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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

僕らは二人で一人

花屋の番人

ティティ+チタ
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。

 一日の仕事を終え、ティティは疲れ切った顔で部屋に戻る。
 今日はえらい目にあった。
 朝から大量のおばちゃんが押しかけ、亡者が現れ襲われて、見ず知らずのおばちゃんの膝で
ほおずりして、目が覚めたら、クライブとヒューに抱きつかれて、レンには鉄拳を食らった。
 その後はリヒトによる一時間にも及んだ教育的説教・・・。
 ・・・・・・・・・厄日か?
 いや、俺にとって毎日が厄日だから、それがちょっとグレードアップしただけか・・・・・・フッ、フフフフフ・・・・・。
 黒い笑い声を立ててしまう程、今日のティティは疲れていた。
 とっとと寝ようと、部屋のドアを開け、明かりを点ける。
 部屋は、一カ所を除いて明るく照らされた。
「・・・・・・・・・どうしたんだよ、チタ」
 チタは、机の端にちょこんと座り、膝を抱えて黒い空気を背負っていた。あの傷ついても
すぐ回復するチタがここまで引きずるのは珍しかった。
 しょぼぼーんとしているチタにティティは心配そうに声を掛ける。
「なに落ち込んでんだよ?」
「・・・・・・・・・」
「お前らしくないじゃん」
「・・・・・・・・・」
「・・・今日のことか?」
 チタは、膝の間に顔をうずめる。
「沈むなよ。お前が亡者の見分けがつかないのは、いつものことだろ」
 落ち込んでいる人間に対して一番の禁句に該当する言葉は、刃となってチタに突き刺さる。
 アグリは仕方がないって言ってたけど・・・。
 オレだって、「証」なのに・・・。
 ますますどつぼにはまっていくチタを、ティティはあほらしいと思う。
「だいたい、おまえが一人前だったら、俺もとっくに一人前の番人になっとるわい」
「なっ・・・・・どういう意味だよ、それ!」
 さすがに怒りを感じ、チタはティティの側まで飛んで、頬をぽかぽかと叩く。
「バカバカ、ティティのバカ!オレがどんな思いで・・・」
「お前が言ったんだろうが。番人と証は一心同体だって」
 チタはぴたっと殴る手を止める。ティティはチタの服をつまんで、目の前に持ってくる。
「お前が半人前なら、俺も半人前。逆に言やぁ俺が一人前ならお前も一人前だ。解るか?」
「ティティ」
「俺がまだ正式な番人じゃないのに、お前が正式な証であるはずがないだろ・・・・・・・・・って、俺なに言ってんだろな」
 むなしい。
 自分で言っといてなんだが、情けなくなる。
 自分だって、まだ敵わないのだ。
 偉そうなことを言えるような人間じゃない。
 いったいつになったら「番人」になれるのか・・・。
「道はまだまだ遠いなぁ・・・」
 そんなティティがおかしくて、チタはくすくすと笑う。
 そうだった。自分はティティと同じなのだ。
 ティティが半人前なら、自分も・・・。
「なりたいねぇ、一人前に」
「・・・ああ」
「でも、ティー。一つ間違ってるよ」
「あん?」
「オレが一人前になったら、ティーが一人前になるんだよ」
「てめぇ!」
 ちょーしにのってんじゃねぇと吼えるティティの手から脱出し、チタはティティの周りを
ぶんぶんと飛び回る。
「待て、チタ!」
「アハハハハ」
 ひとしきり飛んだあと、チタはティティの頭の上に止まる。
「つかまえ    
「ティー」
 あ?と思わず捕まえようとする手を止める。
「ありがと」
「・・・・・・・・・」
 ティティは振り上げた手を下ろした。
 心なしか顔が赤い。
「・・・・もう寝るぞ」

 ティティは布団をめくり、ベットに潜り込む。
 チタはティティの頭から離れ、電源の側へ飛ぶ。
「おやすみ、ティティ」
「・・・おやすみ、チタ」
 パチッと音がして、部屋の明かりが消えた。
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