姫君と婚約者 ガルディア×アリィシア
ディアゴール王国に伝わるお話。
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
その昔、平和を謳歌していたこの国に、突如危機が迫りました。
この国に巨大な星が落ちて来るというのです。
星が落ちてしまったら、この国は滅んでしまいます。
人々は頭を抱えました。
どうすれば、この国を救えるのか。
そして、一人のお姫様が立ち上がったのです。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡
この国の辺境に位置する切り立った岩山の山頂に一人の魔法使いが住んでいました。
その魔法使いは、大変強大な魔力(ちから)の持っていました。
この国を救えるほどの。
お姫様は、その魔法使いに力を貸してもらう為、自力で反り立つ崖を登り、会いに行きました。
そして、頼みました。
「この国を救ってください。」
けれども、魔法使いは聞き入れてはくれませんでした。
彼は人間ではありませんでした。
翔翼人(リル・ディーン)という種族なのです。
翔翼人(リル・ディーン)は、人の数十倍の時を生きます。
そのあまりに長命故に、彼の心は氷のように凍りついていたのです。
でも、お姫様は諦めませんでした。
何日も何日も、魔法使いの側に居て説得し続けました。
そして、いつしかお姫様は魔法使いに心を奪われてしまったのです。
その思いに気づいたお姫様は、魔法使いに愛を告げました。
「あなたを愛しています。」
しかし、魔法使いは受け入れません。
人を信じることができなくなっていたのです。
お姫様はがっかりしました。
そして、魔法使いの元を離れ、国と運命を共にするために、周囲の人が止めるのも
聞かず、城へ残ったのでした。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡
いよいよ星が落ちてくるという時、奇跡が起こりました。
強烈な輝きを放つ光が国を覆ったのです。
そして、光が消え去った時、落ちてくるはずであった星はどこにもありませんでした。
あったのは 。
あったのは、
寸分変わらぬ姿の国と、
晴れわたった青い空と、
空中で抱き合う、純白の翼を持った漆黒の魔法使いとお姫様の姿でした。
お姫様の愛が魔法使いの凍った心を溶かしたのです。
そして、いつのまにか魔法使いもお姫様を愛していたのでした。
愛するお姫様を救う為に、魔法を使ったのです。
それから二人は、すぐに結ばれたわけではありません。
様々な出来事が二人に襲いかかりました。
けれども、
それらをこえて、
種族をこえて、
寿命をこえて、
運命をこえて
二人は幸せに暮らしました。
『ディアゴール国説話集』より抜粋
*後書き
姫君と婚約者第1巻の内容を民話風にまとめてみました。
とっても面白いお話なのに、原作は婚約したままの状態で放置されているのが残念です。