ワルハラ宮に集う伝説の戦士達。
だが、個性的な彼らはさっそく問題行動を起こし、ジークフリートは、彼らを統率していく。
聖闘士星矢 アスガルド編 ジークフリート フェンリル
十数年前に書きました、ジークフリートを主人公として、「アスガルド編」に独自ねつ造設定を加えて書いた作品です。
なので「黄金魂」編の設定は入ってません。
たぶん、初めて書いた長編となります。
せっかくのなのでUP。
最後の神闘衣を手に入れたヒルダとジークフリートが帰城すると、宮殿内はひどく
騒がしかった。
慌てた様子の兵達が武器を手にどこかへ走っていき、女官達が悲鳴を上げながら
逃げていく。
「これは・・・・ヒルダ様、様子を見に行ってきます」
「お前が行く必要はなかろう。それより・・・・」
と再び絡みついてくるヒルダ。だが、助けを求めて走ってきた来た兵に邪魔される。
「ヒ、ヒルダ様大変です。お、狼が城に」
小さく舌打ちし、それがどうしたという態度のヒルダに代わり、ジークフリートが
事情を聞く。
話によると、アリオトの神闘士が狼を大量に引き連れて城にやってきた。
連れてきたはいいが、狼も城の中に入れようとするので他の神闘士たちと悶着を
おこしているのだという。
「そうか、わかった。お前はそこから人を遠ざけるように他の兵に伝えろ。周辺をしばらく
立ち入り禁止にするんだ」
「は、はい」
兵を伝令に走らせると今度はヒルダに、
「ヒルダは部屋へお戻りください」
「お前が行くと申すのか」
ヒルダは口をとがらす。
「私より神闘士を取るというのか」
「そうではありません。しかし私にはまとめ役として仲間の仲をまとめる責任があります。
ご理解ください」
そっと手を取り、甲に口づける。
「今宵は必ず参ります。どうかご容赦を」
ジークフリートの懇願に、ヒルダはフンと手を払うとぷりぷりしながら一人城へ
入っていった。
「だから、狼は入れないんだって」
「なんでだ。こいつらは俺の仲間だ」
ハーゲンとフェンリルが顔を突き合わせていがみ合う。
「差別するのか。これだから人間は」
「お前だって人間だろうが」
「違う!俺は狼だ!!」
さっきからこの繰り返しに、傍らで経緯を見守っていたシドとトールは頭を抱える。
「やはり入れた方が」
「とんでもない。これだけの数ですよ。人を襲いでもしたらどうするんです」
「だがそれでは終着が・・・」
うーんとうなる二人。
そこへジークフリートが到着した。
「お前達、何をしている!」
いいところへ来てくれたとトール、シドが顔を晴らす。
「いいところへ来てくれました」
「困ってたんだ」
シドとトールが自分たちが見たことを話そうとした時、向こうの二人に変化が。
「狼を、ギングをバカにするなぁ !!」
逆上したフェンリルがハーゲンに襲いかかる。
鋭くとがった爪。引き裂こうとしたその腕を素早く動いたジークフリートがつかむ。
「何をする。仲間を傷つけるな!」
「うるさい!!」
フェンリルは身体を反転させ、ジークフリートの首筋に噛みつく。
「うっ」
「ジーク!!」
「ジークフリート!!」
シドとトールがはりさけんだ声を上げ、
「貴様ぁ!!」
ハーゲンが攻撃しようとするのをジークフリートは押し止める。
「やめろ、手を出すな」
「けどっ!!」
「だいじょうぶだ」
ジークは噛ませるがままにする。
フェンリルは決して離れず、深々と歯を立てる。
つぅ
歯が立てられたところから血が流れ出す。
ハーゲンは見てられないと再び拳を構える。
だが、
「ウウッ!!」
突然フェンリルがびくりとし、口を離す。
「あっあっ」
顔が青ざめばたばたと暴れるが、ジークフリートはしっかりと身体を抱きしめ
離さない。
フェンリルの様子に狼たちもそわそわとし始め、牙を立ててうなり始める。
狼が襲う!
これにはシドとトールも警戒する。しかし、
「狼たちよ、よく聞け」
暴れ続けるフェンリルを必死で押さえつけながら、ジークフリートは狼たちに向かって
低くうねるような声で言い渡した。
「ここは人の地と定められし場所。お前達が居ていい場所ではない。どうしても
居たければ人を襲うな。人に従え。この命に従う者はその場に伏せよ。従わぬ者は
私が罰する」
すると 。
今までうなっていた狼たちは急に静かになりその場に伏せる。
連れてきた者全員が。
これにはフェンリルも目を見張り、暴れるのを止める。
「お前達・・・」
狼たちを見回し、ジークフリートの顔を見あげる。
「あんたは・・・・?」
「お前の仲間だよ、フェンリル」
微笑んで後ろ頭をそっとなでる。フェンリルはぼーっとジークフリートの顔を見つめ
続ける。
ハーゲン、シド、トールも目を丸くしていた。
この大量の狼たちを一声でひれ伏させるなんて。
「やっぱりジークは勇者だぁ・・・」
ハーゲンの言葉に他の二人もうなずく。
「おいで」
ジークフリートはフェンリルの腕を引く。
「そのままではヒルダ様の前にだせん。私が整えてやろう」
フェンリルはされるがまま連れられていく。彼を見て、最も目つきが鋭く額に傷を
持つ狼がキュウンと鳴いた。
「ギング」
心残りなのかフェンリルが寂しそうに名を呼ぶ。
「友達か?」
こっくりとうなずくフェンリル。
ジークフリートは、ギングと呼ばれた狼に向かって呼びかける。
「一緒においで」
ギングはキュウンと鼻を鳴らして二人の後に従った。
「 で、こいつらどうする?」
「襲わんだろう。ジークの命令に従ったし」
「しかし、ここにいられては困まります。別の場所へ移しましょう」
シドが来いと命じると、狼たちは大人しく従った。