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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

黄金の指輪(4)

 変化が起きたのは、政府の人間だけではなくヒルダの実妹であるフレアにまで及んだ。
 フレアはジークフリート達に姉の変貌を語る。


聖闘士星矢 アスガルド編 ジークフリート シド ハーゲン フレア

  十数年前に書きました、ジークフリートを主人公として、「アスガルド編」に独自ねつ造設定を加えて書いた作品です。
 なので「黄金魂」編の設定は入ってません。
 たぶん、初めて書いた長編となります。
 せっかくのなのでUP。




 新しいジークフリートの部屋はきれいに掃除され、ベットには清潔なシーツが張られ、
南に向かって大きな窓にも真新しいカーテンが掛けられていた。南向きだから日当たりは
よく、広さもある。
「なかなかいい部屋じゃないですか」
 シドがまるで自分の部屋であるかのように満足げに行った。
「ああ、私にはもったいないくらいだ」
「何を言ってるんです。今まで住んでた部屋がひどすぎたんですよ。ヒルダ様に仕える
近衛の隊長ともあろう者が何であんな部屋で住んでたんです?」
 つい先日まで住んでいた部屋は北回廊にある角部屋で、日当たりは悪く、狭くて、
ベットと机を入れてしまえばいっぱいになってしまう部屋だが、ジークフリートは
隊長就任時に他の部屋へ移るよう催促されてもその部屋を使っていた。
「そう言うな。あの部屋もなかなかいいぞ。人目につきにくくて静かだし、手を伸ばせば
どんなものにも手が届くし、掃除は早いし」
 あの部屋にはジークフリートがこの城に来たときから住んでいた。6つの時だ。
 子供に一人部屋など贅沢な、と言われたが、フォルケルの口添えで部屋持ちとなった。
 住めば都だったと思う。人目に付きににくく、かつ周囲に人が住む部屋も少ないとあって
静かで落ち着いたあの空間が好きだった。あの部屋で成長したと言っても過言ではない
ジークフリートにとって、この部屋の広さと明るさはなかなか慣れそうになかった。
「おーい、ジークーっ」

 廊下で呼ぶ声がした。
「ハーゲン。ジークはここにいますよーっ」
 入り口からシドが顔を出して呼んでやると、名前を叫びながらあたりをきょろきょろと
していたハーゲンが、一目散に駆け込んできた。
「ここにいたのか。部屋に行ったら空っぽだし、探したんだぜ」
「ヒルダ様の命令で、今日からこの部屋になったんだ」
「ええっ、おまえもなのか?」
 ハーゲンの言葉に、顔を見合わすジークフリートとシド。
「どういうことです?」
「フレア様が部屋を移されたんだ。西にある別館に」
「あんなところにか?」
 西別館は、女官達の住居とされている。そんなところに地上代行者の妹であるフレアを
移すなんて、信じられないという顔をするシド。
「部屋自体は最上階で、広さも前より少し狭くなったってくらいなんだ。でも、フレア様
ショック受けてるみたいで」
 ハーゲンはしおれる。こんな時こそ慰めてあげたいのに、何をどうしていいのか解らない。
「ジーク、フレア様に会ってくれないか。なんか相談したいことがあるって」
「・・・わかった、行こう」
「私も行きます」
 こうして三人は、フレアの元へ向かった。

 フレアの部屋は確かに少し狭くなったようだが、日当たりも悪くなく、信頼できる女官が
側にいるため、生活環境はそれほど悪くはなかった。
「よく来てくれたわ、ジークフリート」
 フレアはほっとしたような笑顔で出迎えた。
「ごめんなさい。越してきたばかりだから片付いてないの」
「いえ、そんなことは」
 フレアはお茶を用意させると人払いをし、先ほどとは打って変わった憂えた顔で自分が
見た姉の変化を話し始めた。
「お姉様が変わってしまったのは、先日の祈りから帰ってきたときからです。性格が
すっかり急変してしまったんです。あの誰にでも分け隔てなく優しかったお姉様が
人を見下すような態度を取り、さっきも粗相をした女官をその場でクビにしました」
 あのヒルダとは思えない話に、ハーゲンとシドは顔色を変える。
「あれから毎日あんな戦闘服を身につけて。戦争中でもないのに」
「これから起こすと言うことかもしれません」
 シドの言葉にハーゲンが強く反論する。
「ヒルダ様は誰よりも平和を愛されているお方だ。戦争など起こすはずがない」
 なんてこと言うんだと、牙を向けるハーゲンに「悪かったよ」と謝りながらシドは
たしなめる。
「ジークフリート。あなたはどう思います?」
 フレアはジークフリートにも考えを聞く。
「私は・・・」
 と、その時コンコンとドアがノックされた。
「こちらにジークフリート様はおられるでしょうか?」
「ここにいる。なんだ?」
 返事を返すとヒルダ付きの女官が入ってきて、礼をとり伝言を述べる。
「ヒルダ様がお呼びでございます。すぐ部屋に来るようにと」
「わかった」
 ジークフリートはカップの中の少し冷えた茶を飲み干すと、席を立つ。その横で
シドが聞いた。
「身につけると言えば、ヒルダ様は指輪をなさっておられますね。祝典などの時以外
身につける方ではなかったのに」
「そう・・・そうです。あんなものお姉様には似合わないわ、黄金なんて」


     指輪。

 その言葉にジークフリートは強い関心を寄せた。
(黄金・・・の指輪・・・)
「と言うことは、ヒルダ様の持ち物ではないので?」
「ええ、あんなもの見たことはないわ」
 フレアはちらっとジークフリートを見ながら、
「お姉様は民が貧しい生活を送っているのに贅沢品など買えないといって、今持っている
アクセサリーは、代々の地上代行者に受け継がれているものか、お母様から譲って
貰ったものなのです。ですから、ご自分でアクセサリーなど買うような方ではないし、
いったいどこの誰から貰ったのかしら・・・」
「?どうかしたのか、ジーク」
 ハーゲンに声を変えられ、ふと我に返ったジークフリートは、「なんでもない」と
言って部屋から出て行った。
(あの様子じゃ、ジークじゃないわね)
 フレアは、指輪をあげたのが彼ではないこと、他の男があげたのかもしれないのに、
なんの反応も示さないジークフリートに不満を浮かべた。



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