聖闘士星矢EPISODE・G オケアノス×テテュス
テテュスは、オケアノスから贈り物をなくしてしまう。
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
創作を始めたばかりの頃で、つたないです。
オケアノスが各宮をつなぐ階段を降りていると、キラリと光るのもが目に入った。
「?」
なんだと思い拾い上げる。
「これは 」
「あ !!」
突然大声を上げたテテュスに、女神達はびっくりする。
「どうしたのテテュス」
驚いた拍子にこぼした茶を拭きながら、ポイペが聞く。
「な、ない!」
「?ないって、何が?」
テミスが不思議そうに聞くが、ティアは何か気がついたようだ。
「あら、テテュス貴方、左耳のイヤリングはどうしたのです?」
イヤリングという言葉に、一同はっとし、視線はテテュスの左耳に注がれる。
テテュスは、普段から両耳にイヤリングをしているのだが、今見ると左耳にだけには
ついていなかった。
「金具が壊れて、どこかに落ちてしまったのですね」
「どーしよう」
テテュスは、自分が座っていた辺りを探すが落ちていない。
他の女神達も周囲を探すが見つからなかった。
どうやらここ以外の場所で落ちたようだ。
「ムネモシュネ、貴方ならどこで落ちたか解るのではないですか?」
レアが、隣で座っているムネモシュネに聞く。
「まあ、だいたいは・・・」
しかし、ムネモシュネの話も聞かず 。
「探しに行ってくる」
「ちょっとテテュス」
ポイペが声を掛けたときには、テテュスの姿はなかった。
(どこに落ちたのよー)
テテュスはかすかに残る自分の小宇宙の痕跡を探す。
イヤリングは肌身離さず身につけていたので、かすかながら自分の小宇宙が残っている
はずだ。それを探ればすぐに見つかるはず。
なのに、焦っているためかうまく探し出せない。
(どうしよう)
とても大切な物なのに。
(オケアノスが、あたしのために創ってくれた物なのに )
◇ ◇ ◇
神話の時代。
海の神殿に移って幾年月。
テテュスは、すっかり海の中の生活にも慣れ、それなりに充実した日々を送っていた。
不満があるとすればただ一つ。
(オケアノスったら)
近頃オケアノスは、一人、部屋に閉じこもるという生活を送っていた。
一体何をしているのかと聞いても答えてくれず、部屋を開けるときは扉を己の小宇宙で
封じているため、中を探ることも出来ない。
かまってくれない寂しさと苛立ちから、テテュスは浮気の一つでもしてやろうかしらと
思うようにまでなっていた。
オケアノスも、そんなテテュスの気持ちには気づいていた。
それでも、己の行動を改めようとはしなかった。
どうしてもやり遂げたかった。
テテュスには秘密にして 。
そんな日々が何日も続いたある日。
テテュスが部屋でふてくされていると、
「テテュス」
久しぶりに部屋から出てきたオケアノスが訪ねてきた。
「なーによ」
嬉しさよりも、寂しさからの不満が大きいテテュスはつれない返事しかしない。
「今まであたしもほっぽいてたくせに」
「そうだったな。悪かった」
「今更謝られてもね」
すっかりお冠のテテュスに、オケアノスは苦笑せざるを得ない。
「悪かったよ。だから 」
持っていた小箱をテテュスに差し出す。
「これを」
テテュスは始め興味なさげだったが、オケアノスの顔を見て、渋々といった感じで
受け取り、ふたを開ける。
「あっ」
中には、小さなイヤリングが入っていた。
美しい細工が施されているのではなく、小さな珠が一つ付いているだけだ。
しかし、乳白色のその珠は不思議な光沢を放ち、とても美しい。
「きれい」
テテュスは先程の不機嫌もどこえやら、うっとりと見とれる。
「新しく創ったものだ。名を真珠という」
テテュスと結婚してしばらくたったある日、ふと気づいたのだ。
自分は彼女に対して、何一つ贈り物をしていないということを。
テテュスは、今までたくさんの物を自分に送ってくれたというのに。
そう気づき、さっそく何か贈ろうと思い、考えた末に宝石に決めた。
どうせ贈るなら自分自身で生み出すことにした。
全ての生物を生み出す海。
その海で出来るとても美しいもの。
海でしか生まれぬ宝石を。
「ずっーと閉じこもって創ってたのって、これ?」
「ああ、お前のためにな」
◇ ◇ ◇
( そういってくれたのに)
あの時どれほど嬉しかったことか。
(なのに無くすなんて)
あー、あたしのバカバカと自分で微分を罵倒しながら、必死に小宇宙の痕跡を
たどっていく。
「もーどこに」
「テテュス」
その声にびくりとして、テテュスは立ち止まる。
ゆっくりと声がした方に顔を向けると 。
「オケアノス」
「捜し物か?」
「えっと・・・そのぉ・・・」
うまく言葉が出ない。
今一番会いたくない人物に出会ってしまった。
アレを無くしたと知ったら、彼はどれほどがっかりするだろう。
しかし気づくのも時間の問題だ。
やはりここは、
(正直に言うべきね)
「あ、あのねオケアノス・・・」
覚悟を決め、言おうとするテテュス。
しかしオケアノスは、
「これだろう」
と、手のひらを差し出す。
「あっ」
その上には、落としたはずのイヤリングがのっていた。
「これっ」
「階段に落ちていたのを拾ったよ。金具も直しておいた」
イヤリングをそっと受け取る。
そして心の底からほっとした。
「よかったー」
決して失ってはいけない。
大事な、大事なあたしの宝物。
イヤリングを元の位置に付ける。
「お前の大事な物なのだな」
大事そうにしてくれるテテュスに創ったかいがあったと思う。
何度も何度も作り直し、試行錯誤を重ねた末に出来た産物。
「そうよ」
テテュスはにっこりと笑う。
「だって貴方があたしにくれた物だもの」