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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

路傍の花、されど


聖闘士星矢エピソードG コイオス 独白

※ 路傍 = ろぼう (意味:道端) 

十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。









 その草は敷石の隙間に生えていた。
 どこからか飛んできた種がうまい具合に土に飛び込み、根付くことができたらしい。
 まだ二葉の頃から道の端で、精一杯自分の存在をアピールしていた。
「見栄が悪いので刈りましょう」という者がいたが、放っておいておかせた。
 どこまでがんばるか見てみたかったのかもしれない。
 ただの草におかしな話だ。

 毎日、その草の生長を見ていた。
 草は誰にも刈り取られずそこにあり、少しずつ少しずつ丈を伸ばし、葉を広げた。
 丈が10㎝ほどになった頃、互い違いに着いている葉の中心から葉の着いていない茎が
出てきた。
 その茎の先端には小さなつぼみが付いていた。
 どうやらこれは何かの花らしい。
 楽しみが一つ増えた。

 それから十数日間、つぼみは膨らみ大きくなり、ある日とうとうその姿を現した。
 太陽の光に当たれば、より輝くような黄の色を持っていた。
 もっと詳しく調べれば名も種類も知ることができただろうが、しなかった。
 知らぬことの楽しみを私は選んだ。

 だが、その楽しみはわずか一日しか持たなかった。
 次の日、その場所へ行くと花は何者かに摘みとられていた。
 なぜか・・・・・・悟ることも面倒だった。
 ただあっけない命だったなと思った。

 ぼんやりと歩いていると、子供達の元気な声が聞こえてきた。
 途端、顔がほころぶ。
 少し離れたところで二人して草花遊びをしている女の子。目に入れても痛くないほど
可愛い私の娘達。
 私は娘達を呼んだ。
「レト、アステリア」
 周囲を見回し私に気づくと、二人はひまわりのような笑顔で駆け寄ってきた。
 と、私はアステリアが手にしている花に驚いた。
 あの敷石の間に咲いていた花だった。
 それをどうしたのか二人に聞いた。
「さっきみつけたの。きれいだからとっちゃった」
 二人はまったく悪気のない顔で無邪気にそう答えた。
 きれいだから、ほしかったから・・・・。この子達はまったく純粋なる欲でこの花を
手折ったのだ。
 怒りはしない。
 だが、その時の私は少し様子が違ったらしい。
 二人は私の顔を覗き込み、顔を見合わせて私にその花を差し出した。
 私はその花を受け取った。
   花瓶に挿されたその花は、5日間もその姿を保ち続けたのち、その生を終えた。



 アイオリアの拳が光り輝く。
 彼が使うのは私が生み出した雷。
 だが、私の雷は黒く冷たい。
 同じでありながら、違いが生まれるのはなぜか。
 私は悟った。
 それは命の輝き。
 私と娘があの花に惹かれたのもそのせいだろう。
 彼らは『死』を持つ者。
 されど・・・、


 その命はまぶしく輝き、美しかった。 



366日耐久お題 002 路傍の花、されど   
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