないで神殿内を探索した。
 けれど、ここに来たばかりの時と違ってなんだか雰囲気が暗い。 
 二人は、会話をしなかった。
 罠などがありそうな場所には、闇の王が声をかけ、光の女王はそれに反応し、
クリスタルアローを撃ったが、それ以外の会話は皆無だ。
 そのうち、先ほどの試練の間で見たものと同じオラクルの目が刻まれた扉を見つ
けた。
「ここが、次の試練の間のようだ。入るぞ」
「・・・・・えぇ」
 二人は扉を開け、部屋の中へと足を踏み入れた。
 その瞬間、二人は漆黒の闇に包まれる。
  上も下もわからない。虚無の空間
「これは・・・」
 光の女王はクリスタルアローを四方八方に投げつけるが、反応がない。
「闇の王、どこ?私の手を握っていて」
 その時、光の女王は闇の王と手を離していることに気づいた。
「闇の王?どこにいるの!?」
 周囲を見回すが、どこにも姿が見当たらない。
 そこへ、闇の奥で小さな光の瞬きを見つけ、急いで駆けつけるとそこにあったの
は、オラクルの瞳の一つであった。
 それを受け取ると目の前に、外への出口らしき扉が現れる。
「ここから外に出られるのね」
 ドアノブに手をかけて、外に出ようとしたが、
「闇の王」
 光の女王の手が止まる。
 このままこのドアを開けて出て行けば、彼を置いていくことになる。
 闇の王は、今のこの闇の中をさまよっているのだろうか。オラクルの神殿から
無事に脱出するには、真実の矢の力を宿した自分の持つクリスタルアローが必要だ。
「大丈夫よ、彼は闇の王。闇の中なら自力で脱出するわ」
 先ほど自分は言った。 
 闇の王は、宿命の相手。殺し合う運命。
 闇の王がいなくなれば王は自分となり、彼が現れない限り光の時代が続く。
 ずっと、
 彼が現れるまで、
 彼が自分を殺すその時まで、
 ずっと・・・。
 なのに彼は、現れない光の女王を
『探す』
 と言っていた。
 自分の時代を放棄してまで探すと言うのだ。
「・・・バカね」
 自ら築いた平穏の時代を終わらせるかも知れないのに、探しに来たのだ、
 探して、殺さず、傍に置いた。
「・・・・・」
 光の女王は、今すぐ扉を開けるのを辞めた。
「闇の王、聞こえてる?」
 光の女王は、可能な限りの大きな声で虚無の闇に向かって叫んだ。
「瞳は手に入れたわ。こんな所早く出るわよ。闇の王でしょ。闇なんてかきわけて
出てらっしゃい」
 しかし、返事はない。
「どうすれば・・・」
 光の女王は考えた。答えは簡単だった。闇に対抗できるは光だけだ。
 光の女王は、ありったけの光の力を作りだした。

 闇の中で、闇の王は舌打ちしていた。
「闇の王であるこの私が、闇を支配できないとは」
 方向と時間感覚を奪われ、どこから来たのか、どれくらい時間が経ったのかすら
わからない。
 その時、遙かむこうでチカチカと輝く光を見た。
 小さいけれど闇を切り裂くほどに鮮烈な光。
 その光に王は見覚えがあった。
 いつも立ち向かってきた、どんな漆黒の闇でも染まることなく、潰れることなく、
輝き続ける恒星の光。
 その光を求めて進んでいくと、光は一人の女性の姿となった。

「闇の王、よかった」

 光の女王は、闇の王の姿を見るなり駆けより抱きついた。
「・・・・っ」
 闇の王は驚き、目を見開く。しかし、光の女王が抱きついてきたのは一瞬で彼女
の身体はすぐに離れ、王の手を引く。
「さぁ、早くここから脱出しましょう。鍵はもう手に入れたわ」
「ああ・・・」
 二人は手をつないで闇の外へ出た。
「よかったわ。あなたが私の光と見つけてくれて」
「なぜだ?」
 闇の王は訪ねた。
「なぜ、私を助けた?」
「あら、それを私に聞くの?」
 光の女王はクスッと笑って答える。
「そうね。少しだけ、あなたの気持ちがわかったかしら」
「・・・・そうか」
「さぁ、行きましょう。残るのは一つだけよ」
「ああ・・・」
 二人は、手をつないでゆっくりと神殿の中を歩いて行った。

 同じ頃、オラクルはこの様子を見てガッツポーズをしていた。


 ***********

 
 最後の試練は、以前光の女王が受けたような試練であり、登れる足場をクリスタ
ルアローで見切って上まで登ったが、下に落ちる穴があり、その穴を降りた先に鍵
があるようだが、穴の幅は狭く一人しか通れそうにない。
「これじゃ、いつものようには行かないわね」
「さすがに機動力が落ちるか」
 とはいえ、二人が力を合わせないと矢の力が発動しない。
 どうするべきかと思案しているとオラクルの囁きが聞こえてきた。
『なかなかいいものを見せてくれた二人に、ここでヒントを差し上げましょう』
「ヒント?」
「そんなことよりこの馬鹿げた仕様を解いてくれ」
『何を言うのです闇の王。ここからが真骨頂。よいですか、真実の矢は二人が触れ
あわなければ効果が発動しませんが、その触れあいが深ければ深いほど、それに応
じて、わずかな間だけ二人が離れていても効果が発動します』
「深ければって、どういう意味よ」
『それは闇の王なら察しがつくはず。やはりそこは男性がリードしなくては。では、
頑張るのですよ。さらにいいものを期待しています』
 といって、オラクルの声は消えた。
「????意味がわからないわ」
 困惑する光の女王に対し、闇の王も別の意味で困惑していた。
「一つ聞くが、オラクルは本当に神なんだよな?」
「え?ええ、そうよ・・・」
「・・・・・・邪神という言葉もあるか」
「ど、どういう意味よ」
 警戒する光の女王の腕を引くと闇の王はその額に口づける。
「・・・・・!!??????!????」
 顔を真っ赤にして混乱する光の女王に、闇の王はあきれた顔をする。
「額に口づけたくらいでなに動揺しているんだ。子どもだってもっと堂々としてい
るぞ」
 闇の者の子どもは非常に早熟で、そういうことへの順応と耐性が高かった。
「深い触れあいとはこういう意味だろう。ちょっと矢を撃って見ろ」
「ななな」
「早くしろ」
 光の女王は不審に思いつつも、闇の王に離れて矢を放つとちゃんと効力が発生し
た。
「大丈夫そうだな、行ってこい」
「~~~~~~~~」
 光の女王は、何か言いたそうにしながら穴の中に飛び込んだ。
 しかし、すぐにクリスタルアローの効力が切れ、穴の上に戻されてしまう。
「だめ、効力がすぐに切れる」
「ふむ」
 今度は闇の王は、光の女王の額の他に手の甲にも口づける。
「なんでそっちにもするのよ」
「回数を増やせばその分効果時間も増えるだろ。試して見ろ」
 確かに効果時間はふえたが、それでも、鍵のある場所まで到達するのには不足で、
闇の王は鎖骨、耳の裏、うなじにも唇を落とす。
 光の女王は、羞恥に身もだえしながらも
(これは、鍵を手に入れるためよ)
 と強く自分に言い聞かせ、それに耐えた。
 しかしどうしても最後のところできれてしまう。
「なら、仕方が無いな」
 闇の王の指先が、光の女王の唇に触れる。
「そ、それだけはダメよ」
 そこは最後の砦とばかりに光の女王は拒むが、
「ならいつまでたってもオラクルに会えないがそれでもいいのか?」
「そ、それは・・・」
「神の怒りがどれほどのものか、お前はよく知っているはずだ」
 この不死と不滅と永遠に繰り返される争いは、最高神の怒りを買った結果なのだ。
「オラクルは悠長な性格なようだが、いつまでもつか」
「~~~~~」
 それでもまだもじもじしている女王に王は待つのに飽き、さっと女王の顎を
くいっとつかむとその唇に口づけた。
「・・・・んぅ」
「・・・・っ、これでいいと思うがまた途中で効果が切れてもな」
 王はもう一度口づけ、今度はより深く舌まで入れる。
「んぅ・・・・んむぅ・・・」
 くちゅくちゅと舌を絡みつかせて口腔をなぶり回され、ようやく光の女王は解放
された。
「・・・・・・・はっ」
 濃厚な口づけに女王の息が上がっている。こんなキスははじめてなのか、頬が赤
く染まり、瞳が潤んでいた。
「これで足りるだろう。行ってこい」
「~~~~~~~~///」
 光の女王は、闇の王の頬に一発ビンタを食らわせた後、再び鍵を取りに向かった、
「・・・・うぶな奴」
 そうつぶやきながらも闇の王は口元を緩ます。それは女王をあざ笑うのでは無く、
愛らしいものを見たようなものであった。


 光の女王は無事鍵を持って帰り、これですべての鍵がそろった。
 オラクルの部屋の前まで女王は無言だった。
 部屋の扉の前に刻まれた三つの目に鍵となる瞳が挿入される。
『よくぞ試練を突破しましたね、二人とも。よい物を見せていただきました』
 満足そうなオラクルの声が聞こえた。
『さて・・・光の女王は私の元へ。闇の王はそちらから神殿の外へ出て待っている
ように』
「なんだ、散々振り回したあげく、ここまで来て私は門前払いか?」
 眉をひそめ、不愉快そうな闇の王にオラクルは、
『女同士で大切な話があるのです。それに、これは私と女王との間で結ばれた契約
についての話。部外者には席を外していただきます』
「ちっ、神とは面倒だ」
 腐っても神であるオラクルとの争いを望まない闇の王は、大人しく言うことに
従うことにする。
「では女王、神殿の外で待つ」
「・・・・・」
 それに返事をせず、光の女王はオラクルの部屋へと入っていった。


「光の女王。お久しぶりです。よくぞ眠りから覚められた」
 オラクルは不思議な笑みで女王を出迎えた。
「私も数々の試練を受けてきたけど、今日の試練が今まで一番最悪だったわ」
 光の女王は恨みのこもった目をオラクルに向ける。
「なんなのよ、あれ。いったい何の意味があるの?」
「もちろん意味はありますよ。私が楽しめる以外にちゃんと」
 おっと失言とでも言いたげにオラクルは口を紡ぐが、ぐふぐふと口元が緩むのが
止まらない。
「それで、どうでしたか?あなたが見た答えは?」
 オラクルの質問に、光の女王は怒りを収め、うつろげに答える。
「・・・・・闇が支配していても、エテルナは平穏だった。人は平穏をくれるなら
光も闇も関係ないみたい」
 それが答えだったのが。
 数世紀にわたる争いの結果得られたのは、そんな単純なこと。
(薄々気づいていた。でも受け入れられなかった)
 自分たちこそ至高。
 だから、自分たちが世界を支配しなくてならないと思い込み、相手の破滅を願っ
た。
「カオスが激怒するのは当たり前ね。そんなことがわからない者が世界なんて支配
できるはずがない。私達は、なんて無益な争いを繰り返してきたんだろう」
 自分たちは、平和な世界を築くために闇の者を滅しようと戦っていたはずだった。
 けれど、それはいつしか築かれた平和を壊すものになり果てていた。
(自分たちが戦う事をやめれば、平和は維持されるのでは?)
 薄々気づいていても、そんな考えは危険なものとされ、やめることができなかっ
た。
 あの時、あの村で少女の言葉がなければ自分は、今も己の愚かさに気づかずに、
闇の王と無益な争いを繰り返していただろ。

「ですが、それがわかってもあなたたちにかけられたカオスの呪いは続きます。
今やあなたたちの争いは、この世界の均衡を保つためのものとなっているのですか
ら」
「わかっているわ、オラクル。この呪いはすでに、私達の愚かな行為への罰の範疇
を超えている」
 光と闇の戦いは、いつしか世界の均衡を保つために、無くてはならないものと
なり、是が非でも行わなくてはならないものとなった。
「それでもあの時の私は、カオスの意思に逆らってでも確かめてみたかった。
この選択に後悔はないわ」
 その甲斐はあったのだ。
(この責任は私が払うわ)
 それが光の者へのせめてものわびであり、このエテルナの平穏を築いてくれた
闇の王への返礼であった。
「ありがとう、オラクル。あなたのおかげよ」
 光の女王はオラクルへの礼を述べた。
 クロニクラーからその存在と居場所を聞き、試練を乗り越え会いに来た。
 オラクルは光の女王の願いを聞き届け、長き眠りの魔法を授けてくれた。
 オラクルが居たからこそ光の女王は願いを叶えられたのだ。
(さぁ、代償を払おう)
 そのために、今日ここへ来たのだ。 
 そんな光の女王にオラクルは告げた。
「光の女王。私はあなたに力を貸す際に、二つの条件を出しました。覚えています
か?」
「私に課せられた代償ね。もちろん覚えているわ」
 オラクルの出した条件は二つ。
 その一つは、その輪廻において、光の女王はエテルナを統治してはならないとい
うものだった。
「今の私に、エテルナの王になるつもりは毛頭ないわ。闇の王の治世は上手くいっ
ている。私はこのままエテルナの片隅で、ひっそりと世界を見守っているつもりよ」
「では、闇の王の側を離れると?」
「ええ。今は大人しくしていても私の本能は闇の破滅を求めている。今のエテルナ
の平穏を守るためには、傍にいてはいけないのよ」
「ですが、女王。もう一つの条件はどうなさるおつもりですか?」
 そう尋ねられ、光の女王は表情を硬くする。
 オラクルに課せられたもう一つの条件。

 それは、その輪廻において、女王は自分を目覚めさせた者のものにならなければ
ならない。というもの。

 女王はどうせ目覚めさせるのは同胞であるし、問題は無いとしてその条件を受け
入れた。
 それが、まさか闇の王とは。
「オラクル。私を目覚めさせたのは、本当に闇の王なの?」
「それは間違いありません。カオスに誓って申し上げます」
「そう・・・・」
 女王は硬い表情のままうつむく。
「でもどうして・・・なのかしら?私は、闇の王の宿敵では無かったの?」
「あなたはその答えをすでに知っています。ですが、認めたくないだけです」
「・・・・・いいえ、無理よ。あり得ない。彼が私を妻にするはずがない」
 女王は、否定するようにかぶりを振る。
「そんなことをしてどうするの?もし傍に置くなら、私を「妻」ではなく「愛妾」
にするわ。私と光の者達を侮辱するためにね」
 それが闇の者の本質だ。
 その最も本質に近い闇の王が、それを外すわけがない。
「悪いけど、私にも光の女王として守らなければならない矜持と誉れがある。なに
よりこれ以上、光の者達を傷つけることはできないわ」
 闇の王の温情により、世界の片隅でひっそりと生きている光の者達。
 彼らが光の女王が貶められたことを知ったらどうするだろう。
(まぁ、彼らの中でも伝説になってるかも知れないけど)
 けれど、反乱や反発の理由くらいにはなる。そういう場合の理由はこじつけでも
いいのだ。
 愚かな騒動は、止めなければならない。
「ですが女王。これは守らなければならない条件なのです」
「だから、考えたの。私は一人で生きていくけれど、決して闇の王以外の夫を持た
ないわ」
 これなら正式でなくても実質的に光の女王は闇の王の妻となるので、約束を果た
したことになる。
「これで、代償は払ったはずよ」
「・・・・・・まぁ。今はそれでいいでしょう」
 オラクルは残念そうな顔をするが、それ以上追求する事は無かった。

 オラクルの元から神殿の外へ出ると闇の王が待っていた。
「出てきたか。話は済んだのか?」
「闇の王・・・・」
 光の女王は、彼を見て、なんとも言えない気持ちになる。
 自分はこの男の妻なのだ。
 そしてそれを、この男は知らない。
(いえ、知る必要がないのよ)
 それが、誰にとっても平穏なのだ。
「城に帰る前に、私が眠っていた場所に行きたいのだけど。ここからそう遠くない
から時間は取らないわ」
「まだ時間があるし、別に構わない」
 闇の王は光の女王に手を差し出す。
「来い、女王」
 光の女王は、複雑な思いでその手を取る。
 闇の王は鎧を着ており、その手にも手甲をはめていて直接肌に触れるわけではな
い。それでも、先ほど手を握っていたときよりも熱く感じ、胸の奥が痛んだ。


***********


 女王が眠りについた場所は、誰も寄りつかない世界の果てにある前人未踏の無人
の地だった。
 魔物もスライムやドラゴンぐらいしかいない。
 彼らは近づく者には敵と判断して攻撃するが、そうでなければ興味を持たない。
 ここなら長く静かに眠っていられるし、来る者も限られ、比較的安全と判断した
のだ。
 けれど、眠る前には見かけなかったものがそこにはあった。
「これは機械?なぜここに?」
 女王が眠っていた場所の近くには、機械の残骸があちこちに散らばっていた。
「こいつらは、この辺りをうろついていたんだ」
 闇の王が残骸を蹴り飛ばしながら説明する。
「お前が封じられていた石から微量のエネルギーを探知し、それを採取しようとし
ていたらしい。私に感謝するんだな。私がこいつらを撃退しなければ、おまえは
エネルギー源としてこいつらに利用されていたんだ」
(では、もしかしら機械の妻になっていた可能性もあるのね)
 心を持たない生命体と宿敵。どちらの妻がましだろう。
(彼らは『妻』とかどういう存在か理解しないだろうし、案外そっちの方が楽だっ
たりして)
 本当の名ばかり妻となり、以外に自由気ままで居られたかも知れない。
 そんなことを考えながら、眠っていた場所に着くと、そこにはなにもなかった。
(やっぱり、これは夢じゃない)
 長い眠りについたのも。
 闇の世紀も、
 エテルナの平穏もすべて現実だ。
 そして、自分が闇の王の妻になったのも。
「私を目覚めさせたのは本当に貴方なのね?」
「ああ、機械達がうろつく場所には何かある。何を探していたんだと探索していた
らお前を見つけた」
 
『心強く優しい女王を見つけた者よ。お前に彼女を託そう』

(あれは、誰の声だったんだ?)
 空耳かと思った瞬間、石が割れて女王が降ってきた。
 その身体を王は思わず受け止めた。
 女王に触れたのはそれが初めてだった。

「そう・・・・」
 光の女王はややうつろな目で周囲をきょろっと見渡すと、近くの蔦が絡んだ木の
根元近くで跪き、そこに生える草木をかき分けた。
「まだ・・・・あったのね」
 そこにあったのは、女王の鎧と剣だった。
 長き年月を得て朽ちてもなお、かつて戦場で輝いた白き光の片鱗を残している。
「おまえ、それは・・・」
 女王の後ろで立ちつくし、朽ちた鎧と剣を見て明らかに目に動揺を浮かべる闇の
王に、光の女王は静かに告げた。
「ここで眠るときに捨てたのよ。オラクルへの代償として、己の決意が鈍らない
ように」
 人知れずこの地へやってきて、鎧を脱ぎ、剣を地面に突き立てた。
(この姿、まるで墓標ね)
 そう、墓標だ。
 この朽ちた鎧と剣は、今の光の女王そのものだ。
 存在はすでに忘れ去られ、やがてその名も忘れ去られるだろう。
(光の女王は、ここで死んだ)
 戦いは、終わった。
 光と闇の戦いは、やがて完全に過去のものとなる。


「捨てた・・・だと・・・・?」
 人知れず下された光の女王の英断により、自分の治世が続くというのに闇の王は
目に怒りをにじませる。
「そう・・か・・・、ならお前の新しい鎧と剣を造らせよう。光の素材を扱える者
はまだ残っているはずだ」
 その言葉に、光の女王は耳を疑う。
「何を言っているの?そんなもの造ってどうするのよ」
「私と戦うには、剣と鎧が必要だろう。それとも丸腰で挑む気か?」
 こうまでして自分と戦う事を望む闇の王に、「なんて戦いが好きな人」と光の女
王はあきれる。
 先ほどまでの持っていた闇の王に及ばなくて悔しいという気持ちは、もはやない。
「馬鹿な人ね。今の私と戦っても面白くはないわよ。そんなことより今の平穏を
大切にしなさい。今のエテルナの平穏はあなたが作った。あなたはいい王よ。
闇の王」
 認めざるを得ない。
 いや、彼だからこそ自分はこの選択ができたのだ。
 後悔はない。 
 けれど、そんな光の女王の心中とは裏腹に、闇の王は納得しない。
「なぜだ。どうして戦おうとしない?私達はエテルナの王を巡り戦い合う。それが
宿命だろう?」
「宿命じゃない。カオスのかけた呪いよ」
 そう呪いだ。
 かけられたあの日から、自分たちは、エテルナは、その呪いに踊らされてきた。
 しかし、その無意味さを知った今、これ以上踊らされる理由はない。
「終わりよ、闇の王。私はもうカオスの意思には従わない」
 抗い続ける。
 それが、これからの光の女王が生きる理由だ。
 光の女王は、立ち上がった。
「今度こそ世話になったわね」
 その場で、彼女は闇の王へ振り返った。

「さようなら、闇の王。また会うときは、世界の終わりで」

 そう告げた光の女王は、微笑んでいた。
 何の不安も恐怖もなく、幸せそうに。
 微笑む女王は、光そのものだ。
 闇の王が初めて見る彼女の笑顔だった。

「光の女王!!」

 そのとき、光の女王の背後に稲妻のような光を放つ巨大な亀裂が現れる。
 亀裂は裂け目を開き、強い力で周囲のものを吸い込みはじめた。
「なに!?」
「危ない!!」
 女王は裂け目に吸い込まれそうになるが、闇の王がとっさに女王の腕をひいて
助けてくれたため、逃れることができた。
 代わりに朽ちた鎧と剣が、裂け目に吸い込まれる。
 それを吸い込んで満足したのか、裂け目は消えた。
 先ほどまでの騒動が嘘のように、周囲には静けさが戻る。
「なに?あれは」
「時空の歪み(ワームホール)め。こんなところにまで現れたか・・・」
 ちっと舌打ちし顔を歪ませる闇の王に、光の女王は平穏だと思っていた世界には、
まだなにかあると感じていた。



あとがき
 この小説に出てくるオラクルは、闇の王×光の女王派で、二人をくっつけるべく
奔走してます。
PR

コメント

カレンダー

05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 5 6 7
8 9 10 11 12 13
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

リンク

ブログ内検索