朽ちかけた城の一角 。
「もう一杯どうだ?」
「ああ、もらうとしよう」
豪奢の彫りが施された卓でコイオスとヒュペリオンが杯を交わしていた。
「こうして我らが杯を交わすのも幾星霜ぶりのことか・・・・」
コイオスに注いでもらった杯の中の酒を傾けながらヒュペリオンは呟く。
「最後に交わしたのは、決戦間近というときだったな」
「あれが別れの杯となるとはな・・・・」
我らの勝利を祈って酌み交わした杯は別れの杯となり、数千年の時をタルタロスの漆黒の
闇の中で過ごした。
魂を楚真に封じられたため冥府で再会することもなく、一人ゼウスの雷光の痛みに耐えて
きた・・・・。
「だが、今は違う」
ヒュペリオンは、杯の酒をぐいっと飲み干す。
「そうとも」
コイオスも杯の中の酒を飲み干し、それぞれの杯に新たに酒を注いだ。
「このたびの杯は再会の杯。そして、確実なる勝利の杯」
「そうだ」
今はあの時とは違う。
数千年の時は我らに無敵の小宇宙をもたらした。
此度の戦い、必ず勝つ。
「では、乾杯するとしよう」
コイオスは杯を掲げ、ヒュペリオンもそれに同調する。
「我らの再会を祝い、王の復活、このたびの戦の勝利、そして 」
ヒュペリオンはコイオスを見てくすっと笑い、
「私のティア」
「わが妻ポイペとの再会を祈って 」
乾杯!!