その因縁は、遙か昔神話の時代から始まった。
聖闘士星矢 アスガルド編 ジークフリート
十数年前に書きました、ジークフリートを主人公として、「アスガルド編」に独自ねつ造設定を加えて書いた作品です。
なので「黄金魂」編の設定は入ってません。
たぶん、初めて書いた長編となります。
せっかくのなのでUP。
神話の時代、アスガルド。
「神命だ、許せ」
『なぜだ!?私はただお前を 』
「リングよ、お前の思いは私には重すぎる。お前の心は悪に近い」
男は指にはめていた黄金の指輪を引き抜くと、目の前に広がる泉に投げ捨てた。
「さよなら、ニーベルンゲン。お前が再び地上に現れるときは、その心が善となり正義のためにその力を使うことを願っている」
人の身ならば突き刺さるような冷たい水の底に沈みながら、指輪は愛しい男の名を叫んだ。
叫び続けた。
声ならぬ声は、水に波紋すら起こさなかった。
時は流れ、現代。
オーディン像の前で祈りを捧げていた地上代行者ヒルダが、波にのまれた。
波が去ったとき、彼女の指には黄金の指輪がはめられていた。
「だ、大丈夫ですかヒルダ様」
側で様子を見ていたアルベリッヒがおそるおそる近づいてきた。
抱き起こされ、目を開けたヒルダ。
「大丈夫だ、案ずるな」
言葉も姿も「アスガルドを統べるオーディンの地上代行者ヒルダ」だった。
だが。
ヒルダがオーディン像の前から離れた途端、祈りの場が崩壊した。
「これはっ!?」
「オーディンへの祈りなどもう必要ない」
凍気のような言葉を放つヒルダの瞳が怪しい輝きを放つ。
そこにいたのはヒルダであって、ヒルダではなかった。