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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

白夜行

聖闘士星矢 アスガルド編 ハーゲン ジークフリート

十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
創作を始めたばかりの頃で、つたないです。

ジークフリートと神闘士それぞれが絡んだ話が書きたくて、そのハーゲン編です。













 ハーゲンは、修行場近くの岩場の上に寝っ転がって空を見上げていた。
 空は白く輝いていて、西の方に同じく白く輝く太陽が見えた。
「へへっ」
「なに笑ってるんだハーゲン」
 怒気を含んだ声にハーゲンはうわっと飛び起きる。見るとすぐ側でジークフリートが
仁王立ちしていた。額には小さな青筋が浮かんでいる。
「よぉ、ジーク」
「よぉ、じゃないだろう。お前、今何時だと思ってるんだ~」
 ジークフリートがこう言うのも無理はない。実は今現在の時刻は午前一時過ぎ。
 つまり真夜中なのだ。
「いくら明るいからと言って眠れなくても寝ろ! いったん生活のリズムが乱れると
元に戻すのは難しいといつも言っているだろう」
「ごめん、ごめん悪かったよ」
 と言いながらハーゲンはまったく悪びれている様子はない。だって今日は自分に
とって特別な日なのだ。
「でも、大目に見てくれたっていいだろ。今日はさ、俺の誕生日なんだからさ」
「むっ」
 突然の指摘にジークフリートは押し黙る。
 日付交代は夜中の午後十二時をもって行われるので、確かに今は次の日だ。
 そして今日はまさしくハーゲンの誕生日だとジークフリートは思い出した。
「まぁ、嬉しいのはわかるが、とにかく戻って寝ろ。昼に起きていないとフレア様に
お祝いを言ってもらえないぞ」
「うっ」
 今度はハーゲンが押し黙る番となった。
「わかった帰る」
 ハーゲンは立ち上がるとジークフリートには目もくれず、鹿のように飛び跳ね
あっというまに岩場から降りた。地面の雪の上に降りたってハーゲンは
ジークフリートを呼ぶ。
「ジーク早く」
「ああ」
(フレア様の名を出すだけでこのかわりようか)
 ちょろいがある意味心配だなと、ジークフリートはハーゲンの将来を案じた。


 二人分の足跡が並んで雪の上に続いていく。
 ハーゲンはジークフリートの横を歩きながら、まだ嬉しそうにしゃべりたてる。
「俺さ、自分の誕生日が好きなんだ」
「ふうん」
 ジークフリートは適当に調子を合わせる。
「一つ大人になるしさ」
「うん」
「強くなるしさ」
「ああ」
「背も高くなって、かっこよくなるしさ」
「そうだな」
「それにフレア様に太陽をあげられるしさ」
「うん・・・・・ん?」
 太陽をあげる?
 ジークフリートは首をかしげて尋ねた。
「何で太陽をあげられるんだ?」
 するとハーゲンは得意げに鼻を鳴らして答えた。
「だってさ、俺の誕生日っていつも太陽が沈まないじゃん」
 太陽が沈まない・・と聞いてジークフリートはなるほどと納得した。

 白夜。
 両極に近い地域で夏に起こる自然現象。
 その期間は太陽は沈ます、黒い空が訪れることはない。

「たしかに」
(でもなんか違わないか?)
 今日はハーゲンの誕生日であって、プレゼントを貰うのはハーゲンのほうだ。
 逆を言えばフレア様はプレゼントをあげる側となるのが正しい。
「なぁハーゲン」
「俺、フレア様の喜ぶ顔が好きで嬉しくて・・・」
 言い終わるか終わらないかのうちにハーゲンがいきなり顔を雪に埋めるように倒れた。
「ハーゲン!!」
 ジークフリートが慌てて抱き起こすとハーゲンは、
「ぐぅ~」
 寝ていた。
 どうやら限界が来たらしい。ジークフリートはため息一つついて、爆睡している
ハーゲンを背中に担ぎ上げた。


 白く輝く世界の中をジークフリートは歩いていた。
 その背中ではハーゲンが耳障りのよい寝息を立てている。
 重くなったなと思う。
 昔一度だけこうして歩いたことがあった。
 その時のハーゲンは軽かった。背丈のそんなに無くて、前にだっこするほうが
運びやすかったかもしれない。
 あれからたった数年でずいぶん成長した。
 あとは中身のほうも大人になってくれたらもう言うことはない。
「誕生日おめでとうハーゲン」

 城はすぐそこ。 


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