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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

命は燃えているか

百日の薔薇

ルッケンヴァルデ機甲学校の学長の独白。
同人誌にいたキャラですが、なんとなくクラウスは、おじいちゃん子で、優しい感じのおじさん、あるいは、おじいさんに弱いと思う。


君の命が消えないように











立浪草(タツナミソウ)    私の命を捧げます



 

 

 


 雨が降っていた。

「降り止まないねぇ」
 学長は窓の外を眺めながら言った。
「いつからだろう、この雨が降り止まないのは。なぜだろうね。雨の季節でもないのに」
 学長は、ふっとドアの方を振り向いた。
 電灯がともっていない薄暗い室内に、ぼやっとした人影が立っていた。
「ねぇ、クラウス、君はどう思う?」
 問いかけられてもクラウスは答えない。
 きつい眼差しで、ただ学長を見つめるのみ。
「怖い顔だね」
 学長は、しょうがないねと怒りを募らせている子供を見守るような親の顔をしていった。
「彼のことは、もう私でもどうしようもないよ。こうなってしまった以上は、運命を天にゆだねるしかない」
 でも、と学長は緩い笑みを口元に浮かべる。
「君はそれがイヤなんだね。自分の知らないところで彼に死んで欲しくないんだ」
 こまったねと学長はつぶやく。
「君は聡い子だ。それを選べばどうなるかよくわかっているだろう?」
 それでも、君は選ぶんだろうねと学長は言った。
「こうなる予感はあったよ。君は、我々の想像以上の親しみと好意を持って彼に接していた。単なる監視役であることを悟られないため、ではないね」
 そう言いながらも、学長の口調はどこまでも優しかった。
「もう一度だけ聞くよ。本当にいいのかい?それをしてしまえば、もう二度とこの国に足を踏み入れることはできないだろう。お姉さんにも会えなくなる」
「別れを告げてきた」
 クラウスが口を開いた。
「すべてを正直に伝えた。クロウディアは、ただ「いってらっしゃい」と言ったよ」
 その言葉に学長は目を丸くして、そしてまたふっと笑ったのだ。
「そうか。今まで君をつなぎ止めていた彼女よりも彼を選ぶか・・・」
 

 見つけてしまったのだね、いつか話してくれた本物の薔薇を。 


「クラウスは、向こうは君をきっと歓迎はしないだろう。君は敵国人として、周囲からの敵意と疑義にさらされながら生き、戦うことになる」
「承知の上だ」
 クラウスは言った。
 金色の目が光る。熱く、激しく、この雨でも消せない炎が燃えている。
「そうか、ではもう何も言うまい」
 学長は別れを告げた。
「Auf Wiedersehen。君の命の炎が、これから吹きすさぶ嵐で消えないように祈るよ」


 雨はまだ降り続いてた。


 

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