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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

純情ロマンチカ ファンタジーパロ(未完)



 純情ロマンチカ 宇佐見×美咲 伊集院


 十数年前に書いた未完作が出てきたので、せっかくなのでアップ。
 当時はまって、伊集院先生が好きだった。
 なんかこった設定のを書こうとしてたみたいです。
 どういう意図で書こうしたのか忘れました。



第1話 君は世界が大好きだったね。世界は決して優しくも美しくもなかったけれど

 

 世界は、4人の賢者達に守られていた。
 中央に王を担ぎ、東西南北にそれぞれ一人。
 4人の賢者達は、そのチカラで世界のバランスを保ち、知恵を持って人々を導いて
いた。

 世界は平和と恵みに満ちあふれ、人々は幸せに暮らしていた。

 それでも変わらない日々はない。
 バランスが崩れるときは必ず来る。

 賢者達が力をなくし始めたとき、世界は次の時代を迎える。

 その扉を開けるのは鍵。
 賢者は鍵を使って人々を次の時代へ連れて行く。




 「ウサギさん、散らかすなってあれほど言っただろーが(怒)」
 せっかく掃除したのにの、額に青筋を立てて少年が怒鳴りつける。
 しかしウサギこと宇佐見は、平然と巨大なクマのぬいぐるみを枕にソファに寝そべり、
本を読み続ける。
「仕方がないだろう。本達が床の上に転がりたいと言っているんだから」
「嘘つくな!!」
「嘘じゃない」
 その証拠にと宇佐見が指をふいっと動かすと壁に沿え付けられ本棚からまた何冊かの
本がバラバラと落ちる。
「ほら、落ちた」
「お・ま・えが落としたんだろーーーーーが!!!」
 チカラを無駄に使うんじゃねぇ(怒)と少年はプンプンと床の上の本を拾い上げて
いく。
「美咲」
「あ~~~、くそ、また掃除し直しだ」
「美咲」
「本棚にふたでも作ろうかな。そうしたら落っこちてこねぇだろうし」
「み~さ~~き~~」
「そうだ。先生に頼んで・・・・」
「~~~~(怒)」
 わっと美咲は、服の背中をぐんっと強く引っ張られる。
「うわぁぁぁ」
 びゅんと後ろに飛んだと思った瞬間、宇佐見の腕の中に捉えられていた。
「ちょっ、なにすんだよウサギさん。チカラを無駄に使うなっていっつもって、ちかっ、
くっつくなっ」
「アイツのことを呼ぶんじゃない」

「あいつとは誰のことかな?」

 いつの間に入ってきたのだろうか。
 すぐそこに黒髪のシャープな顔立ちの美形な男性が立っていた。
「伊集院先生」
「久しぶりだね、美咲君。宇佐見先生も相変わらずだね」
「何しに来た」
「もちろん美咲君に会いに♪」
「せんせ~~(泣)」
 美咲は、宇佐見の腕から逃れるなり伊集院に抱きつく。
「ウサギさんたら、ひどいんですよ~~~。散らかすなって言ってるのに散らかすし、
チカラを無駄に使うし~~」
「よしよし、がんばったね、美咲君」
 伊集院は美咲の頭を撫でる。
「おい、触るな」
「美咲君を泣かせた張本人が何を言っているんだ。それよりやることがあるだろう?」
 ふふんと鼻で笑う伊集院に宇佐見は、顔をしかめつつも指をパチンと鳴らした。
 その瞬間、床に散らばった本はストンストンと本棚の元の位置に納まってしまう。
「うん、えらい、えらい♪」
「・・・・・・・(怒)」


「どうぞ」
 伊集院は、美咲が用意したお茶を一口飲む。
 紅茶の茶葉の風味がよく出されていて、味も渋くなくまろやかだ。
「うん、おいしい。やっぱり君が入れてくれたお茶は最高だね。毎日飲みたいな」
「そ、そんな、褒めすぎです」
 顔を真っ赤にして謙遜する美咲に伊集院はクスクスと笑みがこぼれる。
「やっぱりさーーー、美咲君うちにこない?ここより人がたくさんいるし、楽しいよ」
「美咲はどこにもやらん(怒」
 宇佐見は眉間のしわを深くする。
「美咲は、ここにいて、俺だけを見て俺だけを世話していればいい」
「ちょっ、ウサギさん、何怖いこといってんだんよ」
「束縛のしすぎはよくないよね♪」
 あははと笑ってツッコんだ伊集院に美咲はいたたまれなく、「次のケーキを持って
きます」と台所へ走って行った。
「あなたがそこまで独占欲が強いとは思わなかったよ」
「美咲だからな。それ以外はどうでもいい」
 すっぱりといいきる宇佐見に、伊集院は気持ちはわからなくはないと妙に共感して、
表情を真面目なものに改める。

「宇佐見、南が完全に崩壊した」
 伊集院は非常に冷静な口調で告げた。
「南の人々は各地に散ったよ。大半がうちにだけど、こっちにもいくらか流れてきて
いるようだ」
「・・・・・・そうか」
「北はまだ持つ。でももう命が残り少ない。いつ南のようになるかわからない。中央は
やきもきしてるよ。連日のように中央からの使者がうちにつめかけてきてる。質問は
ただ一つ、『いつ、その日はやってくるのか?』と・・・」
「・・・・・・・・」
 宇佐見の表情は、先ほどよりも険しかった。

「先生、お待たせしました」
 ケーキが乗った皿を乗せたお盆を持ってきた美咲は、二人の雰囲気にぎょっとする。
(えっ?どうしたんだこの空気、なにがあったんだ?)
 さっさとケーキを配って退散しようとしたが、
「うわぁぁぁっ」
 そういうときに限って、床で寝ていた小グマのぬいぐるみ鈴木さんJrでけつまずいて
しまい、盛大にすっころんだのであった。



第2話 誰よりも優しい君に、世界は何より冷たかった




 一歩前へ踏み出すたびに、大地を踏みしめる足が沈む。
 乾燥した空気、砂塵の中に埋もれた廃墟、草木一つなく、鳥すら空を飛んでいない。
 ここには、ほんの少し前まで街があった。
 古くから続く都であり、南の象徴であった。
 交易の都市ゆえ、町は豊かで人と物にあふれ、活気に満ちあふれていた。

 その面影はもうない。

 足下の砂を一握りつかみあげると途端に指の隙間からさらさらとこぼれ落ちてゆく。

『東様、我らはもう待てませぬ』
 王都からの使者は、逼迫感あふれる表情で伊集院に奏上した。
『南が崩壊いたしました。世界を支える一方が崩れたのですぞ。このままでは、他も
もう時間の問題です』
『・・・・・・・・・・』
 使者の必死の訴えにも伊集院はただ渋い顔をするだけだった。
 これだけのことが起こっても黙ったままの伊集院に使者は業を煮やして声を荒げる。
『東様、なぜ黙っておいでです!!』
 とうとう非難の言葉を口にし始めた。
『北は老い、南は不在。西は姿を見せません。あなたしかおられないのです。賢者の
壮年の力を持つお方は』
『あなた様は、東の大賢者として世界を救う義務があるのです』
『このまま民をお見捨てになるおつもりですか!?』


「まったく勝手な連中だ」
 伊集院は一人口をこぼす。
 賢者は、その力と知恵で世界と人々を守って当然と思っているのだろう。
 ならなぜ、西の賢者はたった一人、あの深き森で人々を寄せ付けず、孤独に暮らして
いるのか?
 彼らは考えたことはあるだろうか?
「少し甘やかしすぎたか・・・・」
 伊集院は、歴代の中でもかなり真面目な方だった。
 人々の悩み事や困りごとに耳を傾け知恵を貸し、チカラを使ってきた。
 それゆえ、伊集院が守護する東は、四都の中で、すぐれた発展をし栄えている。
 しかし、少し手をかけすぎたかも知れない。
 気安く使った覚えはないが、人々は賢者がたやすく力を貸してくれる者と思い込んで
しまっのかもしれない。

「そんなつもりはなかったんだけどな」

 ただ、伊集院が賢者になったばかりの頃、東はあまりに荒れ、人々は貧しい暮らしに
日々耐え続けていたから。
 国土の90%を人を寄せ付けず、実を付けず、恐ろしい魔物あふれる森林に覆われた
東領。
 自分はただそこを住みよい国にしたかったのだ。

『民をお見捨てになるおつもりですか』

「馬鹿なことを・・・・」
 そんなつもりは毛頭ない。
 東に住む人々は苦楽をともにしてきた大事な人々だ。今更見捨てる積もりなんてない。
「でも・・・」
 あの少年の笑顔が不意に蘇る。
 一目見たとき気づいた。
 ああ、彼が『それ』なのだと。
 そして、一目で好きになった。
 一笑に一度の恋をした。


 手を開けると手のひらに残っていた砂が風に乗って飛び去ってゆく。
「Hay、マスター、大変だぜ」
 伊集院の傍に現れたくるんと毛先がカールした髭がトレードマークのコック姿をした
小型の人形がしゃべり始める。
「どうした?漢」
「王都の連中が西の森へ向かったらしいぜ。マスターがこのところ西へしょっちゅう
行っているのを不審に思ったようだぜ」
「西の森へ?まずい!いくぞ、漢」
「了解」

 伊集院はすぐさま、漢が用意した両手鍋に乗り、西へ向かった。




第3話 何度も君と世界を天秤にかけ、その度に世界を選んだ僕ら
   (それでも確かに君を愛していた)




 西へ着くと恐れていた事態が起こっていた。

「西様、どうか我らをお救いください」

 宇佐見の前に王都の連中が、跪いて必死に嘆願していた。
「このままでは世界が。西の大賢者よ。どうかそのお力を我らのために」
「言いたいことはそれだけか?」
 宇佐見は無表情に近い顔つきをしていたが、その冷たい目に怒りが宿っているのを
伊集院は見逃さなかった。

「よせ、宇佐見!!」
 伊集院は鍋から飛び降りると彼らの間に割って入った。
「今、王都の連中と事を起こすな。さらなる不信を招き、余計に人が来るぞ」
「邪魔をするな、伊集院」
「だめだ、このまま帰せ」
 伊集院は、今度は使者の方へ振り向くと、さっと腕を振った。
「おまえが達も早く立ち去れ」
「お断りいたします。西様の守護を得られるまで、我らはここを動きませぬ」
「見てわからないのか?今、宇佐見は機嫌が悪い。何をされるかわからないぞ。宇佐見は
俺とは違うんだ。こいつは俺達を守らない」
「しかし・・・・・」
 そのとき、森の奥から誰かが走ってきた。
「美咲」
「美咲君」
「な、なんだよれ、ウサギさん、なにしてるんだよ」
 美咲はウサギにすがりつき、必死に攻勢をやめさせる。
「何怒ってるんだよ。あの人達がなにをしたんだよ」
「美咲、家の中に入ってろ」
「いやだ、あんたがやめてくれるまでここを動かない」

「あの少年は・・・・」
 使者達の目が美咲に注がれる。
 伊集院は、それを遮るかのように、彼らの前に立つ。
「さぁ、帰るが言い。何度も言うが、西はおまえたちを守らない」
 美咲は、伊集院に気づいて近寄ってくる。
「先生。ウサギさんを止めて」
 美咲の手が伊集院の身体に触れた瞬間、

「あっ・・・・・・・・」

 美咲の胸の中央が強烈な閃光を発し始める。

「あ・・・・・・・あぁ・・・・・・」

 美咲が胸を抱え込むように膝から崩れ落ちた。
 それを宇佐見と伊集院が両脇から支え、何か呪文を唱え始める。
「・・・・・・・・・・閉じよ」

 二人の声が重なった瞬間、光は消え、美咲は全身から力が抜けたようにぐったりと
する。
「美咲」
 宇佐見は愛しげに美咲の身体を愛おしげに抱きしめる。

 使者達は、ぽかーんとした表情でこの光景を見ていた。
「今のは・・・・いったい」
 そのうちのひとりがはっとする。
「まさか、あの少年が・・・・・」
 その瞬間、伊集院はチカラを発揮する。
「忘れるがいい」
 伊集院は言いつけるように告げる。
「先ほどの光景をすべて忘れ、王都へ帰り、王に伝えよ。西の賢者に手を出すなと」
 使者の周囲に風が舞い、その姿が消えた。
 伊集院がチカラへ王都へと送り帰したのだ。

「彼らの記憶は消した。彼らは何にも覚えていない
「なぜ、発動したんだ」
 宇佐見のつぶやきに、伊集院は神妙な顔つきになる。
「すまない、俺のせいだな。直前まで南にいたんだ。崩壊展にほど近いところにいたから
気に触れたんだろう」
 その瞬間、宇佐見がかっと伊集院を攻撃する。
「ぐっ」
 宇佐見は美咲を抱き上げるとぎらりとした目で、地面に倒れている伊集院を見下した。
「美咲は俺のものだ。誰にも渡さない」
「宇佐見・・・・」
「もうくるな」
 そう告げて、宇佐見は森の中へと消えていった。
 その後ろを木々が道を塞ぐように枝を伸ばし、壁を作る。
 伊集院は、額から血を流しながらその姿を見送った。



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