力の泉での修行を終えたゼルダは、アッカレ地方をぐるっと回って城へと戻った。
最初はまっすぐに城に帰るはずだったのだが、提案したのはリンクだった。
「せっかく来たのですから、見て回られませんか」
「ですが、私は遺物調査は禁じられています」
「調査ではありません。観光です」
その返答にゼルダは一瞬きょとんとして、クスッと小さく笑って観光してから帰るこ
とにしたのだ。
ドクロ池を眺め、灯台から北海に浮かぶ遺跡を見物し、渦巻き状の海岸を歩いた。
いつもならいくつものウツシエを取るところだが、ゼルダはただ佇み、眺め、散策す
るだけ。
その後ろを黙ってリンクが付いてくる。
ハイラル城に帰城し身体を休めていたゼルダに、またしてもリンクから提案があった。
「姫様、迷いの森へ行かれませんか」
「退魔の剣が収められていた、あの森へ?」
「はい。迷いの森にはデクの樹という遙か古代からハイラルを見守っていたという老木
があります。樹には精霊が宿っていて会話することができます。会ってみませんか?」
「デクの樹様。本で読んだことがあります。リンクはしゃべったことがあるのですね」
「道案内は俺がしますし、通訳も行います」
「・・・・・わかりました」
翌日、リンクとともに迷いの森に向かったゼルダだが、思わぬ障害にその道を阻まれ
る。
迷いの森の麓にあるチロリの森にハイラル軍の演習場ができていて、そこにいた視察
に訪れていた貴族がゼルダが迷いの森へ行くのを反対したのだ。
「危険です。姫様。迷いの森は一度入れば出てこれないという恐ろしい森なのですぞ」
「大丈夫です。リンクが道案内をしてくれますから」
「ご安心ください。私がゼルダ姫をお守りします」
しかしその貴族は、勇者であるリンクを快く思っていないらしく、懐疑的な目を向け
る。
「いくら勇者殿がご一緒とはいえ、やはり危険です。勇者殿も姫様の身に大事があれば
どう責任を取られるおつもりですかな」
「・・・・」
リンクが口を開こうとしたとき、ゼルダが告げた。
「リンク、行きましょう」
「ですが、姫様」
「いいんです。さぁ。早く」
「ゼルダ姫様、城へは私の馬車で」
「結構です。リンク、行きますよ」
ゼルダは馬に乗ってさっさと森を去り、リンクはその後ろに続いた。
「申し訳ありません。俺がふがいないばかりに」
「気にしないでください。今の私の状況では仕方がないことです」
「姫様」
「せっかく外へ出たのだし、今日は散策して帰りましょう。この子にももっと私に慣れ
てもらわないと」
とゼルダは自分の馬の頭を撫でる。
少し前にゼルダの馬が変わった。前の馬はいつの間にやら妊娠していたらしく出産の
ために馬が交換されたのだ。新しい馬はなかなかゼルダを乗せて走ることに慣れてはく
れなかったが、ゼルダはリンクの教えを守り懸命になだめたので、最近は落ち着いて
ゼルダを乗せてくれるようになっていた。
「いい天気ですね」
「はい」
修行に行くためでも調査でもない単なる散策。
行く先を決めるのはゼルダ。その後ろにリンクが続く。
なんとなく城には足が向かず、二人は気づけば城の南西にあるサーディン公園のあた
りまで来ていた。
西の空がオレンジ色に染まっていた。
ここからでは早駆けしないと暗くなる前に城には帰り着けない。その前に一旦馬を休
めるべく、二人はサーディン公園に入った。
沈みゆく夕日を見ながらゼルダが言った。
「あの向こうには知恵の神ネールの名をいただいたラネールという山がそびえています」
ラネール山はここからは見えない。
それでもゼルダは、遙か向こうにそびえているである山を見つめる。
「『齢17に満たぬ者、知恵無き者として入山を禁ずる』ラネールはそんなしきたりを
持った山なのです」
そんな厳しいしきたりを持つ山だからこそ、それは存在した。
「力の泉でも、勇気の泉でも、私の力は目覚めなかった」
「・・・・・・」
「でもあの地なら・・・。知恵の神、縁のあの泉でならもしかしたら・・・」
古き神々が残した力は、力、勇気、そして知恵。
とうとう訪ねる時が来たのだ。
「根拠は何もありません。けれどわずかでも可能性があるのなら私はそれにすがりたい
のです」
「姫様・・・」
「明日、私は17歳になります」
条件は満たしている。
「あの山に・・・・行ってみようと思います」
「わかりました。お供いたします」
リンクはうなずいた。
「ラネールは城から遠い。カカリコ村で一泊されてから向かわれますか?」
「いいえ。インパ達は忙しいでしょうから」
「日帰りをするなら朝早くの出立となります。すぐに城に帰って休まれてください。
俺は、準備を整えます」
「はい・・・」
すぐさま馬を引き連れようとするリンクに、ゼルダは、
「あの・・リンク・・・」
「はい。なにか?」
「あの・・・・・・・」
下を向いたゼルダは、ぎゅっと手を握って勇気を振り絞ったような声でリンクに告げ
た。
「今夜、儀式の部屋に・・・・来てもらえませんか?」
「!?」
茜色に染まった世界が二人を包み込んでいった。
***********
「どうしたんだい、御ひい様。食が進んでいないようだけど」
ウルボザにそう指摘され、ゼルダは我に返る。
リンクとゼルダが城に帰るとリーバルを除く英傑達がいた。
ダルゲルとミファーは、それぞれの部族の用事で、ウルボザはゼルダの17歳の
誕生日を祝うために駆けつけたという。
ゼルダはウルボザとミファーの3人で夕食をともにしていた(ダルケルはリンクについていった)。
「ごめんなさい。明日のことで頭がいっぱいで」
「ラネール山にある知恵の泉で修行するんですよね」
ミファーが少し心配そうにする。
「あの山は万年雪が積もるところで、すごく寒いって聞くの。姫様が修行の時着る巫女
服ってすごく薄いよね。大丈夫?」
「ありがとう、ミファー。大丈夫です。そこまでは防寒着をちゃんと来ますし、リンク
が薬をたくさん用意してくれるそうです」
「そう・・・。リンクは、ラネールの近くにあるハテノ村の出身だからラネールのこと
はよく知ってると思う」
「なら、安心だね。これで神にまつわる3つの泉すべてを回ることになるんだろう。
案外それが目覚める条件なのかもしれないよ」
「そう・・・かしら。お母様はラネール山に入れない年齢で力に目覚めたって聞いたの
ですが」
「御ひい様は、実際に厄災を封印をする役目を担ってる。きっと、条件が厳しいんだよ」
「そうね。リンクも退魔の剣を得る前にいろんな試練をこなしたって言ってたわ」
(試練・・・)
なら陰口を叩かれ続けたのも、17になるまで目覚めなかったのも封印の姫に課せら
れた試練だというのか。あの儀式さえも・・・。
「ほらほら御ひい様。もっと食べないと。明日修行できなくなるよ」
「え、ええ」
ウルボザにせき立てられ、ゼルダは料理を口に運ぶ。
「姫様、何かいつもと違うね」
ミファーが唐突に言った。
「そ、そうですか」
「うん、なにか決めてる、そんな顔してる」
ミファーの指摘にゼルダは内心ドキッとする。
ミファーはおっとりしているように見えて、なかなか鋭いところがある。
「それは・・・」
「そりゃそうさ。明日は知恵の泉で修行なんだ。御ひい様だって気合いが入るってもん
だよ」
ウルボザが笑い、ミファーはやっぱりそうかなと納得してくれる。
ウルボザのあまり細かいことを気にしない性格に、助かったとゼルダは胸をなで下ろ
した。
***********
「じゃあ、今日はゆっくり休むんだよ」
「おやすみなさい、姫様」
修行に出るゼルダを気遣い、デザートを食べた後ウルボザとミファーは早々に下がっ
た。
しかしゼルダは、儀式に向かう前に行う身支度をするとすぐさま場内の礼拝堂に
向かった。
明日、修行に行く前に祈りを捧げたいからと人払いをしてもらう。
これなら何かの用事でウルボザ達が訪ねてくることはないだろう。
祭壇を前に跪きながら、ゼルダはミファーが行った言葉を思い出していた。
『うん、なにか決めてる、そんな顔してる』
(私は・・・・・決めようとしている・・・・)
力の泉でも目覚めなかった力。
衝撃だった聖人の正体。
リンクの告白。
(やさしいリンク)
厄災を倒すために退魔の剣に選ばれた勇者。
その剣はハイラルの平和のために捧げられるのに。
ハイラルの勇者なのに。
『あなたの勇者になれてよかった』
そう告げてくれた声に迷いはなかった。
「姫様」
人払いしたはずの礼拝堂に、くだんの侍女が現れる。
「お支度が調いました。聖人様がお待ちです」
「今行きます」
ゼルダは立ち上がるとしっかりとした足取りで儀式の部屋に入った。
ゼルダが入るとすぐにドアが閉められゼルダ一人にされる。
正確には二人。
壁に掛かる分厚いカーテンの向こうに聖人がいた。
「聖人様、お久しぶりです」
相変わらず返事はない。
あの日、聖人の正体を知って以降、儀式は行われず今夜までゼルダがこの部屋を訪れ
ることはなかった。
「今日の夕方、私が言ったことを覚えていますか。わずかでも可能性があるのなら私は
それにすがりたいと」
「・・・・・・・・」
「聖人様。私は、あなたとの儀式が全くの無意味だとは思いません。あなたに話を聞い
てもらって私の心は軽くなりました。それに・・・・」
ゼルダはもじもじとしながら告げる。
「あの行為もわずかですが、女神の力が目覚めるようなそんな感覚があったんです。
すごく、そう強烈と言っていいものでした」
「・・・・ゼルダ様。それは力なんかじゃありません。あの行為をしていれば誰でも感
じるものですよ」
初めて聖人がしゃべった。
(ああ、本当に・・・)
それは確かに、リンクの声であった。
「あれは危険な感覚なんです。はまれば抜け出せなくなってしまう。俺はあなたを堕と
しめてしまった」
「・・・・・いいえ」
ゼルダの腕がカーテン越しに聖人の、リンクの身体を抱きしめる。
ゼルダが彼を抱きしめるのはこれが初めてだった。
「きっとそうです。間違いありません」
「何を根拠にそんなことを」
「根拠は何もありません。でもわかるんです。あなたが教えてくれたんじゃありません
か。これは感覚だって。言い表せないものだって」
ゼルダがそう思うのだから、間違いないのだ。
「・・・・知恵の泉でも目覚めなかったら、私にはもう後がないんです」
古来の神縁の地はそこで最後だ。
(もし、そこでも目覚めなかったら・・・・)
ぎゅっとゼルダの腕に力がこもる。
「リンク・・・・私は、怖い」
そう口にした途端、カーテンが天上から引きちぎられる。
ゼルダの身体が宙を舞い、床一面にカーテンがカーペットのように敷き込まれる。
その上にゼルダの身体を落とされた。
ゼルダに覆い被さるのは、聖人と名乗っていた勇者リンク。
「やっと・・・顔を見せてくださいましたね」
ゼルダは小さく笑ってリンクの頬に手を添える。
「ずっと欺しておりました。申し訳ございません」
「もう、いいんです。あなたはいつも優しかった」
リンクは、騎士でも勇者でも聖人でも優しかった。ゼルダの気持ちを一番に考えて
思いやってくれた。
「その優しさにすがりたい」
ゼルダの眉が悲しげに潜む。
「リンク、あなたの持つ勇者の力を私に分けてください」
ああ、どうか。
力を。
試練に打ち勝つ勇気を。
ゼルダの柔らかな唇が告げる。
「私のすべてを捧げます」
「・・・・ゼルダ様っ」
リンクはゼルダをすがりつくように抱きしめた。腕の力は強く身体はかすかに震えていた。
「今の俺には、あなたの気持ちが痛いほどわかります。不安も怖さも。ですが・・・・」
リンクの苦しそうに喉から絞り出すような声で告げる。
「申し訳・・・ありません。今の俺は・・・あなたに儀式を施すことはできません」
「どうして・・・・?」
どうして今、そんなことを言うのか。
「俺の・・・が勃たなくて、役目を果たすことができません」
「では私がいつものように」
「無駄だと・・・・思います。男にも全く役に立たない日があるのです」
「そう・・・ですか」
なぜ、今なのか。
ゼルダの心が失望に染まる。
「代わりと言っては何ですが・・・・添い寝しても・・・・よろしいでしょうか?」
リンクは消えそうな声で訪ねた。
「肌が触れあうことで力を与えることができるなら・・・添い寝でも可能かと・・・」
「・・・・・わかりました。ではそれで」
それもないよりはましだろう。
「失礼します」
リンクは起き上がり。ゼルダの身体を横抱きに持ち上げ、部屋に添えつけてあった
ベットに横たえさせる。ベットはいつでも使えるように整えられており、リンクはゼル
ダの横に寝そべり、寒くないよう毛布で二人の身体をしっかりと包んだ。
そしてゼルダの身体を抱きしめる。
「苦しくはないですか?」
「大丈夫です。・・・・あの」
ゼルダが訪ねてくる。
「はい」
「服は脱がなくていいのですか?これでは肌が密着しないのですが」
ゼルダはナイトドレスと着たままだし、リンクもズボンを着用したままだった。
ゼルダを抱きしめるリンクの腕の力が強くなる。
「それは・・・寝るのに寒くはないですか?」
「大丈夫です。あなたに抱きしめられているので」
ごそごそと動きドレスを脱ぎ始めるゼルダにリンクは拘束を緩める。
「脱ぐのはドレスだけで十分ですよ。脱いだら俺にしっかり抱きついてください。その
方が温かいですから」
「はい」
ゼルダは素直に言うことを聞き、ナイトドレスだけを脱ぐとピタリとリンクにくっつ
く。
「温かいです」
触れあう肌から温かさが伝わる。
(なんて熱い)
リンクは基礎体温が高いようだ。鼓動も早くて体内で次々熱が作られているのだろう。
「よかったです」
リンクからこぼれる吐息までも熱い。
「俺の力をあなたに注ぎます。すべて吸い取ってください。この命が消えようと構いま
せん」
「リンクっ」
「俺のすべてはゼルダ様のものです」
そう言ってリンクはゼルダを抱きしめてくれた。
リンクは己のすべてをくれるという。命さえもと言ってくれた。
そんな彼に対し、儀式ができないと知って失望した自分にゼルダは嫌悪する。
(私はどこまで自分勝手なの。リンクはこんなにも私のことを気遣ってくれるのに)
この優しさに報いるどこか、踏みにじってばかりの自分が情けない。
これでは無才の姫どころか無情な姫ではないか。
こんな冷たい心の女に封印の力が宿るはずなどない。
(変わらなくちゃ。せめて彼の優しさに報いれるくらいに)
今更だ。でもゼルダは強く思う。
変わりたいと。
国のためでも、民のためでもない。
リンクのために。
一体どれくらい眠ったのだろうか。
こんこんと部屋の扉がノックされる。
「お二方。いい加減に部屋からおいでてください。まもなく夜が明けます。これ以上は」
あの侍女の声だ。
先に起きたのはリンクだった。
「ゼルダ様、起きてください」
リンクがゼルダの身体を揺する。
「おはようございます。ゼルダ様。お体で痛いところはございませんか?」
「大丈夫です。起きれます」
気遣うリンクの声を聞きながら、ゼルダはよろりと上半身を起こす。
「夢を・・・・見ました」
「夢ですか」
「闇に覆われた場所で、光に包まれた一人の女性が私を見つめていました」
そう、なぜか女性であることはわかった。
そして、
「彼女は『人』ではありません。そしてとても美しかった」
「ゼルダ様、それは!?」
「彼女は何かを語りかけてきましたが、声は聞こえませんでした」
それでも、ゼルダの目は光を宿していた。
「これが兆し、なのかもしれません」
「~~~~~~」
リンクはなんともいえないうれしそうな、そして泣きそうな顔をして、その場に平伏
した。
「おめでとうございます」
「まだわかりません。でも今日の修行ではっきりするでしょう」
「さっそく出立しましょう。用意ができましたら迎えに参りますので、それまで部屋で
お休みください」
リンクは風のように儀式の部屋から飛び出した。
「これが兆し・・・」
取り残されたゼルダは己の胸に手を当てた。
「なら、この胸騒ぎも兆しなの?」
万年雪が積もるラネールの山頂にある知恵の泉は、氷に囲まれていた。
その泉に、ゼルダはリンクの反対を押し切って何の防寒対策を取らずに身体を浸した。
不思議だった。
水温は相当低いはずなのに、ゼルダは不思議と寒さや冷たさを感じなかった。
むしろ身体は温かった。
昨夜、肌を合わせたリンクの体温を感じているようだった。
リンクに抱きしめられているように感じながらゼルダは祈りを捧げた。
しかし、力が目覚めることはなかった。
逆に目覚めたのは厄災の方だった。
復活した厄災は、龍のような姿でハイラル城にとぐろを巻き空を禍々しい色で染めた。
最悪だったのが、対厄災兵器であるはずのガーディアンと神獣がガノンに乗っ取られ
たことだ。
「そんな・・・」
無理を言ってハイラル城に戻ってきたゼルダは、目の前の惨状に愕然とした。
超人兵器である彼らを敵に回して人間が勝てるはずもなく、ゼルダはリンクに連れら
れて逃避行をする事態となった。
神獣もガーディアンも厄災対策となるはずだった。
彼らは味方だと、その稼働を推進してきたのはゼルダだった。
「私が今までしてきたことは・・・・何の意味もなさなかった」
むしろ、滅亡を加速させてしまった。
「いいえ、ゼルダ様。これが昨夜儀式ができなかった結果といいのなら、肝心なときに
役に立たなかった俺のせいです」
こんな時でもリンクはゼルダに優しかった。
その優しさがつらい。
見捨てて欲しかった。
こんな何の役に立たないどころか、厄災に力を貸してしまった姫など守ってなんになるだろう。
「もう私なんて放っておいて。あなただけでも逃げてください。勇者だけでも生き延び
ればまだ・・・」
「いいえ、ゼルダ様。俺の剣はあなたを守るためにある。言ったはずですよ。俺はあな
たの勇者だと」
こんな自分など泥まみれになって死ぬのがお似合いなのに、それでもリンクは自分を
守るという。
リンクは約束を、自分の誓いを守った。
その命がつきかけ、倒れる寸前までゼルダを守るためだけに戦ったのだ。
それでも運命は執拗にリンクを死へと誘う。
二人を探していたガーディアンがついにターゲットを探し出し、その禍々しい一つ目から
狙いを定めた。
「ぜるだ・・・にげ・・・・」
「リンクっ」
失ってしまう。
国も母も父も民も仲間もすべて失って、
それでも残ってくれていた人が。
ゼルダのことを思い、
ゼルダのために動き、
ゼルダにすべてを捧げてくれた人が、
ゼルダを変えてくれた彼が、
ゼルダがすべてを捧げようとしたリンクが、
「だめーーーーっ!!!」
リンクがガーディアンのビームで打たれようとした瞬間、リンクを守ろうとしたゼルダは
封印の力を目覚めさせたのだ。
ゼルダの手に聖なる印が現れ、光が周囲を包む。
周囲のガーディアンが次々と稼働を停止し二人は助かった。
けれどゼルダは少しうれしくはなかった。
「なにを今更・・・」
ハイラル王国は崩壊し、父も民も仲間も死んだ。
(でもっ)
ゼルダは封印の印が刻まれた手を握りしめた。
「まだ、リンクが生きている」
ゼルダは、決意した。
その後、ゼルダは追ってきたシーカー族の部下に瀕死のリンクを回生の祠に運ばせ、
自身はマスターソードを眠りにつかせた後、城に戻りガノンを封印し続けるという役目
を負った。
それから100年と少し。
目覚めた勇者によりガノンは倒され、助け出された封印の姫により厄災は封じられた。
長い苦しみと悲しみの果てに、ハイラルは再び平和を取り戻したのであった。
あとがき
本来は第七話の後半部分だったのですが、長すぎて切りました、書くのが難しかった。
ゼルダがなんだか自分勝手な女になってしまった。
R18シーンを入れたもっとラブな話にしようと思ったのに、なんかもの悲しい話に
なってしまった。リンゼルだけどラブさがほぼない。なぜこうなった。
AVみたいなタイトル10のお題 Ver3 5. お誘いあれ