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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

つるはしの秘密

ライネは、スタンリーの骨董店で、伝説をつるはしを見つける・・・・。


ゲーム「アフターイメージ」 ライネ イフ スタンリー
スタンリー×レビン要素あり。R12
ゲームイベント「遊歴」のネタバレあり。






 追放の町の骨董商スタンリーが仕入れの旅から帰ってきたと聞いたので、ライネとイフ
は、さっそく店を訪れた。
「お客様、ようこそまたお越しくださいました」
「商品を見せていただけますか?」
「期待の新商品なんだろ、早く見せろよ」
「ふふ、お客様はお得意様ですからね。今回仕入れたものの中でもとっておきのものを
ご覧に入れましょう」
 と、スタンリーは自慢げに新商品を披露した。
「わぁ、いろいろあるんですね」
「おっ、いいのそろってるじゃん」
「どうぞ御手にとって、ごゆっくりご覧ください」
 スタンリーに許可をもらい、ライネは武器を手にする。
「この『金烏の心』っていう太刀すごく綺麗」
「さすが、お客様お目が高い。それは、とある刀匠により光を失う前の太陽で作られた
一品です。ほら、まるで太陽のような輝きを持ちながら、金烏の羽根のような優美さを
兼ね備えているでしょう」
「え~~、太陽からで来てるなんて嘘、嘘。ライネちゃん欺されるなよ」
 スタンリーのセールストークにイフはちゃちゃを入れるのを聞きながら、ライネは、
太刀を戻し、隅にぽつんと置かれたものを取る。
「これも武器ですか?」
「あっ、それは・・・・」
 ライネが取った武器に、スタンリーのメガネがわずかに曇る。
「はい・・・まぁ・・・・・一応武器としても使えます」
「でも、これは・・・・・・つるはしですよね?」
「おう。どう見てもつるはしだな」
 ライネが手にした武器。
 それはどこからどう見ても鉱石を掘り当てるのに使う「つるはし」であった。
「それは、 『抗夫の秘宝』といいまして、とある伝説に語られる虹の石鉱の抗夫が
使っていたものです。彼は、虹の石を掘り出せたことはありませんが、幸運にも他の
財宝を数多く掘り出したそうです」
「その抗夫が財宝を掘り当てるのに使ったのが、このつるはしなんですね?」
「はい・・・・・」
「うさんくさ~~~」
 イフの言葉に、スタンリーのメガネがますます曇る。
「こんな平凡なつるはしにそんな力があるわけないだろ。本当にあるなら虹の石を掘り
出すはずじゃないか。虹の石は、そこんじょそこらの財宝に匹敵するほど価値のある石
だ。その石を掘り出せずに、他の財宝なんて本末転倒も良いところだぜ」
「まったくそのとおりだよな」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ、なんでもございません」
 かぶりをふるスタンリーにイフは、まだつるはしを見ているライネに声をかける。
「ライネちゃん、やめときなよ、そんなうさんくさいつるはしなんか。それよりさっきの
『金烏の心』を買おうぜ。腰から下げてるだけで、ライネちゃんにばっちし映えるぜ」
「『金烏の心』は、3000雨雫です。お値打ち価格ですよ」
 スタンリーもぜひにと太刀を勧めるが、ライネが選んだのは、
「この『抗夫の秘宝』をください」
「え~~、ライネちゃん、本当にそれ買うのかよ」
「本当によろしいのですか?それも貴重な商品ですので、お買い上げいただいた後の返品
等はできませんが」
 イフは不服を口にし、スタンリーも念押しするように確かめるが、ライネは、
「はい、これをお願いします」
「では、3000雨雫となります」
「金烏と一緒じゃん。少しはまけろよ」
「お客様、こちらは大特価となっておりますよ」
 スタンリーは代金を受け取ると簡単な手入れをしてから『抗夫の秘宝』をライネに渡した。


***********


「ったく、ライネちゃんはたまに変なものに興味を持つよな」
「いいじゃない、イフ。もう買っちゃったんだし文句言わないの」
 それより見てよとライネはつるはしを手にする。
「これ、古そうなのに錆ひとつないのよ。すごくよく手入れされてるわ。スタンリーさん
は、渡してくれるときに手入れをしてくれたけど、その程度じゃこうはならないわ」
「あいつ、見た目は悪徳商人だけど、商品のこと大事にしてるんだな」
「たしかにお値段は高いけど、売ってくれるのは本当にすごい商品ばかりよ。大事にしな
きゃ」
「でもそれ、武器としてはやや弱いし。他に効果はなさそうだぜ」
「う~~ん、そうだ」
 ライネは、バックから『ほのかな香膏』を取り出す。
「これを塗れば、この子がなにか思い出してくれるかも」
「え~~、使う気か?貴重品だぜ、」
「確かに高価だけど火の領域の船頭さんから買えるようになったんだから使っても大丈夫
よ」
 ライネはつるはしに『ほのかな香膏』を塗ってみる。すると、
『~~~~~』
「今、声が聞こえたような」
「つるはしの中に宿ってる記憶が目覚め始めたんだ。ライネちゃん。もっと塗ってみれ
ば、こいつの力を取り戻せるかも知れないぜ」
 イフの言葉に、ライネはさらに『ほのかな香膏』の上位薬である『謎の香膏』『彩りの
香膏』を使ってみる。
『私は・・・・・目覚めた・・・・・』
「おい、つるはし。おまえはお宝をザクザク掘り出した伝説のつるはしなんだろ。これか
らは俺達がマスターだ。俺達のために財宝を掘り出せよ。虹の石でも良いぜ」
「イフ、そんなこと言わないの。『抗夫の秘宝』さん。イフの言うことなんて気にしなくていいから、私と一緒に戦ってくれますか?」
 ライネが優しく尋ねるとつるはしは、しばしの沈黙の後、こう答えた。
《・・・・・・・できない》
「はぁ~~~!?何言ってるんだ、お前。高価な香膏を使ったんだぞ。その分の代金ぐら
い恩返しするもんだろ」
「落ち着いて、イフ。秘宝さん、どういうことですか?」
《私の力を発揮することは禁じられている。沈黙していなければ、本物のガラクタにすると言われた》
「ええっ!?いったい何があったんですか?」
《私は、貴方に買われる前に、とある商人に買われた》



 つるはしは、その名のとおり、確かに虹の鉱脈の抗夫に使われていたつるはしだった。
 その抗夫はつるはしを相棒としてとても大切に扱ってくれたので、つるはしは抗夫のた
めに鉱石を掘り当てようと頑張った。
 残念ながら力及ばず虹の石は掘り出すことはできなかったが、代わりにたくさんの財宝
を掘り当てることができた。
 抗夫はつるはしにとても感謝してくれて、人生を終えるまで手元に置いて毎日手入れを
してくれるくらい大切にされた。
 しかし、抗夫が死ぬと家族により「財宝を掘り当てる力がある」とのうたい文句と共に
つるはしは売り飛ばされ、以来、その力で財宝を掘り当てることを目的とした連中の手の
平の上を流れていった。彼らは、つるはしの持つ力だけが目当てで、ろくにつるはしの手
入れをしようとはしなかったので、次第につるはしは力を失い、「偽物」「うさんくさ
い」「ガラクタ」呼ばわりされてなお売り買いされていた。
 そのとある商人もこのつるはしの触れ込みを信じて、その力でさらにコレクションを得ようと大金で買い取った。つるはしは、今度は何ヶ月で手放されるかなと思いながら現場に連れて行かれる日を待った。それまでは、買われたその日に現場に連れて行かれることもあった。
 しかし、その商人はつるはしを現場に連れて行こうとはせず、来る日も来る日もつるは
しの手入れを行い、ピカピカに磨いてくれた。
『まったく今まで連中はどういう扱いをしていたんだ。泥がついたままだし、錆もある
じゃないか。君も気の毒にな』
『僕の元に来たからには、錆を付けさせたりはしないよ。安心してくれたまえ』
『どうかその力で、僕のコレクションを増やしておくれ』
 商人は、手入れをするときいつもつるはしに語りかけながらしていた。それは、一番最初の主と同じで、つるはしは昔のことを思い出し、いつしか力を取り戻し始めていた。


《私は、その商人の恩に報いるべくもう一度財宝を掘り当てようと思った。ある日、商人は私を屋敷から連れ出した。私はいよいよ力を発揮する時が来たと気を引き締めた》
 やる気をみなぎらせていたつるはしだったが、連れて行かれた先は鉱脈ではなく、本がたくさんある場所だった。
《そこには若く綺麗な男が一人いて、商人はその男に私を見せびらかし、自慢した》


『どうだ、素晴らしい逸品だろう』
『これが前にお前が言っていた伝説のつるはしか』
 男はふ~~んと鑑定するような顔つきでつるはしをじろじろと観察する。
『これは本物だ。これからこれを使ってさらなるコレクションを手に入れてみせる』
『巨人との戦争中だってのに、のんきなものだな』
『政府から支援金を受け取れる誰かさんと違って、こっちは、供出をしなければならない身だからな。商売を続けるためにも財宝を掘り当てる必要がある』
『ふぅん』
 男は「ああそう」とそれ以上は興味なさげな表情で、商人の背中にしなだれかかる。
『それよりせっかく来たんだ。今夜は泊まっていけよな』
 そう言いながら商人の身体に抱きつく。
『お前から誘ってくるとは、珍しいな』
『たまにはいいだろ。ベットに行こうぜ』 

 こうしてつるはしは、発掘の現場ではなく商人と男の逢い引きの現場に居合わせること
になった。
『どうしたんだ、ずいぶん積極的だな』
『たまには・・・な・・・・』
 男は滅多にしないことをしてくれたようで、二人は大層盛り上がっていた。
《やれやれ人間という奴は・・・》
 過去にも裸の女に自慢されるためにこういう現場に連れて行かれたことがあったつるは
しは、もう慣れっこというように聞こえてくる嬌声を聞き流して、現場に連れて行かれる
ことに思いをはせていた。
《かの商人に手入れをされてだいぶ力を取り戻した。我が力どれほど発揮できるか》
『発揮する必要はないぜ』
 男の声がしたかと思おうと、つるはしは柄を強い力で掴まれる。
『まったく、ガラクタ欲しさにとうとうこんなものまで見つけてきたか』
 鳥の羽のついた礼服を肩から羽織っただけの男は、忌々しげな目をつるはしに向ける。
 商人の方はベットで裸のままぐっすりと眠っていた。
『お前はどれだけのことを知っているのか知らんが、あいつの物欲を甘く見るなよ。欲し
いもののためならば巨人の領地でさえ平気で行く男だ。お前のその力を知れば、今すぐに
でも飛んでいくだろうさ。戦争中にもかかわらずな』
 本当に腹ただしいとばかりに男の手の力が強まり、古い木でできた柄がミシミシと鳴る。
『そしたら俺の手間が増えるんだよ。俺があいつを守るためにどれだけ力を貸してやって
ると思っている』
《わ、わからぬ》
『わからなくていい。ただ、覚えておけ。あいつの命は俺のものだ。たとえ神であっても
くれてやる気はない』
 これがどういう意味か解ってるよな?と男は、獲物を狙う夜のハンター梟の目をつるは
しに向ける。
『その力を封じ込めろ。ただのつるはしのふりをしているんだ』
《それは・・・・》
 断ると言いたいつるはしに、男は追い打ちをかける。
『少しでもあいつの前で力を見せてみろ。その瞬間、おまえを分解して本物のガラクタに
してやる』
 柄を握る男の手に魔力が集結しているのを感じとり、つるはしはその要求を呑むしかな
かった。


《私は男の要求通り、商人のために力を振るうことはなかった。商人はなんとか私を説得
しようとしたが、私は応じず、それから三ヶ月目にとうとう諦めた》
「そうだったんですか・・・・」
《そして、男は三ヶ月間その商人を笑い続けた》
「ひっでぇな、その男・・・・」
 お前もひどい目にあったなとイフはつるはしを同情する。
「よしよし、事情は分かった。でももう大丈夫だぞ、ライネちゃんは強いし、俺はそんな
ことしないからな」
《本当に?》
「俺を信じろ」
 イフの力強い言葉に、つるはしは今後は力を発揮すると誓った。


「あ~~まったくひどい話だぜ」
「うん。でもレビンさん、それほどスタンリーさんのことが心配だったのよ。仕入れで
旅行中のスタンリーさんと何度か会ったけど、巨人の没落地とか日の巣とかすごく危険な
場所にいたじゃない」
「ライネちゃん、今の話がレビンとスタンリーだって分かるのか?」
「だって、二人を見てれば分かるもの」
 ライネ達がレビンが解放されたことを知らせると、スタンリーはすぐにレビンに会いに
王城に向かった。
 レビンは力がまだ戻らず王城の大書庫から出られない身の上で、スタンリーが来ると分
身を飛ばしてまで彼に会いに行った。
 そして、そのまま二人で仕入れの旅に出かけたのだ。
 レビンはどんな危険な場所であってもスタンリーが望むところへどこでも着いていき、
彼を護り、ガラクタと呼ぶ財宝運びさえしたのだ。
「仲良くないと、こんなことできないでしょ?」
「まぁな。レビンも心配してるならしてるで、もっと他にやり方がなかったのかね。素直
じゃないんだから」
 ベットでイチャつく仲でありながらなぜか喧嘩ばかりの二人に、人間はわからんとイフ
は思うのであった。




あとがき
原作に出てくる鎌武器「抗夫の秘宝」の説明文から連想しました。
スタンリーとレビン。原作では旧友とされていますが、本当に関係が面白い。
再会したのが68年7ヶ月と9日ぶりって、見た目は方や老人。方や青年ですよ。
謎の骨董商と庭園最強の大魔法師様ですよ。
妄想が広がります。
この二人で、いくつか書いてみたいです。
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