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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

夢が生まれる

聖闘士星矢EPISODE・G     コイオス×ポイペ R15
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
創作を始めたばかりの頃で、つたないです。







 夢を見るのだという。
 とても幸せな夢を。
 その夢をコイオスは、私を抱いているときに最もよく見るのだという。


「また見たの?」
 二人して、夢と現(うつつ)の間を泳いだ後だった。
 全身に心地のよい疲労を充足させて、ポイペはコイオスにもたれかかる。
「もちろん見たよ」
「どんな?」
「いつもと変わらないな。だが、より鮮明になった」
「そう」
 ポイペは、それ以上は聞かない。
 内容は知っている。
 自分も深く関わっているものだった。
「君は、また見なかったのかい?」
「そうよ」
「残念だ」
 ポイペはその夢を決してみない。
 彼女が見るのは現実だけ。


 コイオスは一度だけ、ポイペにこう訪ねたことがある。
「見たいとは思わないのかい?」
 それに対するポイペの返事は  
「思わないわ」
 本心だった。
 なぜか?
 コイオスが、初めてその夢をポイペに語ったとき、彼女はこう答えている。
「コイオス、夢の話を現実で語るものではないわ」
「なぜだい?」
「夢が現実にならないと知ったとき、深く傷つくからよ」



 見てくれたらいいと思う。
 彼女が見てくれたら、すぐにでも夢は現実のものとなるのに。
 ポイペは拒絶する。
 だが、期待を抱かせることをする。
「なぜ、君はここにいる?」
 そう聞いてみたいと思う。
 だが、それは危険な質問。
 返事次第で、夢は消える。
 だから、二人の関係は不明確なままで。

 見られたらいいと思う。
 でも、見られない。
 二人して見たら、つぶされてしまう。
 それほどに、取り巻く現実はつらい。
 ひどいことをしているのは解っている。
 拒絶できればいいと思う。
 でも、それをするには深くはまりすぎた。


 変わりゆく夢。
 変わらぬ現実。
 じりじりと焦がれゆくような関係。
 
 ここまま変わらないのか?

 だが、予兆が現れた。
 急速に現実が変わっていく  


 ◇  ◇  ◇


「夢を見たわ」
「どんな?」
「変わらないわ。でも昨日よりも、より現実に」
 ポイペは、そっと腹に手を当てる。
 そこにあるのは、夢の結晶。
 日ごと膨らみゆく結晶は、現実になる日を待ちこがれている。
 
 ポイペがその夢を見たのは、つらい現実が去った後。
 コイオスと夢と現の間を泳いでいるときだった。
 コイオスの言うとおり、とても幸せな夢だった。
 見られて嬉しかった。
 それが夢で終わらないと知ったときはもっと   
「いつ生まれる?」
「ガイアによれば、もう少しだそうよ」
「まだ待たされるのか、残念だ」
「それくらい待ちましょ。長く待ち続けていた私たちにとって、短い期間だわ」
 つらい現実は去った。
 もう、つぶされることはない。
 浸ろう、夢に。
 今度は、三人で。
 夢が生まれる。 


  
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