忍者ブログ

幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

黄金の指輪(5)

 神話の時代の因縁が今蘇る。


聖闘士星矢 アスガルド編 黒ヒルダ×ジークフリート R15 
 
十数年前に書きました、ジークフリートを主人公として、「アスガルド編」に独自ねつ造設定を加えて書いた作品です。
 なので「黄金魂」編の設定は入ってません。
 たぶん、初めて書いた長編となります。
 せっかくのなのでUP。

 












 ヒルダの部屋は、昼間であるにもかかわらずどこか暗かった。空気も湿っぽくて少し
重たい。それにうっすらとだが、あのとき感じた気配がここには存在していた。

「ジークフリートよ。新しい部屋はどうだ?気に入ったか?」
 にこにことしながら聞いてくるヒルダに、ジークフリートは笑みを作りながら。
「はい。とても」
 そうかそうかと満足げに笑うヒルダは、いとおしそうにジークフリートの頬に両手を
添える。
「ああ、逢えた。逢いたかった、ジークフリート。生まれ変わってもお前はあのときと
幾分も変わらない」
 記憶に残るジークフリートと今のジークフリートはうり二つ。私が愛した男。
「ジークフリート・・・」
 唇に触れた感触にジークフリートは我に返り、ヒルダの身体を突き放す。
「なにを・・・」
 手の甲を唇の当て、顔を赤くし動揺を浮かべる。
 いったい何を言っているのだ。逢いたかったなどとまるで久しぶりの再会かのように。
(生まれ変わり    ?)
 その時先程のフレアの言葉を思い出す。

『あんなものお姉様には似合わないわ、黄金なんて』

     黄金

 ヒルダは左手の薬指に指輪をしている。
 それは黄金。
 あの形、あの輝き。
(どこかで見た・・・・・・・!)

 それは、遠い、遠い昔。

 まだ自分が無知でいた頃のこと。

 それがどれだけ恐ろしい代物かなんて知らなかった。

 ただ、それの知恵と力と優しさに惹かれた。 

「お前は誰だ?」
 困惑する目で問いかけるジークフリートに『ヒルダ』は嫣然と微笑む。
「ヒルダよ。アスガルドの地上代行者のヒルダ」
「違う、お前は・・・・・」
「いいえ、私はヒルダ。あなたに護られ、愛し愛される女」
 黄金の指輪が怪しく光る。
 その瞬間、ジークフリートは身体がかっと熱くなる。心臓がばくばくと高鳴り、
血がものすごい勢いで全身をかけ巡る。
「こ・・・れ、は・・・」
 ジークフリートは意識を手放しその場に倒れ込んだ。
『彼に何をしたのです!?』
 封じられたヒルダが叫んだ。
「安心しろ少し眠らせただけだ」
 ヒルダはしゃがみ、ジークフリートの頭に手を置く。もう一度指輪が光り、
ジークフリートの身体が浮き上がる。
『何をするつもりです!』
「知れたこと。惚れ逢った男と女がすることといえば一つしかないではないか」
 そしてヒルダは魔力により、意識朦朧のジークフリートを寝室のベットの上に運んだ。


 ジークフリートはふわふわと浮かんでいた。ここはは宙の上なのか、水の上なのか
定かではなかった。周りはおぼろげで、どんな色をしてそんな景色なのかもわからない。
 と、自分の前に強い光の楕円ができる。その中にある人のような影。だんだんと
はっきりしてくるその影は、
(ヒルダ様?それとも・・・)
 どちらかは、わからない。

 でもそれは確かに自分が愛した女性だ。

 愛して愛して止まなかった女性。

 女は微笑みながらジークフリートに被さり、耳にささやく。
 それは、あのときからジークフリートが言って欲しくてたまらなかった言葉。
 ジークフリートは双眸から涙を流して、女を抱きしめた。


「ヒルダ・・・・ヒルダ・・・」
「うん・・・あっ、あぁ」
 ジークフリートの激しい愛撫にもだえるヒルダ。
『い、いや。やめて』
 ヒルダは目を覆い隠す。
「んぁ・・・。どうした。んんっ。勇者に抱かれるのがいやなのか?」
 ヒルダは思わず首を横に振る。
 違う。そうじゃない。
 嫌じゃない。いやなのは・・・。
「ふふっ、そうだろう。だからポセイドンはお前を選んだ」
 ジークフリートに胸のあたりをくすぐられながら、指輪は取り付いたといた時のこと
思い起こす。
 あのとき一瞬にしてヒルダの記憶を取り込んだ。生まれた時からごく最近のことまで。
 そこには、いつもジークフリートの姿があった。
 ヒルダの視線の先にはいつも彼がいた。
 全くポセイドンもなんと都合のいい者にとりつかせてくれたのか。
 ジークフリートを手に入れたいという私が、彼が愛している女にとりつく。
 一石二鳥ではないか。いや、この場合三鳥か。
「嫌でないならお前も感じればよい」
『ああっ』
 そう言われ、感じる快楽。
「共に感じ、そして堕ちろ」


 どちらも夢の中にいた。
 互いに求め合い、愛を叫ぶ。
「ああっ。ジーク、ジークフルート」
 指輪は数千年前は味わえなかったものに浸った。
 あのときは会話はできたが、感覚を味わうことはできなかった。
 ヒルダはやっと形になったばかりの思いを抱き、まだとまどいながら浸った。 
 他の人とは違うまなざし。
 くすぐったくて、嬉しくて、恥ずかしくて。
 向けられないと寂しくて。
 他の人に似たようなまなざしを向けていると心がざわついた。
「はうっ」
 濡れそぼり、男を欲しがる箇所に熱いものが侵入する。
 後はもうむちゃくちゃ。痛みと気持ちよさと熱さが入り交じる。
「あああ   っ!!」 
 彼らは歓喜の果てに果てた。



 そして幕が上がる。  



 朝だがまだ暗く、皆が夢の中にいる頃にジークフリートは目を覚ました。
 まだ覚めきらぬ目で周囲を見回す。見覚えのない部屋。質素だがどこか気品のある造り。
「う・・・・ん・・・」
 自分の横で温かい何かが動き、そこへ目をやって一気に覚醒する。
 改めて自分が置かれた状況を確認して、ふっと一瞬頭の中が真っ白になる。
 ぞっとする光景だった。
 こうならないようにするのが自分の望みだったのに。
「ジー・・・ク・・・・」
 はっと気がつくと、ヒルダが半まなこで目覚めようとしていた。
 
 起きるな、見るな。

 もし起きるなら、これが夢の中だと告げてくれ。
 だが、ヒルダは起きると満面の笑みを浮かべそれは愛おしい声で「おはよう」と
告げるのだ。


 そそくさと部屋から出た。人目を気にしながら部屋へ帰る。
 帰り着き、長年愛用している椅子にどかっと座り込んだ瞬間、どっと身体から力が
抜けた。
 なぜもっと早くに気づかなかったのか。
(もう手遅れだ)
 畏れていた事態を引き起こした。
 自分一人で対処することはできない。

(心が変わらぬまま力を増し、復活したのか。ニーベルンゲンリングよ)


PR

コメント

カレンダー

05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 5 6 7
8 9 10 11 12 13
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

リンク

ブログ内検索