姫君と婚約者 ガルディア×アリィシア
他人をドン引きさせるアリィシアの独特のセンスが、たまにはまともになるお話。
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
アリィシアは、今日も愛しの婚約者に会いに家を訪れた。
だが、せっかく来たというのに、当の婚約者は読書に夢中。
「ねえ、ガルディア」
お外でデートしましょう、と言うアリィシアに、ガルディアからの返事はない。
つまんなーい、とガルディアの髪で遊んでいて、アリィシアは、はたと気がついた。
ガルディアの髪って、なんて手触りがいいのかしら。
つやつやとした漆黒の髪は、柔らかく、手で鋤くと流れるようにすっーとすべり、
アリィシアの鋤くとすぐひっかかる赤茶けたくせっ毛とは全然違う。
(ガルディアって、ほんとどこもかしこも素敵だわ)
ガルディアの髪を手で鋤きながらアリィシアは想う。
この髪には、どんな髪飾りが似合うかしら。
ガルディアは、いつも小さな石のついた紐で結んでるのよね。
あたしなら、真珠を散りばめたダイヤのバレッタとか、キラキラ光る紫のリボンとか、バラをあしらったコサージュをつけたりするのに 。
頭の中で、考えた髪飾りをつけたガルディアを想像してうっとりする。
こうして妄想し続けるアリィシアの行き着く先は 。
着飾ってみたい。
どんなのを作って持ってこようかしらと、ニヤ気ながら髪を鋤くアリィシアに、
ガルディアは不気味な思いを抱いた。
◇ ◇ ◇
数日後。
「おはよう、愛しのあなた。今日は素敵なプレセントを持ってきたの」
うきうきとご機嫌なアリィシアにガルディアは、ため息をつく。アリィシアの
プレゼントはセンスが悪く、ガルディアは辟易していた。
今度はいったい何を持ってきたんだ。
想像すら拒否しているガルディアに、アリィシアは小さな袋を差し出した。
「開けてみて、きっと気に入るわ」
嫌だったがアリィシアが瞳を期待でキラキラさせているので、渋々袋を開けてみる。
中からはセルリアンブルーのリボンが出てきた。
「素敵でしょう。城に来た行商人から買ったの。明るいブルーがあなたの黒髪に映えるわよ。」
ガルディアは、しばらくリボンを見詰め、
「アリィシアにしては、まともだな」
その言葉に、アリィシアはぷうっと頬をふくらます。
「何よその言い方は。気に入らないの」
「いや」
表情を変えなかったが、
「悪くはない」
どうやら気に入ったようだ。
途端に、アリィシアの顔はぱぁっと明るくなり、にっこりと笑った。
それ以来、明るい色のリボンをした魔法使いの姿が見られるようになった。