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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

イメージチェンジ?

 宇佐見と伊集院の対談がまた行われることになったが、
 対談当日、宇佐見の顔が大変なことになっていて・・・・

 純情ロマンチカ 宇佐見 美咲 伊集院
 十数年前に書いたものが出てきたのでせっかくなのでアップ。
 なので、原作の今現在の設定とか流れは入ってません。








「キャアアアアアアアアアアア!!!」
 晴天の青空が広がっていたある日の丸川書店。
 その社屋の会議室で、超大物作家宇佐見秋彦の担当である相川の悲痛な叫び声が響き
渡った。
「せ、先生ーーーーーーー、ど、ど、ど、ど、ど・・・・・・」
「ちょっ、お、落ち着いてください。相川さん」
「これが落ち着いてられないわよ。どうしたんですか、その顔!?!?」
 相川の前で椅子に座る宇佐見は、全身から不機嫌を具象化したような黒いオーラを
放ち、顔が丸川から昔出版された超有名推理小説に出てくる白い男のように、白い包帯で
ぐるぐる巻きにされていた。

「美咲君?何があったの!?大けがしたなんて聞いてないわよ!?」
「いえ、あのウサギさんは、どこもケガはしていないんです」
「じゃあ、いったいなに!?」
 相川は美咲の両肩をつかんで、ゆさぶる。
「これから伊集院先生とのグラビア取材なのよ。この顔じゃできないじゃない~~~」
 相川は両目から滝のような涙を流しながら頭を抱えていた。
「あああああああ、どうしよう、どうしよう。伊集院先生も忙しくて今日しか
スケジュールとれないっていうし。もう広告打ってるのに。締め切りまでギリギリだし、
いまさら変更できない~~~」
 とブツブツ言いながら同じく黒いオーラを発しはじめる。
 美咲はどうすればいいのか解らず、おろおろする。
 そこへ、丸川専務の井坂と秘書の朝比奈がやってきた。
「宇佐見せんせ~~、今日のお楽しみはちゃんと用意しますんで、よろしくお願い
しますよ~~~って」
 井坂は、宇佐見の顔を見るなりぎょっとして、美咲の服を引っ張る。
「ちょっとちびたん、困るよ。そりゃ君が秋彦のベタベタを嫌がってるのは知ってる
けどさ。なにもあんなになるまで殴らなくても」
「違います!俺は何にもしてません」
「そりゃ俺も仕事のために君をいろいろ利用してきたけどさ。あそこまでするなら
一言相談してくれりゃなんとかしたのに」
「だから違うって、井坂さん、やっぱ俺のこと利用してたんですか!?ひどいですよ」
「お二人とも落ち着いてください。話の論点が逸れてきてます」
 朝比奈が二人の間に入って、話を止める。
 そこへ、伊集院と担当の桐嶋、副担当の雫石が入ってきた。
「こんにちは、宇佐見先生」
「すみません。伊集院先生の単独インタビューが終わりましたので、宇佐見先生との
対談に移りたいんですが・・・・・」
 今回のグラビア記事は、宇佐見と伊集院の単独と対談の組み合わせであり、伊集院は
先に別室で単独インタビューを受けていた。
 それが終わったのでやってきたのだが、三人とも宇佐見の顔を見て固まる。
「宇佐見先生も、キレることあるんですか?」
「~~~~~~~~(怒)」
「響さん、失礼だろ。申し訳ありません。宇佐見先生。え~~~っと、事故に遭われ
たんですか?」
「・・・・・・・・・・・・いや」
 宇佐見は、低くうねるような声でボソボソとつぶやき始める。

「NNKの教育テレビ。朝7時からやっている『クマさんといっしょ』」
「はい?」
「その中にある『クマさんとお姉さんと一緒にやってみよう』のコーナー」
「あ~~、小さい頃俺の娘が見てたやつ」
「先生、独身なのに朝っぱらからそんなの見てるんですか?」
 似合わないですねと真顔で帰してくる伊集院に宇佐見は青筋を立てる。
 「違うんです。見てたのは夕べから泊まりに来てた俺の甥っ子で、ウサギさんはテレビの
近くにあるソファでうたた寝して、こんなことに・・・・」
 美咲はオロオロとしながら話す。
「あのコーナーが大好きでいつもテレビを見ながらやってるって、姉さんから聞いてた
けど、まさかあんなことするなんて。油性だから全然落ちないし」
「油性?」
 それを聞いて伊集院は、あっと思う。
「と言うことはあの包帯の下には・・・・・」
「時間ないし、あれしか思いつかなかったんです~~~~(泣)」
 おろろ~~~ん泣く、美咲に伊集院はわかったわかったと慰める。
「うん、大体の事情は分かったから。大変だったね、高橋君」
「先生------」
「岬から離れろ(怒)」
「専務、相川さん。どうするんですか、今日のインタビュー」
 桐嶋が二人に聞くと、相川はすがるように井坂に目を向け、井坂は肩をならす。
「しゃあないだろ。二人ともギリギリのスケジュールできてもらったし、このまま対談は
執り行う。写真は締め切りギリギリで撮るか、他のを使い回すしかないな」
「さすが、専務。容赦ない」
「インタビュアーに入ってもらってくれ。秋彦、ちゃんとプロらしく答えろよ。
伊集院先生、申し訳ありませんがフォローをお願いします」
「できる限りのことはしますよ」
 こうして、取材は続行することとなった。
 ところで、伊集院は対談に入る前に雫石に何やら指示していた。
「・・・・・・・・・で、この対談が終わるまでに頼めるかな?」
「大丈夫です。行ってきます」
 雫石は、桐嶋にも承諾をもらいこの場を後にした。
 対談をする部屋に入ったインタビュアーも宇佐見の顔を見て、ビックリしたが、
そこはプロ。
 きっちり仕事を行い、素敵な対談が実現した。


「あとは、写真だけだな。相川、いけるか?」
「なんとか時間を作ります。美咲君も協力してね。宇佐見先生もちゃんと仕事して
いただきますからね」
「はい、わかりました。俺ができることなら何でも」
「・・・・・・・(怒)」
 対談が終わるなり不機嫌さを取り戻した宇佐見は、さっさと帰ろうとする。
「伊集院先生、お待たせしました」
 雫石が、レジ袋を持ってやってきた。
「頼まれた物、全部買ってきました」
「ありがとう、雫石君」
 伊集院は、レジ袋を受け取る美咲を呼ぶ。
「高橋君。これ」
 そして、そのままレジ袋を美咲に差し出す。
「え?先生、これ」
「宇佐見先生の状況は、これで全部解決するから」
 さぁと言って、伊集院はレジ袋を美咲に持たせる。
「何回かこの洗浄剤で洗えばちゃんと落ちるから。俺がいつも使ってる奴だから効果は
お墨付きだよ。ただ、洗った後は肌が荒れるからこっちの化粧水と保湿クリームを使う
ことを忘れないようにね」
「先生、ありがとうございます」
 美咲は深々とお辞儀をして、あとでまたちゃんとお礼をしますからと言って、先を行く
宇佐見の後を追った。



 宇佐見の包帯の下。
 そこにあったのは、ケガではなく油性ペンによる子どもの落書きだった。
 昨夜、美咲の兄である孝浩の子どもである真浩が美咲の所に泊まりに来たのだ。
 宇佐見は嫌がったが、孝浩の子だからとしぶしぶながら受け入れた。
 真浩は、美咲にじゃれつきながらも持ってきたおもちゃで遊ぶなど良い子にしていた。
 事件が起こったのは、翌日の朝のことだった。
 義姉から真浩がNNKでやっている「クマさんといっしょ」が大好きだと聞いていた
美咲は、放送時間が来るとテレビを付け、その番組を見せてやった。
『じゃあ、俺キッチンにいるから、大人しく見ててな~~』
『うん』
 そのテレビ近くのソファには、夕べ徹夜で原稿を書いていたらしい宇佐見がぐっすりと
寝ていた。
 本当は、ベットで寝て欲しかったのだが、TVの音で起きないほどぐっすり寝ているし、
宇佐見は大きすぎて美咲では動かせない(真浩がいるのに下手に動かして襲われたら
困る)ので、そのままにしておいた。
 真浩は、ご機嫌で番組に釘付けだった。
 そのうち、クマさんとお姉さんのコーナーが始まった。
『さぁ、テレビの前のみんな~~~、クマさんとお姉さんといっしょにやってみよう』
 今日は、絵文字歌らしく、お姉さんはペンを用意するように言った。
 真浩が、周囲を見渡すとソファの下になぜか黒い油性マジックが転がっていた。
『紙も用意しようね♪』
 あいにく紙は、見当たらない。
 ふと、真浩の目の前には、熟睡している宇佐見の顔が・・・・・・。

『・・・・をかけば、立派なおひげのパンダちゃんのできあがり』
『パンダ~~~☆』
 きゃあ~~~っと真浩の歓声が上がると朝食を作り終えた美咲が呼びに来た。
『真浩、ごはんできたよ~~』
『みさき、みてみて~~~』
 真浩は、ブンブンと手に持ったペンを振り回しながら美咲を呼ぶ。
『みて~~、じょーずにかけたよーーーー』
『え?なに?どこに・・・・?』
 とソファに近づいて美咲は、宇佐見の顔を見てひぇぇっと青ざめた。
 宇佐見の顔には、真浩の作品が書かれていた。


 その真浩の作品は、伊集院がくれた洗浄剤で無事に落ちた。
 心配された肌の荒れも継承水と保湿クリームで抑えられた。
 おかげで、包帯の取れた宇佐見の写真を撮影することができ、対談記事が載った雑誌は
予定通り無事発行された。
 さらに後日、伊集院の元には、美咲からお礼にと手作りのお菓子が送られた。
「本当は、一緒にデートとかしたかったんだけどね」
 それでも宇佐見に貸しはできたし、美咲の手作りと言うことで、まぁ、これでもいいか
と伊集院はご機嫌であった。


 
 
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