神話時代の話。
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。

激闘の末、暴君ウラノスを打ち倒したクロノスは、神々の王の座に着いた。
そして、勝利を祝う宴会の席で、クロノスはガイアから一つの選択を迫られた。
「王よ。世界を支配するのは貴方一人ではなりません。支配者は常に一対を要します」
「一対とは?」
「光と闇、天空と大地というように互いの性質は正反対でありながら、常に共にある
存在です」
「つまり妻を娶れと?」
「そうです」
場がざわめく。
特に女神達は浮きたった。
クロノスの妻になるということは、それすなわち天空の女神となり、世界を支配すること
ができるのだ。
クロノス以外の神が自分に跪くことになる。
最高位の女神になることは、女神達の究極の夢である。
そのチャンスがやってきたのだ。
気が早い女神は、どうすれば王の目にとまるか、容姿を磨かねばと熱意を燃やした。
だが、ほとんどの神々は、すでに候補者に目星を付けていた。
なぜなら 。
「そこらの女神ではなりませんよ。天空の支配者となる者です。相応しい女神を選びなさい」
そうなのだ。
天空の女神となるからには、全ての神々から認められる者でなければならない。
容姿、性格はもちろんのこと、小宇宙、器量の高さも求められる。
そうなると自ずと候補者は、クロノスの姉に当たる六柱女神に絞られることになる。
皆は噂した。
彼女達の中で誰が王に選ばれるのか?
このことに関して、当の六柱女神、クロノスの兄に当たる五柱神もノーコメントで通した。
決めるのは王ご本人であるのだから、我らが口にすべきことではないと。
それはもっともな理由であったが、彼らには理由が他にもあった。
クロノスの臣下になったとはいえ、彼らは王の兄姉である。
だから、うすうす察してはいたのだ。
クロノスの思いが誰へ向かい、向けられた人物の心情も 。
◇ ◇ ◇
クロノスは己が妻として迎えたい女神の元へ向かっていた。
クロノスはその女神が好きだった。
一目見たときから愛していた。
けれど、その時のクロノスはその女神の隣に立っても釣り合わなかった。
そして、その女神の周りには釣り合う男神がたくさんいた・・・。
だから彼は欲した。
その女神に釣り合う強う神になりたいと、
相応しい男になりたいと。
そして、クロノスはそれを手に入れ、行使し、全ての支配者となった。
全ての生物が己の前に平伏す存在。
全てを手に入れる者。
だから手に入れるのだ。
永の刻を経て、やっと手に入れる。
二人で世界を支配するのだ。
悠久の想い人 レアと共に 。