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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

写真の彼女

幻獣の國物語  香耶 統利

20年近く前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
まだ、創作を始めたばかりの頃で、非常につたない作品です。

これは誰?というお題から書いた作品です。一応コメディです。







 近頃、香耶は王宮の中を見て回るようになった。
 いい加減、普段部屋に閉じこもり、時たま聖樹の回廊に出かけるという生活にも飽きて
しまったのだ。
 それで、自由に行動できうる範囲をいろいろ見て回ることにしたのである。
 統利は、かなりの自由を香耶に与えていた。また、人質とはいえ、香耶は皇后である。
 上層部に限られてはいたが、階層を行き来し、大抵の部屋に出入りすることが出来た。
 最近のお気に入りは、様々なものを保管している部屋に入ることだった。
 可陀は、軍事大国であるとはいえ、さすがは王家。かなりの数の美術品等を所持していた。
 それらの中には、香耶が今まで目にしたことがない物も多く、宝物を探すように毎日
わくわくして、保管庫でいろんなものを掘り出してきては、見たり触れたりしていた。


 今日入った部屋は、今までの部屋とは少し違っていた。
 在るのは大小様々な形の箱の山。壁際には、たんすらしきものがいくつか置いてある。
 箱の一つを開けてみた。
 中からは、子供の服が出てきた。男の子用らしい。王族の子が着ていたのか、デザイン、
生地、飾りに至るまで、一流のものが使われたらしい。
 もう一つ開けてみた。
 今度は、女の子の服が出てきた。先程の服と同じように、上等な作りをしている。
 しかし、どこかあちらより、作りへの力の入れ具合が増している感じにも見えた。
 どうやらここは、王族達の私物を置いておく部屋のようだ。
 他の箱も開けてみると、大人用の服や、古くさいデザインのコート、マフラー、靴などが
出てきた。
 在る大きな箱を開けてみたら、中からは大量のおもちゃが出てきた。きっと統利が小さい頃
遊んだのだろう。
 統利の小さい頃の姿など、想像も出来ないが、この使い古したおもちゃを見ていると、
あんな奴にも可愛い頃があったのだなと、しみじみ思った。
 箱を次々と開けていき、いろいろかき回していると、部屋の隅で小さな箱を見つけた。
 これだけが、たんすと壁の間の小さな隙間に押し込められていて、まるで意図的に隠すかの
ように置かれていた。
 不思議に思って、ふたを開けてみると、中からは、ファイルのようなものが出てきた。 
 一つを手に取り、開けて見る。
 そこには     


 ◇  ◇  ◇


「統利      !!」
 現在、王宮内では、本を抱えて統利帝の名を叫びながら、廊下を爆走する皇后の姿が
見られた。
「統利     、どこじゃ    ! 統利        !!」 
「香耶、どうしたのだ?」
「統利!!」
 廊下で穆海と歓談中であった統利の姿を見つけ、香耶は、キキキィ   ッと、足を止めた。
「と、統利、統利、あのな・・・・・・」
 ゼイゼイ、ハアハアと肩で息をしながらも、一生懸命に話そうとする香耶を統利は宥める。
「今の状態で喋られても、なにを言っておるのか解らん。ほら、息を吸って」
「ス     ッ」
「吐いて」
「ハァ    ッ」
 と言うことを何度も繰り返し、呼吸を整えた香耶は、さっそく本題にはいる。
「あのな、あのな、統利。聞きたいことがあるのじゃ」
「なんだ?」
「あのな、おぬしには妹がおったのか?」
「はっ?」
 なにを言い出すのかと統利は横にいた穆海と顔を見合わす。
「我には、従兄はおっても兄弟はおらん。我は一人っ子だ」
「まぁ、隠れた兄弟はいるかもしれませんがね」
「穆海、笑えない冗談はよせ」
 統利にギロリと睨まれて、穆海は冗談ですよとごまかすように笑った。
「じゃっ、じゃあ、これは誰なのじゃ?」
 と香耶は抱えていたファイルを広げて、中を見せた。
「ぬっ!!」
「おお、これは・・・」
 統利は衝撃のあまり目を見開き、穆海は懐かしいものを見たなぁという顔をする。
 そこには、幼い頃の統利によく似た女の子の姿が写っている、写真が貼り付けてあった。「か、香耶。おぬし、こ、これをどこで・・・・」
「おぬし達の私物を置いてあった保管室でじゃ。たくさんのアルバムの中でこれだけに
この少女が写っておったのじゃ」
「あやつめ    !」
 統利は怒りを目をたぎらせる。
 全部出したと言っておったのに、あやつめ、我を謀りおったな!おのれ、どうしてくれよう・・・・・!
「はぁー、まだ残っていたとは」
 穆海は香耶の手からアルバムを借り受けると、懐かしそうにページをパラパラとめくる。
「おっ、皇后陛下見てください。これが十数年前の私です」
「ぬっ、どれどれ・・・・・・うわっ、若    い!!」
「で、こっちが樂ですな」
「おお   っ!?」
 穆海の説明を聞きながら、香耶は目をきらきらさせながら写真を見る。他にも、今より
若い上皇夫妻や、他の将軍達の姿も写っていた。
「ということは、将軍はこれが誰だか知っておるのじゃな」
 香耶は、問題の少女を指さす。
「勿論、知っておりますぞ」
「これは誰じゃ?」
「これは、へ」
「だまれ!」
 今まで横に突っ立っていた統利は、おもいっきり穆海の横っ面を殴りつけた。
 穆海は五mは吹っ飛び、顔面から血をだらだらと流して倒れた。
「キャ      ッ!」
「余計なことを言うな!」
「な、なにをするのじゃ、統利」
「やかましい!」
 統利は、穆海の手から飛び落ちたアルバムを拾い上げると、雷精霊を召喚し、アルバムに
ぶつけた。バチィッと音がしたと同時にアルバムは四散し、飛び散った紙片は火に包まれ、
跡形もなく消滅した。
「あー、なんてことを」
「これでいい。・・・・・・・・・我が妃よ」
 統利は香耶の両肩をがしっと掴む。
「あの写真が入ったアルバムは、他になかったか?」
「えっ・・・・と、その・・・・」
「正直に答えるのだ」
 統利が香耶に問いただす口調は優しかったが、顔を鬼のような形相なので、香耶は涙目に
なる。
「し、知らないぞよ」
「・・・・本当だろうな」
「ほ、本当じゃ。本当に知らぬのじゃ」
 今にも泣き出しそうな香耶の顔を見て、嘘はついていないと判断したのか統利は手を離した。香耶は床にへたり込む。
「だが、まだ安心できんな」
 そう言うと、統利はゆっくりとした足取りで、その場を去っていった。周りに怒気をまき散らしながら・・・。


 その後、全保管室で特別整理が行われ、香耶はしばらく立ち入り禁止となった。
 そして、風の噂で、あのアルバムがあった部屋を管理していた者達全員が、解雇又は配置転換させられたというのを耳にした。
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