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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

継承の剣

聖闘士星矢 アスガルド編 フェンリル ジークフリート

本編後、神闘士が復活し、数年待った設定です。
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
創作を始めたばかりの頃で、つたないです。
ジークフリートと神闘士それぞれが絡んだ話が書きたくて、そのフェンリル編です。





 年が開け、新年行事のあらかたが済んだある日、フェンリルはジークフリートに呼び出された。
「たいこうでんかよんだー?」
 言い慣れないらしく棒読みに近い話し方に、ジークフリートの口からは思わず笑いがもれる。
「呼び方には慣れたようだな」
「シドにすっげーうるさく言われたから」
 ジークフリートはヒルダと結婚し、今は大公として彼女の補佐を務めていた。 以来彼は皆から大公殿下と呼ばれることが多くなった。親しい者も分別をつけるため、人前ではそう呼ぶ。しばらく名をそのまま呼んでいたフェンリルも礼儀にうるさいシドから無礼だと耳にたこができるほど言いつけられ、最近ようやく自然に呼べるようになっていた。
「それでなんのようだよ?」
 だが、まだタメ口が直らない分、シドの小言は当分続きそうだ。
 まぁ、それは置いといてと、ジークフリートは呼び出した用件を述べる。


「フェンリル、誕生日おめでとう」


 にこやかに祝福の言葉を述べられ、フェンリルは一瞬きょとんとする。そして、あっと今日は自分の誕生日だと言うことを思い出した。
 フェンリルの生存がわかり、復活のさい彼の戸籍は復活した。その記録から彼の誕生日は1月だと判明したのだ。けれど、一月は新年行事が目白押しでフェンリルは警備の任で忙しく、終われば疲れ果てているので、もう何年もそんなの関係ない生活を送っていたせいもあり、すっかり忘れていたのだ。
「サンキュー」
 フェンリルは照れくさそうに礼を述べる。
 ジークフリートは側にある机の上に置いておいた、白い布で巻かれたものを取り、フェンリルに渡す。
「なんだこれ?」
「ずっと預かっていたものだ」
 開けてごらんと言われ、フェンリルは白い布を取り払う。すると、中から一本の剣が出てきた。
「これは・・・」
「お前の家に伝わるものだ」
 フェンリル家当主一家が見舞われた災難は、その後大きな跡目争いを生んだ。当主に兄弟がおらず、近しい親戚もいなかったので、降ってわいた相続に遠縁達が色めきだった。
 そんなことはジークフリートの関知する出来事ではなかったのだが、その遠縁の中にその場に居合わせた者が入っていたことから大捜索に発展した。もしや仕組まれていたのではないかと捜査したが、確たる証拠はなく、逆にこのことが混乱に拍車をかけ、とうとうヒルダの父である当時の地上代行者の英断により、フェンリル家の地位は返上され、資産は公平に分けることとなった。
 とは言っても欲に駆られた当事者達は公平に分けられるはずもなく、他の者を出し抜こうとぶんどり合戦が展開され、そのおこぼれに預かろうとする者達も参戦した結果、フェンリル家の莫大な資産は散逸した。
 この剣を見つけたのは偶然だった。
 なじみの鍛冶屋が是非見て欲しいと言って出してきた剣。柄に彫られていた紋章から
フェンリル家の物だと知った。これを持っていた遠縁が金に困り、たいそうな逸話をつけて売りに来たらしい。鍛冶屋は貴族とは縁が薄く紋章を理解できなかったが、いい物だからとかなりの値を出して買い取ったという。ジークフリートはこれを持ち金全部と引き替えに購入した。
 けれど、フェンリル家の地位の返上の証として献上されるはずが、その前に散逸した代物など、まだ敵の多かったジークフリートは手元に置いておけず、やむを得ず、あるとは思えないような場所に丁寧に梱包して保管しておいたのだ。
 時々、手入れはしていたが仕事が忙しくなるにつれ忘れてしまい。フェンリルの生存を知って思い出したのだ。
「お前に渡すためにまた手入れに出したんだが、まだ大丈夫だそうだ。その他も特に取り替えた部分はないから、おそらくお前の家に在った時と変わらないと思うが・・・」
「おんなじだ」
 ぼうっと剣に見とれていたフェンリルがつぶやいた。
「家の暖炉の上に誇らしげに飾ってあった。フェンリル家の守護剣だって言ってた。代々の当主に渡されるって、俺が大きくなったらくれるって言ってた」
 脳裏にその時の光景が甦る。強く誇らしげな父、優しく美しい母。あの頃はいつも笑っていた。幸せで・・・・。


「・・・・・・ありがとう」


 腕で瞼を拭うフェンリルをジークフリートは優しい目で見つめていた。

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