手に入れたと思った。しかし、望みは天へ消えた。
聖闘士星矢 アスガルド編 黒ヒルダ
十数年前に書きました、ジークフリートを主人公として、「アスガルド編」に独自ねつ造設定を加えて書いた作品です。
なので「黄金魂」編の設定は入ってません。
たぶん、初めて書いた長編となります。
せっかくのなのでUP。

「バカな 」
ヒルダは呆然と海闘士を道ずれに天高く登るジークフリートを見つめていた。
ありえない。
ジークフリートが負けるなんて。
ありえない。
ありえない。
あってはならない。
「去ってしまう・・・・」
行ってしまう。
あのときのように。
また離ればなれになってしまう。
「おのれ・・・」
ヒルダ、いやニーベルンゲンは聖闘士達に槍を向ける。
「お前達のせいで。お前達が来たせいで」
どうして誰もかも私からジークフリートを奪うのか!
「死ね !!」
ニーベルンゲンは槍先から光線を出して攻撃する。しかしペガサスの聖闘士は攻撃を
受けながらもオーディン像へ近づく。
「くっ!」
( お前の負けよ)
「ッ、誰だ!?」
女の声が聞こえた。
しかし、ここには聖闘士達しかおらず、アテナはそこで寒さに耐え、声も出せずに
たたずんでいる。
(大人しく、冥府に去るがいい・・・)
この声。
聞いたことがある。
遙か昔。
ジークフリートのそばではいつもこの声がした。
「き、貴様、ブリュンヒルト!!」
バカな、
あの女は遙か昔に死んだはず・・・。
「ま。まさか・・・」
ニーベルンゲンは、うちにあるヒルダを見る。
双眸から涙を流し、こちらを見つめているヒルダ。
その後ろに、ニーベルンゲンは確かに見た。
忘れるはずもない、あの姿。
憎んで、憎んで、妬み続けてきた女。
なんということだ・・・。
傍にいたというのか。
姿形を変えてまで・・・。
「オーディーン」
ハット、ニーベルンゲンは現実に戻る。ヒルダに気を取られている間に、ペガサスの
聖闘士が、先程よりもオーディン像に近づいている。
「あれは、させるか!」
バルムングの剣が出現したら、殺されてしまう。
そしたらもう逢えなくなる。
そんなの嫌だ!!
槍を投げつける。槍はペガサスの聖闘士の身体に刺さるが、それでもヤツは止まらない。
「はぁ!」
リングから直接攻撃する。
しかし 。
「ああ・・・」
オーディンサファイアがオーディン像に捧げられた。
大地が揺れ、オーディンローブが出現する。そしてローブにはバルムングの剣が。
「ああ、いや、やめて・・・」
ヒルダが死ぬと脅すが、オーディンに勇気づけられたペガサスの聖闘士の動きはとまらない。
「うわぁぁぁぁぁ」
消える。消えていく。私の力が。私自身が。
(ジークフリート !!)
叫んだ。咽を振り絞って叫んだ。
声なき声は虚空にも響かなかった。
「我らの神オーディンよ・・・・」
ヒルダの祈りが捧げられる。
気高く、温かで、どこか悲しげな小宇宙がアスガルドを包み、氷の崩壊を止めていく。
ジークフリートの望みは果たされた。
ヒルダが戻り、明日からまたいつもの日常が始まる。
もう、そこに彼はいないけれど、人々は関係なく明日への道を歩む。
それこそが彼の望み。
英雄と貴ばれることを喜ばない、勇者の 。