貴女だけは覚えている。
聖闘士星矢EPISODE・G クロノス×レア
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
なんの記憶もない。
だが、我は覚えている。
覚えている 。
夜も更けて、レアは、夜着に身を包み、もう休もうとしていた。
ふと、誰かが宮の出入り口付近にいることを察知した。
(この気配は・・・)
「レア・・・・」
その声に驚き、慌てて声が発せられた場所へ向かった。
「王よ、どうなさいました」
そこにいたのは、予想通りの人物。
大神クロノス。
しかし、今は王の威厳はなく、ただ闇にとけ込むかのように、そこに立っていた。
「とにかく、中にお入りください」
レアはクロノスを促し、自宮の中へと招いた。
◇ ◇ ◇
クロノスを寝椅子に腰掛けさせ、レアは床に跪き、頭を垂れる。
「突然の訪問により、このような失礼な格好でお許しください」
「・・・・・・・・・会いに来た」
レアのわびの言葉など聞いていないのか、クロノスはただぽつんと自分が来た目的を告げた。
「汝に会いたかった。だから、会いに来た」
「ご用がおありならば、わたくしの方から出向きますものを・・・」
「・・・・・・・・・そうではない」
クロノスは、寝椅子からゆっくりと立ち上がるとレアの手を取り、立ち上がらせ、そして
いきなり抱きしめた。
「王!?」
「こうしたかった」
とまどうレアの気持ちなど無視するかのように、レアの髪を愛おしそうに撫でる。
「こうしたくて会いに来た」
思い立ったのは突然。
なのに、
鐘の音にせかされるかのように、
気づいたら、
ここへと足が向かっていた。
「不思議だ」
なんの記憶もないのに。
どうしてこんな思いを抱くのか判らないのに・・・。
クロノスも長い指がレアの口唇をなぞる。
「我は、汝を抱きしめたい。汝の口唇に口づけし、汝にもっと触れたい」
「クロノス・・・」
この方は・・・・覚えているのだ。
記憶を失っても、
忘れてはいない。
わたくしを愛してくださっていたということを 。
「愛しい方・・・」
レアはそっとクロノスに口づける。
「わたくしは、貴方様のもの。どうぞ、ご自由になさいませ」
「レア」
虚ろな瞳に、かすかに光がともる。
「よいのか」
「はい・・・・でもこのようなところでは・・・」
甘い声を出し、クロノスを一つの扉へと誘(いざな)う。
「こちらに、いらしてくださいませ」
夜の帳(とばり)が落ちた。
書いた当時の後書き
クロノス×レアです。 今のクロノスはぼっーとしているから、どうも書きにくい。思うに、レアは可哀想だ。やっと会えたのに、夫は記憶を失いなんにも覚えてないんだもん。本編でもそこんところは書かれてないし、せめて私の中でラブラブにさせよう。 でも正直、想像しにくい。精進だ。
気まぐれな55のお題 34.忘れられぬもの