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幻想庭園

いろいろ書き散らしてます。 なお、掲載している内容につきましては、原作者様その他関係者様には一切関係ありません

カーテンの向こう側 第七話

 泉での修行を続けるゼルダだが力は一向に目覚めない。
 ついに気持ちを爆発させたゼルダは、衝撃の事実を知る。
 ブレスオブザワイルド リンゼル R15
 薄暗いです。ラブは薄い。

 アッカレ地方。
 何もないことで有名な地方だが、ゼルダにとってはそんなことはない。
 西にはどうやってできたのか不思議な渦巻き状の海岸に、北西には上から見るとドク
ロの形に見える池。北東の海にはぜひ一度は足を踏み入れたい遺跡があり、興味が引か
れるものばかりだ。
 しかし、ここだけは心が晴れない。
 力の泉。
 力の神ゆかりの泉はゼルダの修行の場。
 今日もゼルダは、朝早くから月が夜の空に高く昇るまで冷たい泉に浸り続け祈りを捧
げた。
「・・・・・・今日もダメでした」
 泉から引き上げたゼルダは、毛布を掛けてもらいリンクが用意した火に当たる。
「姫様、どうぞ」
 リンクはゼルダにホットミルクが入ったカップを差し出す。
「ガンバリハチミツを入れましたので、甘くて身体が温まりますよ」
「ガンバリハチミツですか・・・」
 ゼルダはリンクからカップを受け取ろうとして、突如カップを払いのけた。熱いミル
クが地面にぶちまけられる。
「姫様、かかっては」
「あなたまで私に頑張れというのですか!?」
 ゼルダが火傷をしていないか心配するリンクにゼルダは怒鳴りつける。
「これ以上どう頑張れというのです?私はずっと努力してきました。記録もろくに残っ
ていない修行方法を手探りで探して、いろいろ試して。なのにみんな私がいたらないか
ら、努力が足りないからって」
 ゼルダの目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「お母様が早くに亡くならなければ・・・・お母様もひどいです。病床で言うのは、
私ならすぐにできるようになるって、そればかり。どうして修行方法を書き起こすなり
しておいてくれなかったのでしょう」
「剣でも奥義は口伝により教えられます。これは感覚なんです。文字では言い表せない
ことなのです」
「感・・・覚・・・・」
 ゼルダは自分を抱きしめる。
「それなら、やはりあの儀式こそが力が目覚めるために必要なこと」
「ゼルダ様?」
「あの方との儀式での、あのなんともいえない高揚感。あれこそが力の目覚める兆しな
んだわ」
「姫様!?」
 しっかりしてくださいとリンクは珍しく取り乱す。
「何をおっしゃっているのですか。お気を確かに」
「私は正気です。城に戻ります。あの方にお会いしなくては」
 おもむろに立ち上がろうとするゼルダを「お待ちください」とリンクは引き留める。
「離しなさい、無礼者。聖人様なのです。私を救ってくださるのはあの方だけ」
 あの方だけなのだ。ゼルダを黙って受け止めてくれるのは。
 今すぐ城に帰ってあの部屋に駆け込んで、聖人に抱きしめてもらいたかった。
 あのカーテンに包まれた空間で安らぎたかった。
「何を馬鹿なことを。あれほど儀式を繰り返してもあなたの力を目覚めさせることなど
できなかったではありませんか」
「・・・・・・え?」
「あんな卑猥な儀式に意味などありません。やはりもっと早くにやめておけば・・・」
「リンク・・・・・知っているのですか、儀式のこと」
 その瞬間、しまったとリンクの顔をゆがむ。
「私が、あの部屋で、聖人様となにをしていたのか・・・・」
 みるみるゼルダの顔を絶望と羞恥で赤黒く染まる。
「ゼルダ様」
「寄らないで!」
 ゼルダはリンクを避けるように身体をよじり椅子から転げ落ちる。
(知られた。リンクに。知られて・・・しまった・・・・)
 どうして、彼は知ったのだろう。
 夜にあの侍女に案内され、礼拝堂に行く場面を見られてしまったのか。
 それで、自分の役目を全うするために礼拝堂に張り付いていたのだろうか。
(人払いしてる言って言ってたのに。あの侍女が見張っているはずだったのに)
 でも耳のいいリンクのことだ。
 あの儀式の部屋で自分が何をしているのか。
 
 力を注がれるところを。
 
 儀式とはいえ、はしたない声を、
 
 聞かれてしまった。

(知られたくなかったのに)

 知られたくなかった。

 リンクにだけは絶対に。

 知らないで欲しかった。

「・・・・・・死んでしまいたい」
 とその場で背中を丸めて泣き伏した。
「ち、力に目覚めるためだって・・・・お父様が・・・・・でも、あの方は・・・やさ
しくて・・・・・話を・・・・聞いてくれて・・・」
「姫様・・・」
「うれ・・・しくて・・・・・でも儀式は・・・・わたしだってあんな・・・・・でも
・・・この頃・・・・わたし、わたし・・・・もう巫女なんかじゃない」
「姫様、泣かないでください。姫様は何も悪くありません」
「姫と呼ばないで・・・・私はもう姫でもない・・・・・娼婦以下の女です」
「馬鹿なことを。姫様は変わらずきれいです。少しも汚れてなんていません」
 そしてリンクは、

「申し訳ありません」

 その場で土下座した。
「姫様がここまでつらい思いをなさっているとは気づかずに。やはりあのとき陛下に
剣を向ける覚悟で命令に反しておくべきでした。すべては俺のせいです」
「りん・・・く・・・・?」
 なぜ以前くれた聖人の手紙と似たようなことを彼が言うのだろう。
「あなたに儀式を施した聖人は・・・・俺なんです」


「・・・・・・え?」
 リンクの告白にゼルダは耳を疑う。
「国王陛下の命令でした。この身に流れる勇者の力をあなたに注ぎ、封印の力を目覚め
させよと」
「嘘よ、嘘!」
 ゼルダは強く否定する。
「下手な嘘をついて、私を惨めにさせないで」
「本当です」
「聖人様はお声こそかけてくださりませんでしたが、お手紙はくださいました。あなた
の文字と全然違います」
 ゼルダは自分の講義を聞くだけのリンクに『ちゃんとメモしないと覚えませんよ』と
注意したところ、リンクは小さな手帳にゼルダの講義内容をメモるようになった。
 その際見たリンクの文字と聖人の文字は違う。
「俺は両利きなんです」
 リンクは告白した。
「剣を握るときは右手を使いますが、本来は左利きなんです。聖人として姫様への手紙
を書くときは、俺だとばれないように右手を使いました」
 そう言えばとゼルダは思う。
 確かにリンクは剣を握るときは右手を使うが、ペンを手にしていたのは左手だったよ
うな気がする。
「で、でも・・・」
「ゼルダ様、もっと直接的な証拠をお見せしましょう」
 とリンクは面を上げると自分のズボンのベルトに手をかけ、ズボンを下履きごと下ろ
す。
「きゃあ、リンク。な、なにを」
「これに見覚えがあるでしょう」
「と、殿方の・・・区別が付くはずないでしょう」
「わかりますよ。ゼルダ様、力の泉に赴く前の儀式で、『聖なる印を刻むと力が増す』と
言って俺のここに落書きしたではありませんか」
 もちろん覚えているゼルダは、恐る恐るリンクの肉棒を見る。
 すると確かに聖なる印が刻まれていた。場所は記憶通りで、筆跡は自分のものとうり
二つだ。
「リンクが・・・・聖人様」
 衝撃のあまりゼルダは呆然とする。
「命令があったのは、もっと昔のことでした」

 それはリンクが退魔の剣を得てまもなくのことであった。
 国王の私室に通されたリンクは、直々にそう命じられたのである。
「陛下の命令は絶対と教えられてきましたが、さすがに動揺し迷いました。そのとき
陛下は『すぐにではない。しかし、肝に銘じよ』とおっしゃられました」
 そのときは王にも父親としても心が残っていたのだろう。
 しかし、厄災対策が進み神獣と英傑がそろう中で、いまだゼルダに封印の力が目覚め
ないことを憂慮した。
「陛下は、父親よりも王としての役目を優先することを決意されました。そのときの
俺には陛下の命令に反するなどという考えは毛頭なかった」
 命令に従う。
 それは、ゼルダを抱くことを意味していた。
「陛下は必ず実施し、必要であれば、姫様に薬を使ってでも事を成し遂げてもよいとも
おっしゃいました」
「そんな・・・」
 実の父親が娘にそんな目に遭わせようとするとは。
(私がいつまでたっても力に目覚めないから・・・お父様を追い詰めてしまった)
「ですが、そんなことはできません。幸い方法は俺に任せていただきましたので、儀式
をしたふりができればよかったのですが、最初の頃は見張りがついていたためごまかせ
ず、やむを得ず、せめて姫様の純潔だけはなんとしても守ろうとあのような方法をとっ
たのです」
「どうして・・・・・正体を隠したりしたのですか」
「あの頃の姫様は俺を嫌っておいででしたから。嫌いな相手に抱かれたくはないでしょ
う?」
「・・・・・!!」
 ゼルダは思わず目をそらす。
「姫様が力に目覚められれば、すぐに役目を辞し、俺の勇者としての役目を終えた後は、
このことを知るあなた以外のすべて者を道連れにしてこの世を去るつもりでした」
「リンクっ」
 それには国王も入っているのだろうか。
 リンクは、自分ができるあらゆる方法でゼルダの心と名誉を守ろうとしてくれたのだ。
「俺に真の勇者の力があればすぐにあなたの力は目覚めるはずだったのに。すべては俺
の不徳のいたすところ。勇者として、騎士としての領分を守れず、恥知らずにもあなた
に溺れてしまった。すべては俺のせいです」
 儀式の真実を告白したリンクにゼルダは向き直る。
「リンク。あなたは私のことを・・・・」
 蔑んでいたのではないのか。
 迷惑ばかりかける面倒な姫と思っていたのではないのか。
 いつまでたっても封印の姫(じぶんのつい)となれない、無才な女と思っていたので
はないか。

「初めて会ったときからお慕いしております」

 リンクは、初めて胸の内を告げた。
「姫様は俺があなたを蔑んでいると思われていたようですが、違います。俺は、あなた
を守れることがうれしかった。周囲の陰口に耐え、国と民を思い、ひたすらに自分がで
きることをしようとする姫様を守れることは俺の誇りです。騎士になってよかった。
あなたの勇者になれてよかった」
「リンク・・・・あなたはハイラルの勇者ですよ」
 その勇者が無才の姫の勇者などおこがましい。
「いいえ、俺はあなたの勇者です」
 リンクは面を上げた。
「俺の剣を捧げるのは、今目の前にいるあなただけです。たとえ封印の力に目覚めなく
て、女神の意思に反することになっても俺にとっての『封印の姫』は、ゼルダ姫、
あなただけです。俺はあなたを守ります」
「恐ろしいことを」
「それほどあなたに溺れているのです」
「・・・・・・・・・・リンク」
「はい」
「ありがとう」
 ゼルダは小さな声で告げた。
「今日はもう休みます。あなたもちゃんとそれをしまって休んでください」
 ゼルダに言われ、リンクは丸出しのままであったことに気づき赤面したのであった。





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