聖闘士星矢 EPISOED・G
ガイア→クロノス(×レア)
神話時代の話。
十数年前に書いたものがでてきたので、せっかくなのでアップしました。
今読み返すと、ガイアの口調が謎。
でも、当時のままで掲載します。

ウラノスがタルタロスへ去り、クロノスの時代が訪れた。
しかし、時代が変わっても、我はまだ生み出し続けなければならない。
世界はまだ未完成なのだから。
昼(ヘーメラー)が一日の役割を負え、夜(ニュクス)が姿を現した。
夜は昼の全てを覆い隠し、別のものを引き出させる。
夜の時が半ば過ぎ掛けた頃、クロノスは母の訪問を受けた。
「ガイア、どうしましたこんな夜更けに」
「お前に大事な話があって人目を忍んできたのだ。誰かが気づかないうちに入れておくれ」
そう言うまでもなく、クロノスはガイアを部屋に招き入れた。
「何か持ってこさせましょう」
「人目を忍んできたと言ったであろう。かまわぬ」
それよりも・・・とガイアは、改めてまじまじとクロノスの顔を見る。
(ホントによい男になった)
父親(ウラノス)に似てはいるがより輝かしい身体、アレより強い力(デュナミス)。
(申し分ない)
クロノスはさらなる強い神をもたらしてくれる。
「クロノスよ、世界はまだ未完成。それはお前も解っておろう?」
「ええ、もちろん。だから我らは生み出さなければならない、新たなる神々を」
「そう。でもそれにはまず、お前が妻を娶らねばならぬ。王より先に妻を娶ることは
無礼に当たること。」
「・・・・・・」
「クロノスよ、我はなんだ?」
ガイアの質問にクロノスはしばし口を閉ざし、ゆっくりとは絞り出すようにその答えを
告げる。
「あなたは、全ての者の母。世界を生み出す者」
そう、そのとおり。
我はガイア。
この世の始めから来た世界の創設者。
全ては我の腹から生み出された。
「我は世界を生み出さなければならない。だが、生み出すことは我一人では不可能・・・」
そして、ガイアはクロノスに告白する。
「王よ、我と世界を生み出そう。あなたは新たなる我が夫にふさわしい」
二人で世界を創り、支配しよう。
クロノスは・・・・・・・沈黙する。眉一つ動かさず、ガイアの前でたたずむ。
表情を変えないのでその心の内を読み取ることはできないが、ガイアは受け入れたと
確信する。
自分ほど支配者の妻にふさわしい者はいない。
母であり、恋人であり、妻である。
男にとってこれほど理想の女は自分しかいない。
自分以上の女神など存在しない。
我はガイア。全てを生み出し、支配する者。
ガイアは、クロノスの肩に両手を置き、その唇に口づけようとする・・・。
「母上。私は・・・、私はレアを妻に迎えます」
唇が触れる直前の告白。
ガイアは目を見開き、顔を離すとクロノスの顔を見つめる。
「なにをバカな・・・」
「ガイア、あなたは母だ。それ以外の何者でもない」
クロノスはガイアを引き離し距離を置く。
「クロノス、解っているのか。支配者の妻とは全ての者の母でなくてはならない。
レアには務まらない」
「レアは忙しいあなたの代わりに姉弟達の面倒をよく見ていた。充分素質がある」
「全ての者の頂点に立つ女神は女を殺さなければならない。レアは女の部分が強すぎる」
なおも食い下がるガイアをクロノスは悲しみを含んだ瞳で見る。
母を愛している。でもそれは 。
「母上。私は、レアを愛している」
その愛は、母への愛とも、臣下となった兄姉への愛、己が支配し護るべき民への思い
とも違う。
誰でもない、彼女だけへの思い
「とこしえに共に在る妻(そんざい)。私は・・・」
幼き頃より傍にいて見守っていてくれた、あの優しい女神と共にいたい。
その思いの強さ。その愛の深さ。
ガイアは、母だから・・・。
(解る)
母だから、解るのだ。
自分の息子は本当に恋している。
レアを愛している。
そこに、母である自分は入れない。
ウラノスは受け入れた。でもクロノスは違う。似ていても違う。どちらも自分の腹から
産まれた息子なのに。こんなにも違うのだ。
それでも。
「だが、クロノスよ。世界はまだできあがっていない。我が生み出さなければ完成しない」
「いいえ」
脅迫ともとれるガイアの言葉をクロノスはあっさりと否定した。
「あなたが生み出さずとも、世界は遠からず完成するでしょう」
「なっ!誰が世界を産むというのだ!!」
「あなたの子供達ですよ」
クロノスの言葉にガイアは絶句する。
「ティターンが結びつけば新たなる神々が産まれ、それらが世界を創るでしょう」
ガイアがいなくとも世界は創れる。
その時、ガイアは世界が自分から離れていくような気がした。遠く離れていった世界は
自分なしでも繁栄を遂げる。
ガイアは愕然とする。
途中から不適格者となったウラノスを廃し、世界を創るためにあの戦いを引き起こしたと
いうのに。
(子供達は母を見捨てようとしている)
「ガイア」
クロノスは、それでも変わらぬ事実を告げる。
「あなたは全ての母。それはいつの時も変わらぬ事実です。我らはそれを忘れず、あなたを
愛するでしょう」
だが、それがなんになる!!
「王よ」
ガイアはクロノスを半ばにらみつけるように見据える。
「あなたは神々の王。その決定に従おう」
それだけ言うと、ガイアは引き下がった。その胸に燃えさかる炎を抱いて。
その炎が現実を焦がすのはまだ先の話。