忍者ブログ

幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

縛り付けられた心

戦う!セバスチャン  

セバスチャン×デーデマン デーデマン女体化 

十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。

唐突に出てきたモブが出張ります。妙にシリアスな話です。

作品の初期の頃の設定を使っているので、今と設定が違うことをご了承ください。









 ある日、デーデマン家に一人の人物が訪ねてきた。ユーゼフと同じゲルマン系だが、
醸し出す雰囲気はディビットによく似た男は、デーデマンの古い知り合いだという。
 デーデマンに会いたいと言うその男を通し、本人の前に連れてきたのだが、当の本人も
誰だか思い出せない。
「君、誰?」
 それに、訪ねてきた男は苦笑する。
「十数年ぶりだからなぁ。ほら、俺だよ、俺。昔よく、別宅でヘイヂと一緒に探検ごっこ
とかした・・・」
「あっ・・・、もしかしてフリード!?」
 男の名は、フリード・ルィディス・フォン・ベールゼン。
 デーデマンの幼なじみだ。
 ベールゼン家は、王族の血を引く一族で、デーデマン家とも何代も前から交流があった
ので、幼い頃はよく一緒に遊んだが、デーデマンが十歳の頃、国外へ引っ越していったのだ。
「久しぶりだねぇ。元気だった」
「元気、元気。大学院卒業して、家に帰ってきたんだ」
 その時、突如壁に穴が空き、中からヘイヂが這い出でてきた。
「よぉ。ヘイヂ。久しぶりだなぁ。あいかわらず家に穴掘ってんだな」
「おぅ、久しぶりじゃねぇかフリード」
 と、ヘイヂとも普通に会話するフリード。
 ただ者ではない。
 なごやかなヘイヂとの会話を一時中断し、フリードはデーデマンの横で突っ立っていた
セバスチャンに声を掛けた。
「へぇ、あんたが噂のセバスチャンか。ほんと綺麗な顔してんなぁ」
「それはどうも」
 いつもなら青筋を立てる場面だが、相手はお客様なので噯気(おくび)にも出さない。
「俺と会うのは初めてだったな。俺の名はフリード・ルィディス・フォン・ベールゼン。
ベールゼン家の次男坊で、デーデマンの未来の夫だ」

 部屋の空気が凍りついた。

 氷解させたのはデーデマンだった。
「ちょっとフリード、それどういうこと」
「今日はその為に来たんだ」
 にっこり笑って、フリードはデーデマンに告げた。


「デーデマン、俺と結婚して欲しい」

「嫌だ」


 即答するデーデマン。
 フリードは聞こえない振りをする。
「まぁ、結論は先に延ばすとして、久しぶりにあったんだ。ちょっと外で散歩でもしようぜ」
「なんで、僕が君と散歩なんか・・・」
「じゃあ行くか」
「聞けよ人の話」
 聞いてか聞かずか、フリードはデーデマンの腕を取ると、引きずるようにして部屋を
出て行った。


 ◇  ◇  ◇


 部屋を出た二人は、本宅と別宅の間にある庭園を歩いていた。
「此所も懐かしいなぁー」
 久しぶりに見た景色に嬉しげなフリードに対し、デーデマンの顔は曇っていた。
 十数年ぶりに再会したと思ったら、いきなりプロポーズしてきたのだ。
 しかもセバスチャンの目の前で。
 セバスチャンの恋人であるデーデマンにとって、今やフリードは邪魔者でしかない。
 さっさと追い払おう。
 それをどう切り出すか思案しているデーデマンに、フリードはふと訪ねた。

「なぁ、お前とセバスチャンの関係っていつから?」

 思考が一時中断する。

 いつから・・・?

「えっ   と、セバスチャンが来て、三年くらいたった頃からかな」
「となると・・・もう十年か]
 そう、もうそんなに経つのだ。
 主従から恋人へ。
 子供から大人の関係へ。
 希望どおりになったのに    
「そんなに経つのに、お前らちっとも恋人同士に見えねぇな」
 フリードの言葉は、刃(やいば)となってデーデマンに突き刺さる。
 そのとおりだ。
 デーデマンとセバスチャンはお世辞にも恋人同士には全く見えない。
 どちらかといえば、主人という名のペットと執事という名のご主人様だ。
「噂に聞くと、お前はセバスチャンにスマキにされて吊されたり、椅子に縫いつけられても
仕事をさせられたりするというじゃないか。しかも、セバスチャンは、その顔とテクニックで、使用人あまつさえお前の父親まで誑(たら)し込んで、今やデーデマン家の裏の支配者だ、て
言われてるぜ」
 デーデマン家の内情がただ漏れである。
 いったいこの家のプライバシーセキュリティーはどうなっているのだろうか。

 フリードは、真剣な顔つきになり、デーデマンの心を揺さぶる。
「なぁ、デーデマン、俺にしとけよ。あいつはお前に・・・デーデマン家当主の伴侶に
ふさわしくないって」

 ふさわしくない?

 それは誰が決めることだ?

 それは    。

「フリード、それは僕が決めることだ」

 僕の夫にふさわしいかどうか。
 それは僕が決めること。
 決めることに家は関係ない。
 僕は好きな相手を夫とする。
 そしてなにより、
 それは他人が口出しすべき事ではない。
「デーデマン・・・」
 その声には、憐れみが含まれていた。
「可哀想にな。あいつの外観に騙されて。いいように扱われているだけなのに」


 そこに愛はないのに。




 一陣の風が舞う。
 それはまるでデーデマンの心に吹き荒れた風のようだった。
「それでも」
 フリードの目を見据えて言った。 
「それでも僕は、セバスチャンを愛してる」

 彼を愛している。


 これは本当。


 心からの感情(きもち)。


 たとえ、彼の愛が嘘でも。


 それだけは変わらない。

 ふっ、とフリードは力なく笑った。
「わかったよ。プロポーズは取り消す」
 やはり、離れていた時間の影響は大きかった。
 幼き日、一緒に過ごした時間は、もうとっくに過去の物。
 二人の関係もまた同じ。

「帰るわ」

 踵を返し、去っていくフリードの背中を、デーデマンは見えなくなるまで見送った。


 ◇  ◇  ◇


 本宅に戻ったフリードは、セバスチャンに馬車の手配を頼んだ。
 用意させた馬車に乗り込む前、彼はセバスチャンに問いかけた。
「あいつは、あんたのこと愛してるよ」
「そうですか」
「妬けるよな。こんなに優しくて、家柄も釣り合いのとれる俺よりも、ひどい目に
遭わせる執事の方がいいだなんて」
「それはどうも」
「なぁ、セバスチャン」

 お前は、デーデマンを愛しているか?

 その問いにセバスチャンは答えない。
 だが、フリードは、判ったようだ。
 馬車に乗り込み、デーデマン家を去った。



 フリード、
 君じゃなくても、セバスチャン以外の男には、
 僕は心引かれない 。
 僕の心は縛り付けられているから。
『愛』という名の鎖に。



PR

コメント

カレンダー

05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 5 6 7
8 9 10 11 12 13
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

リンク

ブログ内検索