聖闘士星矢エピソードG
ティータン夫婦 オケアノス×テテュス
神話時代
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
創作を始めたばかりの頃だから、けっこうつたないです。
クロノスがウラノスを倒したことにより、世界はクロノスの時代を迎えた。
しかし、世界はまだ未完成であった。
昼と夜はあるものの、光の勢力が弱いせいか昼は薄暗く、夜は漆黒の闇に包まれた。
大地は荒れ、生物の息吹は感じられず、海の水はどんよりとして冷たくて重く、とてもでは
ないが生命を生み出せるようなものではなかった。
これを憂えたガイアは言った。
「私はこの世界で目覚めて以来、世界を創ってきました。しかし、まだ完成には至りません。
完成させるには、お前達の能力(ちから)が必要です。子供達よ、世界を創るのに協力しておくれ」
これを聞き入れた神々は、世界創りに参加することになった。
己の持つ能力だけで世界の一部を担う者はその能力を行使し、女神達は男神と交わり世界を
創る神々を産んだ。
そんな中、海の流転を司り大陸を創ることを任されたオケアノスは 。
「オケアノス !!」
大声で叫びながらオケアノスの部屋に駆け込んできたのは、オケアノスの妹テテュスだ。
「どうしたテテュス」
かなりのスピードを出して走ってきた為乱れた息を整えてテテュスは本題を話す。
「あんた、ここを出て行くって本当!?」
そのことかとオケアノスは先程同じようなことを言って駆け込んできた弟妹達と同じような
返事をする。
「 ああ、本当だ。私はここを出て海へ行く」
「海で住むの?」
オケアノスは海の流転を司る神。
流転は生命を生み、それを育てる大陸を創る。
それは、世界を創る上で大変重要な役目であり、彼がそうしなければならないことはテテュスも解っていた。
しかし、それを行うのは刻ノ迷宮でもできるはずなのだ。わざわざここを出て、あのどんよりとした暗い海で住む必要があるのだろうか?
「出て行かなくても、あんたの能力(ちから)なら大陸を作れるでしょ?」
「できるさ。だが、それではダメなのだ」
水の流れを作るには、オケアノスの小宇宙を使う必要がある。
刻ノ迷宮からそれを使う場合、ここと海は次元が違うため、大量の小宇宙の燃焼を必要とし、それをやめれば、生みに小宇宙は流れなくなり流転は止まる。
それではダメなのだ。
生命を生むには、常に流転させ続けなければならない。それにはオケアノスが常に海と共にあるのが一番良い方法なのだ。オケアノスと海が同じ次元にいて、近ければ近いほど少しの小宇宙で流転させることが出来る。それを実行するに当たって一番効率が良い場所は海の中だ。
だからオケアノスは、海底に神殿を造り移住することに決めたのだ。
「全ては王のためだ。私の能力が世界を創るのだ。これほど名誉なことはないだろう」
そう、これはオケアノスにとって大変誉れ高いことなのだ。
むしろ褒め称えるべきなのだ。
能力を行使するにもっともよい環境が海底なら、笑って見送るべきなのだ。
そうするべきだ。
なのに、
だけど、
(あたしは )
「・・・・・・・・・嫌だ 」
「テテュス?」
「あたしは嫌だ」
「行っちゃ嫌だ、オケアノス!」
テテュスの目からは涙があふれ出る。
何であんなこと言っちゃったんだろう。
何でこんなに涙が出るの?
わかんない。
頭の中ぐちゃぐちゃ。
「テテュス・・」
オケアノスはテテュスの側へ近づき涙を拭いた。
己の胸の中が揺れ動く。
振り子がゆらゆらと揺れるように。
あれほど固く決意したばかりだというのに・・・・。
(テテュスだけだな)
他の者が感情を吐露しても決して心は動かされぬというのに・・・。
「お前と離れるのは寂しいよ」
それは本心だった。
テテュスを胸に抱き寄せ、オケアノスは囁く。
「でも、私は行く」
腕の中の躰がかすかに震えた。
テテュスは目をぎゅっとつぶり、
「オケアノスの馬鹿野郎!海の底でもどこでも行っちゃえ!」
突き飛ばすようにその胸から離れ、走り去っていった。
オケアノスは、テテュスの走り去る背を黙って見ていた。
その胸に後悔と自己嫌悪を抱えて・・・。
以来、テテュスはオケアノスに会うのを避けていた。兄姉達は会うように諭したが聞きいれ
ず、オケアノスも気が引けたし忙しさを会って、自ら会いに行こうとはしなかった。
(このまま会わずに行くのだろうか・・・)
◇ ◇ ◇
それから幾日が経ち、いよいよオケアノスが刻ノ迷宮から去るという日も近づいてきた
ある夜。
オケアノスの部屋をテテュスが訪ねてきた。
思い掛けぬ事だった。
彼女の方から訪ねてくるなど・・。
「テテュス、こんな夜更けのどうし 」
「あたしさ、考えたんだけど・・・」
テテュスはオケアノスを見据えて言った。
「あたしもあんたと一緒に行くわ」
テテュスの発言にオケアノスは面食らった。
「テテュスそれは・・・」
「知ってるでしょ?あたし達女神は神を産まなければならない」
ガイアに言われた。世界を創るため、完成した世界を支配するために神々を産めと。
「あたしは水の女神だ。あんたの伴侶にふさわしい・・・」
ああ、そういう理由かとオケアノスは落胆する。
(落胆?)
なぜ落胆しなければならないのか?
なんだこの沈んだ胸の重みは?
だが次の瞬間、オケアノスはテテュスの妙な態度に気づく。
顔をうつむかせ手を握りしめ、躰を小刻みに震わせている。
「・・・・・・・・・違う」
違う。
違う、
そうじゃない。
そうじゃなくって。
言いたいのは、
あたしが言いたいのは 。
「テテュス?」
「あたしは・・・」
意を決したかのように突然顔を上げ、言い放った。
「あたしはあんたと離れたくないの」
そうだ。
これが言いたかったのだ。
あたしはオケアノスに行って欲しくなかった。
離れていって欲しくなかった。
だって、あたしは。
「オケアノス、好きよ、愛してるの」
よどみのない真っ直ぐな愛の告白。
しかし、オケアノスは思いもよらぬことを言われて、すっかり気が動転してしまった。
愛している?
テテュスが?
私を?
いや、だが・・・。
それは、
それは、
嫌では・・・無い・・・。
むしろ 。
(なぜだ?)
・・・・・・・・・・・・・。
ああ、
ああ、そうか、
私は 。
沈黙しているオケアノスにテテュスは問う。
「オケアノス、あんたはあたしが好き?」
しばらく黙ったままだったがオケアノスはテテュスを見つめ、
「ああ」
「愛してる?」
「愛している」
そうだ。
そう、結局は、私もテテュスも・・・・。
ああ、なんだ。
「オケアノス」
テテュスは手を上げ、オケアノスに差し伸べる。
「愛しているなら・・・・」
最初から、
「この手を取って・・・・」
こうすればよかったんだ 。
オケアノスの海底行きは少し先延ばしとなり、テテュスとの結婚式を挙げてから行くこと
となった。