その夜、儀式の部屋にやってきたゼルダはずいぶんと立腹した表情だった。
「聖人様、聞いてください。リンクったらひどいんです」
唐突に始まったゼルダの愚痴にカーテンの向こう側が揺れる。
この頃、聖人の優しい態度になれたゼルダは、儀式の前に日々の悩みは愚痴などを
こぼすようになっていた。
聖人からの返事はなくただ聞いてくれるだけだが、それだけでもずいぶん胸の内は晴
れるのだ。
「リンクは私の騎士なんですよ。なら、私の命令が絶対なはずじゃないですか。なのに
『付いてこないで』という私の命令を無視したんです。彼は私より国王の命令を優先し
たんっですよ」
何も言わない聖人をいいことにゼルダの言葉は止まらない。
「たしかに『私を守れ』という国王の命令を守れなかったら困るのは彼でしょう。でも、
実際に国王が彼を罰することなんてできるものですか。彼は勇者ですよ、彼を失って困
るのは国王であり、このハイラルです。私とは・・・違うんです」
急にゼルダの声が力をなくし、彼女はカーテンに背を向けた。
「彼は、私ではなくハイラルを守ることに力を使うべきなんです。そのために勇者に
なったのでしょう。彼が私のそばにいても意味がない。私が彼に守ってもらう理由がな
いんです」
なぜなら自分は力を持っていないただの姫なのだから。
「無才の姫を守ってどうするのでしょう。その間にも魔物に襲われている人たちがいる
かもしれない。彼らを守るのが勇者の義務ではないのですか。私と違って義務を果たせ
るのですから果たすべきなんです」
そうだ、そうすべきなのだ。
「力が仕えない私を襲う者なんていません。もし襲われたって、私なんか・・・・」
そのときカーテンの切れ目から二本の腕が伸びてきてゼルダの腰をつかむと強い力で
後ろに引っ張った。
「きゃっ」
突然のことに体勢を崩したゼルダは気がつくと、カーテンの布を逆さにいていること
に気づく。誰かに腰を脇で抱きかかえられているようなのだが、どうやら腰から下は
カーテンの向こう側にあるらしくゼルダには見えない。
「な、なにを」
と思った瞬間、パァッン!とはたく音ともに尻に走った痛みにゼルダは悲鳴を上げた。
「きゃあ!」
その後も続けざまに、パァッン!パァンッ!と尻をぶたれる。
「痛っ、ひ、姫である私に何を、ひっ」
尻を他人にぶたれるなど、教師どころか厳しい父王にすらなかったことだ。
「痛っ・・・・いたぃん・・・いたっ」
(どうして?いままでひどいことしたことなんかないのに)
聖人は決してゼルダに無体を強いることはなかった。
それなのにいきなり尻をぶってくるとは。
(・・・・怒ってらっしゃるの?)
彼を怒らせるようなことをしただろうか?
今日はまだ儀式を始めておらず、愚痴をこぼしただけだ。
「私の・・・・・愚痴が嫌だったのっですか?」
あんな愚痴を聞かされて嫌気がさしたのだろうか?
痛みで涙目になりながらゼルダは聖人に問う。
すると尻をぶつ手がやみ、今度は尻が指でなぞられる。
それは×と書いたことがわかった。
「違うのですか・・・・?ではリンクを、勇者の悪口を言ったことですか」
しかしそれもすぐに×と書かれる。
これも違うことに当惑したゼルダだったが、はっと気づいた。
「私が、私なんか守ってもらう必要なんてないって言ったから・・・?」
すると今度は○と書かれた。
「聖人様・・・・」
どうしてと思う。
聖人はこんなにも優しいのだろう。
こんな淫らで浅ましい行為を繰り返してもなお力に目覚めない自分を蔑んではいない
のだろうか。
不意に腰が下ろされ、ゆっくりと膝を床に落とされる。
そして今宵もまたカーテン越しに抱きしめられた。
「ん・・・・・♡」
違うのはぶたれたお尻を撫でられたことだ。
いたわるようにさすられ、ゼルダは聖人が決して叩きたくて叩いたのではないことを
理解する。声が発せられない彼は、こんな方法でしか自分の気持ちをゼルダに伝えるす
べがなかったのだろう。
「大丈夫です。痛みはほとんど引きましたから。でもお尻が赤く腫れ上がっているで
しょうから後で侍医にシップをもらいますね。寝ぼけてベットから落ちてしたたかに
お尻を打ったとでも言っておきます」
すると突然腕から解放され、床に四つん這いにされる。そして腰から下がカーテンの
向こう側へと連れて行かれた。
「せ、聖人様何を・・・・・」
そして、カーテンの向こうで、ナイトドレスのスカートがまくり上げられ、下着が
下ろされたのを感じてゼルダは小さな悲鳴を上げた。
「だ、ダメ。見ないで!」
聖人が見ているであろう光景を想像して、ゼルダは羞恥で頬を染める。
しかしこれもよく考えるとおかしな話だ。自分は散々聖人の性器を見ているというの
に自分の性器を見られるのを恥ずかしがるとは。
尻に手が添えられ、時折降りかかる風に尻がピクリと震える。
聖人はずいぶん間近でゼルダの尻を眺めているらしい。
聖人の指が尻を伝うたびに、聖人の吐息が吹きかかるたびに、ゼルダの尻は羞恥と
こそばゆさで揺れ、足の間にある茂みの奥がキュンとうなるのだ。
(あぁぁぁぁ、見られてる。私のお尻全部)
自分ですら見たことがない器官がヒクヒクとうめいているのを感じ、ゼルダは自分の
気持ちがわからなかった。
思えば聖人はゼルダを拘束しているわけではないのだから、這いつくばってカーテン
から脱出してもいいのに今のゼルダにはそんな考えすら思い浮かばなかった。
「ふぁぁぁん♡」
不意にお尻に落とされた感触にゼルダは甘い悲鳴を上げる。
さっきお尻に落とされたちゅっとした感触。
王の名代としてたくさんの人と出会って社交儀礼の挨拶を繰り返してきた今のゼルダ
にはこれがなんなのかわかる。
(き、キスされた。お、おおおお尻にキスするなんて)
理解した途端、茂みの奥がきゅぅぅぅんとうなりゼルダの中を何かが駆け上ってくる。
「ひっ、やぁはぁぁぁぁぁぁん♡」
ビクビクと体全体が震え、ぷしゅっと何かを漏らしたことを感じゼルダは真っ青に
なった。
(い、いや。私、聖人様の前で漏らしちゃったの?)
「ご、ごめんなさい。聖人様、私、今・・・」
羞恥で真っ赤になりながら謝るゼルダに、聖人は『大丈夫、大丈夫』と言うように
ゼルダの尻を撫で、何か柔らかな布のようなもので、ゼルダの股間を拭ってくれた。
そして、ゼルダの下半身を解放すると未だ呆然とするゼルダをもう一度抱きしめて、
気配を消した。
侍女から声がかけられゼルダは今宵の儀式が終わったことを知る。
その後、侍女から別の本を渡され、それを読んだゼルダは、自分は粗相をしたのでは
なく、絶頂を迎えたことを知った。
それは男性の吐精行為の女性バージョンで、性行為では必ずあることと知りゼルダは
胸をなで下ろすが、別のことに気づき呆然とした。
(私は感じてしまったの?)
あれは儀式のはずなのに。
力が目覚めないにもかかわらず、ゼルダの体は確実に変化していた。
変化は、ゼルダの心にも現れた。
相変わらず後ろを付いてくるリンクに業を煮やしたゼルダは、ゲルドの町の規則を利
用してリンクを巻いたのだ。
他に護衛もおらず久々の自由を満喫したゼルダだったが、それに浮かれてゲルドの街
を出たが最後、ずっと後を付いてきていた3人のイーガ団員に襲われたのだ。
急いで走って逃げたが、砂漠の砂のせいで走りづらい上に、相手は体力でも勝るプロ
の暗殺集団。あっという間に追いつかれ囲まれてしまった。近くにゲルドの兵もおらず
絶体絶命のゼルダ。
そんな彼女を助けたのはリンクだった。
「彼は、リンクは私の姿を見失った後ずっと私のことを探し回っていたんですって。
イーガ団に襲われていた私の姿を見てさぞ滑稽に思ったことでしょう。ほら見たこと
かって。でもリンクは私を助けてくれた後もそんなこと一言も言わなかったんです。顔
や態度にすら表れなかった。むしろ、遅くなって申し訳ありませんって謝ったんですよ。
彼が謝る必要なんてないのに。なのにものすごく申し訳なさそうな顔をして」
カーテン越しにゼルダは砂漠での出来事を話す。
「・・・・明日リンクに会ったら今までのことを謝ろうと思います。そして、少し話を
してみようと思うんです」
それはゼルダにとって大きな決意であり前進であった。
「なんでしょう。あれからなんだか体から力抜けてしまって」
するとカーテンの膨らみが現れた。どうやら聖人はゼルダの体調不良を心配している
らしい。この頃ゼルダは、カーテン越しでも聖人の気持ちが少しは理解できるように
なっていた。
「あっ、違うんです。暑さで体調を崩したとかそう言うんじゃなくて、なんていうか、
張っていた気負いが抜けたというか。私、リンクの前ではずっと緊張していたんです」
コンプレックスとプライドからゼルダは、リンクに対してだけは絶対に弱みを見せま
いとずっと背中を伸ばしていた。
「なんとなくですが、きっと彼は私がどんな態度をとっても変わらないんじゃないかっ
て思うんです。それは、彼が職務に忠実だから。リンクは私ではなく職務を守っている
だけじゃないかって。そう思ったらなんだか気が抜けてしまって」
彼は、自分を見ているわけではなかった。
ただ、与えられた役目を淡淡と全うしているに過ぎなかったのだ。
「・・・・なんだか自分がとても恥ずかしいんです。自分勝手な思い込みで彼を邪険に
した自分が。こんなんじゃ、力に目覚めるはずがないですね」
そうこぼすゼルダの頭にぽんとカーテンの布が当てられる。
「慰めてくださるのですか?ありがとうございます」
ゼルダが頭の上の布に触れようとすると、ひゅっと布が逃げた。
どうやら聖人は、布越しでもゼルダに触れられるのは恥ずかしいらしい。
「おかしな方。儀式では私に散々触られているのに」
クスクスとゼルダは笑う。カーテンの向こう側で聖人がうごめく。どうやら羞恥を感
じているらしい。
「聖人様。私、あなたにも謝らなければいけないことがあるんです」
ゼルダはカーテンに向かい合う。
「私、以前襲われたら仕方ないみたいなこと言いましたけど、あれは嘘でした。イーガ
団に襲われたとき。私、思ったんです。怖い。死にたくないって」
本当にそういう場面に遭遇して、ゼルダはようやく自分の本当の気持ちに気づいたの
だ。
「私、思ったより自分のことが大事みたいです。これからはちゃんとリンクを護衛に置
いて、身の回りには気をつけようと思います」
聖人様とゼルダは言った。
「心配をおかけして申し訳ありませんでした」
するとカーテンがゼルダの体を包み込む。
布越しに愛おしそうに抱きしめられ、ゼルダはその腕に体を預けた。
AVみたいなタイトル10のお題 Ver.3 4. 快感痛