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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

下の話

聖闘士星矢EPISODE・G     イアペトス 独白

イアペトスの心の闇。

十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
創作を始めたばかりの頃で、つたないです。
  





 ボクが生まれたとき、上には腹が立つほど強くて、大人な兄と、美しく賢い姉がいた。
 ボクもヤツらに負けないようにとがんばったけど・・・。

「イアペトス、それは危ないからやめろ」

「イアペトス、それはおまえには無理だ」

「お願いだから、おとなしくしていてちょうだい。おまえがやると余計な仕事が増えるわ」

 ボクが何をやっても空回りで、ボクが望むことの反対のことしか起こらなかった。
 もちろん、成長するにつれて、そういうのは減ったけどさ。
 それでも、子供扱いされた。
 だから、ガイアのおなかに子供がいると知ったとき   

 うれしかった。

 ボクは兄になるのだ。
 兄となって、あいつらがボクにすることを、そいつに向かってすることができるのだ。
 男か女かなんてどっちでもよかった。
 ボクの下になる者ができたということが、無性にうれしかった。 


 月が満ちて、生まれてきたのは   
 ボクの下になる者じゃなくて。
 ボクの上に、
 いや、
 すべての生物の頂点に立つ者。
 
 クロノス。

 皆、喜んだ。
 新たな王となる者が生まれた。
 きっと、この子は、自分たちを救ってくれる。
 救われるときが来た、と。

 ボクは、素直に喜べなかった。
 がっかりとした気持ちが強く襲った。
 でも、それもすぐに吹き飛んだ。
 王(クロノス)は、誰よりも王にふさわしい人物だったから。
 王は、すくすくと成長して、あっという間にボクを抜き去り、すべての者の上に
立った。
 
 ボクは相変わらず、皆の下だった。


 ウラノスを倒し、新しい時代がやってくると、ボクも結婚して、子をもうけた。
 ボクの子供たちは皆、立派だった。
 アトラスは誰よりも剛力で、頼りになるし、プロメテウスは誰よりも賢かった。
 だから、こうささやかれた。
「とても、あのイアペトス様のことは思えぬ」
「実は違うのではないか」
 兄姉たちは。
「さすがは、テミスの子」
「テミス、そっくりね」
「テミスの血だな」

 ボクは、親とも思われなかった。
 ボクは、子供の下だった。
 すっごいムカついたけど、子供たちはかわいかったし、ボクを慕ってくれたし、
何より、その言葉にテミスが、カンカンになって怒っていたので、そう気にしないように
した。
 ある時、プロメテウスが、自分が作ったというものを見せに来た。

 それは、“人間 ”だった。

 形はボクらに似せていたけど、すごく弱くて、獣にさせ満足に対抗できないほど非力で、
はかない生物。
 彼らが生き延びられるには、神(ボクら)が護ってやらなければならない。
 そのとき、ボクは、すごく満ち足りた気持ちになった。 

 ああ、やっと・・・。
 やっと、下になる者が現れたと。


 初めのうち、人間はほんとに弱くて、ボクの心を十分に満たしてくれた。
 でも、だんだん増長し始め、ボクの息子を裏切り、神には向かおうとする。
 そんなことはさせない。
 おまえたちは、ボクの下にいなくちゃいけないんだ。
 ボクの下で這いずり回り、ボクの心を満たさなくては。
 それができないなら、おまえたちなんていらない。
 
 ボクの心を満たすことこそが、おまえたちが存在していい理由なのだから。
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