聖闘士星矢ＥＰＩＳＯＤＥ・Ｇ ヒュペリオン×ティア
ヒュペリオンの密かな悩みとは？
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました.
たしか、よそ様のサイトにプレゼントした奴ですね。
今はどうか知りませんが、当時は自分の創作物をよそ様に差し上げて、よそ様のサイトに
アップしていただくと言うことがよくありました。
ヒュペリオンは悩んでいた。
悩み多き年頃だし程度もいろいろだけれど今一番と言うと、それは目の前の光景に
映っていた。
ヒュペリオンから少し離れた場所をてくてく歩いているのは彼の妹ティア。
それを見て、いやらしさとか、冷やかしとか、目を奪われてしまったとか、いろんな
ものが混じり合った視線やささやきを送る人々（大半が男）。
これ、これなのだ。今彼を悩ましているのは。
ティアは、露出の激しい服を好む。今着ている服も、胸の谷間とへそが丸見え。
そして歩く度にちらっちらっとスリップの間からみえるすらりとした足が、男心を
くすぐるのだ。
しかも、ティアはそんな服を着たらどんな風に見られるのか、全然自覚していない
のだ。
視線も冷やかしも感じていないらしく、気にしているそぶりも見られない。
ヒュペリオンはこんなティアを見る度にため息をつく。
兄なら、妹の無自覚な行動を気にするのは当然だろう。
でもティアは肌の露出は激しいが、性格は温厚でおとなしく、素行もちょっと天然が
入っているが、他の姉妹にくらべてまともだ。
それに心のどこかに「今更な・・・」という思いがある。
ティアが露出の激しい服を着ているのは小さい頃からだったので、今更注意しても
仕方がない、というのが他の兄姉たち共通の意見だ。
だから、ここまで真剣に悩む必要もない。ただの「兄」と「妹」ならば・・・。
（我らはもうただの兄と妹じゃないんだぞ、ティア）
二人が兄妹の間柄をやめたのはいつだったか。「妹」を「女」として見始めたのは、
ずっと昔で、完全にやめたのは少し前。その場の雰囲気に流されてだったと思う。
やめた後、これといった外観の変化はない。変化したのは内面、自分の心。
いつからこんな心の狭い男になったのか。
コイオスに相談したら、「好きな女に対する男とはそんなものだ」と言われた。
好きな女を自分の色で染めたい。
それはヒュペリオンだってそう思う。
でも、何もかも自分の好みを押しつけるのはフェアではないし、そういう押しつけ
がましい男になりたくはない。
だから、ティアの服装についてなにも言わないけれど、それでも別の部分で
「やめて欲しい」「控えて欲しい」という気持ちがあるのも本当だ。
自分の恋人が他の男の何かしらの対象になることは我慢できなし、それでティアに
被害が及ぼうものならこれほどの悲劇はないだろう。
この気持ちをティアが酌んでくれたらいいのだけれど、いかんせん彼女はそう言う
部分に関して天然なのだ。
その天然が好きだけれど、つらい。
そんな自分をコイオスは笑ってこう言った。
「君は本当にティアが好きだね」
好きな人のことであれこれ悩むのは、心の底から惚れている証だと。
それからこうも言った。
「でも、あまり我慢し続けるのもよくない」
我慢に我慢を重ねて限界を超えた時、愛する人を傷つけることがあると。場合に
よっては修復できないほどに・・・。
「ティアも君のことが本当に好きなら受け入れてくれるだろう。正直に言ってごらん」
「どうしましたの？」
ふと気づくと、遠くにいたティアが隣に座っていた。
「怖い顔してますよ」
ええっと、ぱたぱた自分の顔を触るヒュペリオンに、ティアはくすくすと笑う。
「ヒュペリオン、何か悩みがあるでしょう」
どきりとする。ついにティアも気づいた？
「コイオスがね、ヒュペリオンが何か悩みを抱えているんだけれど、それは私にしか
解決できないから聞いてあげてくれないかって」
どうやら違うらしい。きっと鈍いティアと自分からはようとして言わない
ヒュペリオンを気遣ったのだろう。
そんな親友の気遣いを無駄にしないようにヒュペリオンは言おうとするが 。
「・・・・・・・いや、なんでもない」
やっぱり言えなかった。俺ってへたれ。
えっーという顔をするティアにヒュペリオンは「いいんだ」と押し切る。
「暗くなってきたな、中に入ろう」
腰を上げるヒュペリオンに合わせティアも立ち上がる。行きましょうかと先に歩こう
としたティア。ヒュペリオンは自分が纏っていた外套を外してティアの身体を覆い隠した。
「？」
「風が強いからな」
深い意味はないと言いたげなヒュペリオンに、ティアはくすっと笑った。
