聖闘士星矢EPISODE・G クロノス×レア
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
我は、なにかが欠けている。
クロノスはそう思っていた。
記憶を失ったから 。
だが、それだけではないような気がした。
この胸に空いた深い深い底なしの空虚感を埋めるには、記憶だけでは足りない。
それはなんであろう?
足りない欠片(ピース)。
実態がつかめない存在。
でも、
今なら何となくつかめたような気がした。
それはきっと、
自分の中ではなく外にある。
外にあって、いつも傍に、共にあるもの。
クロノスは、自分の隣で横たわる存在に手を伸ばす。
「レア」
触れると柔らかく、抱きしめるとあたたかい。
「どうなさいました?」
自分に逆らわず、優しくしてくれる。
「お前だったのだな」
「何がです?」
「欠けていたものだ」
外にあって、共にあるもの。
この女は、我の妻だという。
“ 妻 ”とはなにか。
よく解らないが、自分にとって、不可欠な存在のような気がした。
その証拠に、
レアと一つになったとき、胸の内の空虚感が少しだけ埋まった。
「すぐ傍にあった」
と、レアがクロノスに抱きつき、縋るように胸に顔を埋めた。
「どうした?」
「わたくしも・・・」
押し殺したような声でレアが言った。
「わたくしも、欠けていたものがあったのです」
クロノスは虚を突かれたような顔をした。
自分以外に、そんな思いを抱いている者がいるとは思わなかったからだ。
「それはなにか?」
「わたくしにとって、とても・・、とても大切な方です」
それを聞いた途端、クロノスの胸に嫉妬めいたものが湧き上がった。
自分にとって不可欠な者に、大切なものがいる。
とても不愉快な告白だった。
でも、最後まで聞いてみたい気もした。
「見つかったか?」
淡い期待を込めた声だった。
「ええ」
レアは顔を上げて答えた。
「その方は今、わたくしを抱きしめてくださっております」